天使との再会

勝利だギューちゃん

第1話

高校時代、好きな女の子がいた。

とても天真爛漫で、彼女の周りは、常に人であふれていた。


彼女はそれに、笑顔で答えていた。


僕も話をしてみたかったが、陰キャラだった僕には、入り込む隙もなく、

一度も話す事がなく、卒業した・・・


いや、一度だけあった。

友達とバレーボールをして遊んでいた彼女だが、

そのボールが、僕のほうへ転がってきた。


それを拾った僕のところに、彼女がやってきて、

「ありがとう」と、声をかけてくれた。

その時に、指と指がふれて、ドキドキした。


思春期は、これでもときめく。

人間は、いくつになっても、ときめいていたい。


ときめきを無くしたら、老いる時なのだ。


でも、所詮は高校時代のこと。

「あの子は、俺の事は、すぐに忘れるだろう」


僕も青春の1ページとしては大袈裟だが、彼女の事は忘れよう。

そう思っていた。


現に、彼女の事は、いつしかセピア色となった。


それから数十年・・・


僕は社会人となった。

結婚はしていないやもめ暮らしだが、食うには困っていない。


で、同窓会の知らせが届く。

≪高校時代に、タイムスリップができる時間です≫

≪クラスメイトは、いつまでも仲間です≫

ありきたりな、誘い文句がある。


興味のない僕は、欠席に○をして、投函した。


「何を今更・・・」


心の中で、悪態をつく。


数日後、幹事のクラスメイトから電話が来る。


「来いよ、あの子も来るんだぜ」

「誰だ?あの子って」

「ほら、クラスの天使だった・・・」


そっか、僕だけでなく、みんなの天使だったんだ。

当たり前だけど・・・


「もう、結婚して子供もいるよな」

幹事に訊いてみる。

「いや、苗字変わってないから、独身じゃないか?」

「婿養子もらったんだろ?」

「いや、それはないだろう」


迷った挙句、参加することにした。


で、当日・・・


当たり前だが、みんな完全な、おっさんやおばさんになっていた。

僕も、おっさんなので、文句は言えないが・・・


「やあ、よく来てくれたな」

「顔だけ出しに来た。すぐに帰る。で、あの天使は?」

声をかけてきた、幹事に訊いてみる。


「あそこだよ」

天使を見つけた。

確かに老けてはいる。

でも、当時と変わらず輝いていた。


相変わらず、周りに人だかりが出来ている。

会話が耳に入ってくる。


「ねえ、どうして結婚しないの?」

「だって、理想の人がいなくて」

「だって、そんなに高望してなかったじゃない」

「うん。でも『ここだけは、外せない』という人がいなくて」

彼女の外せない条件って何だろう?

まあ、僕には関係ないな・・・


「じゃあ、俺は帰るわ」

「えっ、もう帰るのか?」

「ああ、じゃあな・・・」

僕は帰路に着こうとした・・・


その時・・・


「○○くん、待って」

僕を呼びとめる声がした。

そこには、あの天使がいた。


「久しぶりだね。元気だった?」

「うん、○○さんも、元気そうだね」

「まあね。そういえば、こうして話すの初めてだね」

「そうだね」

年がいもなく、ドキドキしてしまう。


「ねえ、○○くんは独身?」

「俺に、家族がいると思う?」

「なら、丁度いい。結婚して」


冗談か?嫌がらせか?

いや、聞きちがいだろう。


「何だって?」

「私と結婚して」

眼を見る。

真剣だ・・・


「何で俺と?冗談だよね?」

「ううん。本当。だって、○○くんは、私が絶対に外せない条件を、唯一持っている人だもん」

何だ?

その条件って・・・


「で、その条件って、何?」

その問いに彼女は笑顔で答えた。


「わからない?」

「ああ」


【些細な心遣いが出来る人】


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