第1話 近づいて来る
それから時間が経過した。
「はあ、誰もいない⁉︎」
うすうす気づいていたが、誰もいなかった。し、もちろん交番もなかった。コンビニやスーパーもなく、ここらへんの家々は窓ガラスが割れ、ゴーストタウンと化していた。
「ホントに誰もいねーな、俺らが住んでる近くにこんな場所があったんだな、知らなかったわ」
「本当に...」
僕らは一体どこに迷いこんだのだろうか。
もしかしたらここで一生を終えるのかと、そこまで考えた。
そう考えるのも無理は無く、先程からずっと自転車でなんとかこのゴーストタウンから出ようと、足を進めているが、潰れた家々が続くだけで、景色はほとんど変わらず、不気味さと不安からこの場所が無限に広がってるように感じた。
そしてさらに僕らは足を進め、気づけば辺りは少しずつ暗くなっていた。
「暗くなってきたね」
食堂で食べ終わった頃はあんなに太陽眩しかったのに。
それにちょくちょく確認しているが、相変わらずスマホは圏外のままだ。
幻は時間を気にして、左腕につけているデジタルの腕時計を何度も見ている
「あー!もう五時五十分だ。くっそー帰りてーのに」
「僕も帰りたいよー」
この意味のわからない状況はなんだよ。誰か教えて。
僕と幻はいったん自転車を止めて、何かこの状況を抜け出す方法は無いかと考えていたが、特に何も思いつかず、あっという間に時間が過ぎていった。
「あ、六時になった」と幻がぼそっと呟いた。
六時。
その時間に僕らはこれから翻弄される事になる。
さて夕方の六時の別名を知っているだろうか。答えは黄昏時と逢魔が時だ。黄昏時は今は関係ないから省くとして、今大事なのは逢魔が時の方だ。逢魔が時とは妖怪や幽霊などが出て来やすい時間帯の事である。
『こんな事はただの迷信だ!』と思うだろう。僕もパワースポットと同様にそう思っていた。しかしもう既に始まっていたのだ。僕はもうそうゆう存在と触れ合っていたのだ。見えなくても存在し、異質の雰囲気を醸し出しながら接近し、相手を恐怖に引き込み、精神に多大な負荷をかける化物。
怪しく妖しい恐怖の時間なのである。
「今日はもう帰れないのかな」
僕は不安から呟いてしまった。
そうして考えれば考えるほど、不安が倍から倍になっていき、最悪野宿も考えるかとか、野宿したら体中が虫だらけになりそうとかそんな事を考え、帰る方法だけは思いつかず、はぁと二人ともため息をついた。
するとどっからともなく。ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラと、どんどん音が近づいて来る。
「なんだなんだ⁉︎」とかなり焦る幻。
「馬車かな?」と天然ボケな僕。
ガラガラガラガラガラガラガラガラ
「あ!聡あそこだ!」
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