第12話

私、猫谷儚日は結局ただただ桜井先輩の後をつけるだけの人という立場で公安の初めの一週間を終えてしまった。今は来週に控えた文化祭についての当日シフトを決めている。


「うちのクラスは多分他のとこの休憩所になると思うから、席多めにしたいんだけど。どうかな?」


自分のクラスは動物をモチーフにしたコンセプトカフェ、アニマルカフェをやることになっている。まあ簡単に言えば動物の格好をしてカフェをする感じだ。夏休みの時点で色々な準備は終わっており、あとは担当の動物とシフトを決めるだけだ。


「「「いいと思うよー」」」


「めんどくさいから動物はくじにしまーす。シフトは何となくみんなで調整して。」


聞いての通り文化祭委員がてきとう人間のため、なんとなくでシフトは決まりそうな様子だ。できれば人がいない時がいいな、など思うが別に他に予定もない。自由席になりつつあったので灯が私の隣にやってきた。


「はーちゃんシフト合わせようよ。そしたら一緒に文化祭まわれるよ。」


前だったら楓もいれて三人で行ってたのだろうけど、生徒会中心の文化祭だ。楓は二日間まるまるクラスにはいられない。まあある意味シフトかぶらなくて済むから気まずくはないのだが。そもそもいくら敵対する委員会だと言えどそこまで離れる必要があるのだろうか。あの日から私は楓に避けられている。


「はーちゃん。」


楓は頬ずえをついて、窓の外を見てぼーっとしている。なんだかなあ。


「ねえはーちゃん聞いてる?」


「ん?あ、ああシフト合わせたいね。」


「そうじゃなくて、ほら。」


灯の手には上に丸い穴が空いた箱。動物を決めるくじだ。いつの間にか来ていたらしい。


「後ろ回すから引いて?私と一緒に開けるからまだ開けないでね。はい、ありがとう。」


灯が後ろにくじをまわしてからいっせーので開ける。


「うわあ、私うさぎだったよ。はーちゃんは?」


なんてことだろう。なんとも言えない顔をする私を見てそのまま私の手元を灯は覗き込む。


「あら、名前の通りだね。」


そこの紙には〝ねこ〟と書いてあった。ただでさえ動物とか痛いのにねことか恥ずかしすぎる。


「もう、文化祭休みたい。」


部活のゲーム発表会があるからそれはできない。くそ!くそ!


「やあねえ、輝也さん呼べばいいじゃない。きっと可愛いって言ってくれるよ?」


茶化すようにぐいぐいと肘をついてくる。


「絶対呼ばない!やだ、そんなの見られるの一生の恥だもの。」


「ふうん、まあいいけど。じゃあシフトはここでいいかな?」


なんだか少し怪しい気もするけどいまは放っておこう。


「うん、それでいいよ。」


なんだか先が思いやられるな。

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