第一章 暁の空の少女
1
「どうんすだよ、この状況……」
光聖のことを坊や呼ばわりした新人警備員の年収と同じくらいの望遠鏡を覗きながら悪態を吐く。
「終末を示す星=アテネが漆黒の空に輝く時、世界は終わりを迎える」
キオクの通りならば、暁に輝いていたアテネは世界が
真夜中午前零時の漆黒の空に紅く輝く星が現れるまで、世界が
光聖だって軍部がどうにかしてくれると思っていたから悠長に構えいられたが、何も対応がないならば話は別だ。
「本当に、世界は滅ぶぞ……」
「光聖君……。何度も言うけどね、
今日もサンタージュに断られとぼとぼと光聖は家路についていた。
大晦日、昼過ぎにも関わらず街を歩く人の数は多く、誰もが早足だった。
「っ……」
アテネが午前零時にいつ輝いてしまうか常人ならば考えられない程の速さで計算していた光聖は誰かとぶつかってしまった。
「あ、すみません。怪我はないですか?」
「い、いえ。こちらこそすみません。怪我は……、大丈夫です」
ぶつかったのは少女だった。髪や目の色が淡い色なので妖精族の様だ。
「ちょっと考え事してたもので、すみません」
光聖は基本的に研究以外には興味関心を抱かないのにも関わらず、この少女から感じだ違和感を解決しない限り、この少女を再び雑踏の中に紛れさせてはいけないと思った。
「では、」
やっと分かった。この人は……、 光聖は少女の腕を掴んでいた。
「あ、あの……、何か?」
少女は驚いて離して欲しそうに光聖を見てきた。
「僕の物、返してくれませんか。あんな物僕くらいしか欲しいと思いませんよ。返して下さい」
光聖は一層強く少女の腕を掴んだ。
「赦して……、赦して下さい。お金にならないなら、私は必要ありません。お返ししますから……赦して下さい」
少女は涙目になって訴えた。光聖も泣かれてしまったので動揺してしまう。
「いや、別にいいんですよ。返してくれるなら。……とりあえず、店にでも入りませんか? ね?」
通行人のこちらを不審げに見る目線に耐えられなくなって光聖が提案すると、少女は首を縦に振った。そして、大人しく光聖に連れられるがまま角の喫茶店に入った。
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