彼氏にタピオカしか愛せないと言われたら

新吉

第1話 待ち合わせ

 ここはタピオカよりクレープの方が人気だったじゃない。


 とある商業施設の地下、ゲームセンターのとなりにあるイートインスペース。そこにあるのはクレープとタピオカを売るお店。友だちより早く着いたらよくタピオカミルクティを飲んでいた。


 タピオカは飲みにくい。あれは飲み物というより食べ物。最後のタピオカも食べたくてフタを剥がして開けたりしてね。だから待ち合わせにピッタリ。今の彼と待ち合わせする時もよく飲んでいた。もちろんこんなにタピオカがブームになる前。


 飲み物の氷とかガリガリ噛んじゃう方なんだけど、それと一緒で長く飲めて、いろんな味の飲み物に合って。ちなみに黒だけじゃなくてカラフルなタピオカも選べる。


 好きだし飲むけど、流行りに乗ってると思われるのがちょっと複雑。なんて思ってた今日この頃



「タピオカしか愛せない」



 ついこの間まで豆乳シリーズにハマっていた彼氏が言った。



「はいはい」



 私はタピオカブームが去っても飲みたいと思う。可愛くてかわいそうな黒い粒を愛してる。彼の方はブームが去ったら飲まないだろう。別にタピオカだけを飲み続けたいわけじゃない、私だってクレープに浮気したりもする。


 もしかしたら彼にとって私もその程度で、興味がなくなったらポイっと捨てられるのかもしれない。


 一瞬で思考がマイナスに飛んでいた私に彼は言った。



「待ってる君を思い出すから」



 嬉しくて少しイラっとして



「じゃあ早く来て」



 なんて言ってしまった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼氏にタピオカしか愛せないと言われたら 新吉 @bottiti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ