現実逃避物語
莉菜
海
現・実・逃・避・物・語
明日は中間テスト最終日。しかしなんとなく、海に来てしまった。
何も考えず堤防の上を歩く。肩甲骨まであるポニーテールが揺れる。勉強道具で目一杯のカバンが肩に食い込む。それでも歩き続けた。
海のべたっとした風。海の匂い。気持ちいい。
歩き続けて、ローファーが痛くなってきた頃、堤防の端っこが見えてきた。結構高かったので、階段で道路に降りた。最後の一段はジャンプした。
少し歩くと、森の中に小さなテラスのあるカフェがあった。迷わずテラス席に座って緑茶を頼んだ。緑茶と和菓子を持ってきた店員さんが奥の座敷を勧めたので、そっちに移ってみた。
だんだんカバンが億劫になってきた。奥の座敷は畳敷きで、真ん中に掘りごたつがあった。緑茶を飲みながら、こっそりカバンを掘りごたつの中に入れた。
500円玉を机の上に置いて、髪のゴムを外し、縁側から外に飛び出した。長い髪が風に
揉まれる。何かを振り払いたくて全力で駆けた。
髪の毛が海風に吹かれて心地いい。
どこまでも走った。
海の風を肺いっぱいに吸い込んだ。
気がつくと、母の車に乗っていた。
いつもの最寄り駅が見えた。
置いてきたはずのカバンは持ったまま。
電車に乗り、気がついたら学校にいた。普通に授業が始まった。
後ろの席の子に肩を突かれた。「髪おろしてるの、似合ってるよ」
現実逃避物語 莉菜 @mendako
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