White Lies

床町宇梨穂

White Lies

「ねぇ、あなた私の事が好きだって言うけど、どんな風に好きか説明してくれない?」

また始まった。

彼女は物事を理屈で語るのが大好きだ。

仕方が無いので、僕は答えた。

「月でバンジージャンプができるくらい・・・。」

彼女はうれしそうにこっちを見ている。

話の続きを促す様に足を組替えた。

「バンジージャンプをするにはまず太いゴムが必要だよねぇ~。」

「それが無かったら自殺と何も変わらないわね。」

「その通り。 だから僕は死ぬ事はできないけれども、死ぬほど君の事が好きだって事を言いたいわけ。」

「じゃあ、どうして月なの?」

「月の重力と言うのは地球の六分の一しかないんだ。」

「へぇ~それで?」

「だから君が月で体重を量ると、四十二キロの君はたったの7キロになる。」

「ふ~ん・・・。」

彼女はまた足を組替えた。

「つまり落下スピードも地球の六分の一しかないんだ。」

「それじゃあ、面白くないじゃない?」

「違うんだ。 僕が言いたいのはゆっくり落ちていくって事なんだ。」

彼女が目をギラギラさせている。

「結局僕は君の事が死ぬほど好きで、君にゆっくり落ちていきたいって事なんだ。」

ちょっと強引だったか???

僕は彼女の感想を待った。

「へぇ~。 適当に月でバンジーなんて言ったわりには、結構まともに話を持っていったわねぇ・・・。」

彼女はなんとか僕の話に納得した様だ。

あぶない、あぶない。

とりあえずこれで、朝まで彼女の話に付き合わなくてもよさそうだ。

彼女にどのくらい好きか聞かれた時、彼女に紐でつながれて宇宙空間をさまよう自分を想像して、月でバンジーだなんて言った事は口が裂けても言えない・・・・・・。

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White Lies 床町宇梨穂 @tokomachiuriho

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