第3話 心配ゆえの不安

「....と言うわけだ」


凄いぶっ飛んだ話だったし、普段の事と結びつく事もあったが、これから少しずつ時間をかけて理解していくとしよう。


「まあ信じれられない話だけど覚えておくよその話」


幻は歯を見せるように『にっ』と爽やかな笑顔で笑い一言「ありがとう」と言った。

秘密を言えた分スッキリしたのだろうか。

普段はもっと何を考えているか、ある程度は感じ取れるのだけど、今日に限って、いや、ここに来てからだ。あまりにもわからない。こういう一面があるということも、ついさっき知ったばかりだし、理屈はわかるけど、実感がない。


「さあ、あともう少しだ!もうちょい歩くぞ」

「まだ歩くの⁉︎」


マジで疲れたんだが。


「さっきの話より驚くなよ」

「あと何メートル?」

「およそ300メートル先右方向だ」

「ナビか」

「ていうかそんなに疲れてないだろ?最近部活で体力ついたしな」

「そうなんだよね、あの部活は体力を鍛えるにうってつけだもんね」


もはやなんでも屋さんみたいになってるけど、それはそれで楽しい。


「やっぱりお前を部活に誘って良かった。聡に合ってる思ったんだよ…って、ん?」


幻はなにか感じ取ったかのように立ち止まる。そして驚いたような顔で言った。


「夕依がいる!あの隕石の時巻き込まれたのか!?」


そう言って幻につられて僕も走り出す。

僕は夕依という名前を聞いたと同時に心配の気持ちと心強い仲間増えたように感じた。

でも…そっか、そうだよね、てっきりこの異世界に飛ばされたのは僕らだけだと思ってたけど、あんだけ巨大な隕石だから、他の人も巻き込まれてたんだろう。

だとしたらどのくらいの人が巻き込まれて、こちらの世界に来たのか、それにさっきから誰ともすれ違っていないけど、もしかしたらこの進んでいる道の先に大勢の人がいるかもしれない。

そう思うと急に不安が胸の中で増大していくのを感じた。

幻はどうなのだろう?

さっき言ってた話があったとはいえ、僕がいた世界のことが心配じゃないわけがない。


「なに余計な事考えてるんだ?」

!?

「あーえっと」


いきなり投げかけられた質問に僕は戸惑ってしまった。

だけど幻は明るいいつもの爽やかな笑顔で笑っていた。


「大丈夫なにも心配すんな、俺はな、ポジティブな方に進んでるだけだ。どこの世界にいてもそれは変わらんし、なんかあれば聡に助けてもらうからな!」


そっか、幻は僕みたいに不安になってるだけじゃない。この事態をあのハーデスさんのところで聞いた後、すぐに今こうして『ポジティブ』に行動してるんだ。

そうだ、前に達真が幻に質問した時答えていた。


「いっつも思うんだけど、幻のその行動力はどこからきてるの?」

「俺はよく考え、よく行動これだけだ!」

「本当、凄いよね。色々と」


その『色々』の内容も理解できないことだらけだけど、幻の行動原理はいつも凄いと思う。見習ってやってみようと思うが、どうしても上手くはできない。幻には「それは聡のやり方じゃない」って言われたけど、出来る限り頑張りたい。

まずは今は行動している最中だ。

それに集中する。


「わかった心配しない!考えたら行動する!早く夕依と合流して前に進んで行こう!」


「だからそれは聡の役割じゃ....... ってえ?夕依なら、聡の隣にいるけど?」


!?

目と目があった...うん、いる。

なんて挨拶しようか。

この空気をぶち壊すようなツァーリボンバみたいな言葉がいいんだけど。

うーん。おはよう?こんにちは?こんばんは?

一瞬悩んだ末に僕は言った。(たいして考えてない)


「おはよっぴー!」

「ごまかせると思うなよ」


いつも学校で聞く声、落ち着く声。

そして、いいツッコミ!

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