白光の闇使い─改定版─

竜風 真

第1話 月明りは眩しく

 ──僕はただの高校生だ。

 ──まぁ、今は青少年支援団体に給付金をもらって一人暮らししているから、「ただの」とは少し違うだろうか。


 ──そんなことはどうでもいいんだ。

 ──早く終わらないだろうか──


 ──授業。


「えー、今回の内容はですね、今この世界で紛争が起きている原因と、その状況。という事でですね」


 ──開始早々こんなこと考えていたらだめだな。


 ──まだニ年生始まってそんなに経っていない。


「まず、私達がいるこの土地『日本』は」


 ──前の人類が築き上げたもので、今の人類はその技術をまるっきり利用している。そして、今の人類の祖先は分かれて地区を作り上げて、それが今の地域紛争となっている。


 ──あ、また先読みしてしまった。悪い癖だ。何も考えないでいよう。



 ──そして四十五分後、


 いつも通りのチャイムが響く。


 僕は、特に友達もいないのでいつも一人で帰っていた。今思えば、友達一人くらい作って、連れて帰るべきだっただろうか。


 帰り際、テストの張り紙が壁に貼られていた。うちの学校は、テストの成績は貼り出されない。

(誰も僕が毎回満点を取ってることを知らないんだよな……)

 そんなことを思いながら校門を出る。


(あ、)


 帰り際、ふと気づく。


(今日、「神と僕」の発売日か)


「神と僕」とは、僕が愛してやまない漫画だ。人気かは知らないけど、主人公の変化や、ストーリーが僕は結構気に入っている。


 毎回発売日に、帰り道から少し逸れた書店に足を運んでいた。

 今日もそうした。

 すぐに会計を終え、店を出る。


(あの店、毎回来るけどあんまり知らないな……)

 そんなことを考えながら通る小道。

 重い機械音が響いている。

(そういえば、ここの発電所毎回思うけど音が大きいんだよな)

 耳を塞ぎたくなるような重低音。

 しかし、少し高音が交じる。

 それは物凄い勢いで大きくなる。

 それは聞いたことのない音だったけど、「何かが落ちてくる」という事実をすぐに理解できた。

 まず高音で耳が壊れそうになるのを反射的に、僕は塞ぐ。

 そしてすかさず上を向こうとしたが。


 ──「それ」は落ちてきた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「うっ……、ここは……?」

 気がつくとどこか見知らぬ場所、瓦礫の中にいた。

 僕は瓦礫をのけて、塵を払う。

 上を向くとさっき通っていた道。

(あの衝撃で地下に来たのか)


「荷物……」

 荷物は、悲しいことに道の上。

 ただ、右手に持っていた荷物とは逆に、左手に持っていた「神と僕」は側にあった。


(なんでこれだけ……)

 そんなことを思ったが、瓦礫は登れそうにもなく、地下を進むしかなかった。


 とりあえず「神と僕」はポケットにしまう。


 地下は……よくわからない場所だ。

 道があり、扉もあるが、扉は鍵付きで開かない。

 道を進むしかないが。

(これは出られるんか?)

 そんな疑問が浮かぶ。

 いくらか進むと、一つだけ目立つ扉があった。

 ──指紋認証だ。

(まぁ開くわけないよね)

 そう思うが。

 指をかざした瞬間、ピーと鳴り、扉が開いた。


(開いた……! なんで……)

 少し危険も感じたが、出る手ががりが何もないから進む。


(暗いな……)

 中は暗闇、しかし、少し足を踏み入れると照明がついた。


 僕は「その光景」を見て驚愕した。


 横に連なるカプセルのようなものの中に、得体のしれない生物と思しきものたち。

 そして、武器がずらーっと並んでいる。


(なんだ、この部屋……)


(これは見てはいけないやつだ、出よう)


 そう思った矢先、天井が揺れる。

「なんだ?」


 そして、天井が砕け散り、日光が僕に降り注ぐ。

 誰かが降りて来る。


 僕は警戒して、咄嗟にそこら辺にあった武器を取る。


 そして姿を表したのはなにやら黒い霧のようなもの。


 僕はさらに、武器を構える。


 そして霧の中から現れたのは。

 同じ年くらいの少女。


「……! 誰かいるのか!」

 少女はそう尋ねてくる。


 僕は武器を構えて答える。


「僕は──」


黒陽くろひ亜月光アルナだ……」


 ガシューー


 持っていた武器が音を立て出す。


「適正確認、闇適正有り。黒陽くろひ亜月光アルナを、月光剣サテライトの使用者に設定します」


(なんだ!)


 武器が音声を出した。そしてその月光剣サテライトから白い霧が噴出する。


 霧は次第に形を整え、刃を作り出した。


「なに……あれ……」


 少女が驚いている。

 僕も驚いている。


 空を見ると、白い霧越しの太陽が──


 ──黒く輝いて見えた。

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