カウンセリング部

第1話一通目

 拝啓

 雨の日も続きますが暑さ迫る時期となりました。いかがおすごしでしょうか。

 いよいよ僕にも相談のメッセージを受信することとなりました。今まで相談事というのを友達にも親にもあまりしたことがないため(八十島高校進学も自分で決めました)いざ自分が相談されるということとなりますと、どう答えたらいいのか見当がつかないのが正直なところです。

 言い訳じみた愚痴のような、はじまりをしてしまい申し訳ありません。自分も相談事を提出した以上は、自分なりの答えを出していかないといけません。

 そして僕はスマートフォンというものをこの四月にはじめて手にしてアプリケーションの迷える子羊というものを入れてみたのですがなにぶん使い方が把握しきれず、この手紙という形式を勝手にとらせていただきました。顧問の先生を僕はひとりだけ知っていまして(これもルール違反でしょうか。ですが、僕はこの先生からこのカウンセリング部を勧められたのでそこは許してください)その先生に託すことにしました。このカウンセリング部は匿名ということが決まりということですので僕はせめてパソコンで手紙を書いています。

 さて前置きはこのくらいにして、さっそく相談事に答えていきたいと思います。

 あなたは女性のようですね。次の席替えでは好きな人の隣の席になりたいということですね。あなたのクラスの席決めがどのようにされているのか、ここはマンモス校でありますからクラスも多種多様です。担任の先生によっても変わりますね。それは成績順なのか、出席番号、くじ引き、先生の独断、年賀状の番号、親の出身県順というのもあるようですね、あとは班長をそれぞれ選出してそこに生徒を集めるというのも。席替えの方式も様々あります。

 前にも書きましたがカウンセリング部は匿名が絶対ですので、あなたのクラスを特定することはできません。ですが攻略法はあると思います。

 その前にその好きな人、という人と今現在どれだけ親密なのでしょうか。恋人同士であればふたりで示し合わせてそこに合わせていけばいいのです。成績順であればふたりで抜群の成績をとるかビリをとるか、またはごく平均を狙っていくかができるわけです。しかし相手がただ憧れの人であれば、その人をリサーチする必要があります。相手が次の席替えでどこの位置に座るかを予測しないといけません。

 よくある前の席希望の人を募る先生もいます。視力が弱い、座高が低い、聞こえにくいなどの理由です、これがなぜ後ろの席希望を募らないかというと大体がみんな後ろを希望するからです。そこで示し合わせて前を希望すればまずぐっと望みの席に近づけるのではないでしょうか。しかし相手もみんなと同様に後ろを希望しているのであればまた作戦を考えねばなりません。

 成績順とひとことでいっても、必ずしも男女がそのままだとも限りません。成績の互い違いであったり男女逆順の可能性もあります。成績順だけでもいろいろな方式があります。

 ここまで書いておいてなんですがあなたの好きな人は男性ということでよろしいでしょうか。女性同士が隣り合うというのは珍しい席順になります。もしそうであれば前後で妥協する必要があります。そういうことも考慮に入れてもらいたいと思います。

 また一見、作戦ではどうにもならないこともあります。くじ引きや先生の独断などです。

 しかしこれも攻略がないわけでもありません。世界、いや日本だけをみても黒魔術、呪術の歴史があります。実際日本に於いても陰陽道宿曜道、いざなぎ流というものも現存しています。鹿児島には阿毘遮魯迦法軍勝秘呪という黒魔術があります。それにはいろいろと準備するものがありますがそういうものを利用するのも一考かと思います。奇問遁甲術という方位術もあります。運勢を上げていくというとスピリチュアルがオカルトにつながって敬遠する人もいますが、昔から今も根強く残っているにはやはりなにかしらのものがあるかと思います。それで人をだましたり金をとったりするのは良くはありませんが、一度試してみるのもいいと思います。

 まずはその隣の席になれる人とどれだけ意思疎通ができるかだと思います。それだけで隣の席にぐっと近づけることになると思います。まずはそこからです。

席替えの日は前もって決まっているのでしょうか。期間がもしあれば準備をしっかりとして望むべきだと思います。これから暑くなる時期です。お体には気をつけていてください。この手紙ですと解決策にはならなかったかもしれません。もしなにか力になれるようなことがあれば僕も調べますし協力もしたいと考えています。あくまで手紙の上でのことですけど。

 この手紙がまずは読まれればいいのですが。僕からは手紙の返事になるかもしれませんが、それでもよければお返事を待っています。では

敬具

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