わたぼうし

第1話

夜風にしたたるつゆと土。

ふく風かおる道すがら。

ただこうむるはわたぼうし。

それなるきわには流るる川の、しかしおよぐはかつてと違い。

それはたとえば遠く山野の、幼きころの思いとなれば、草をつみ。たはたをていれし。

沢におりてはかにを取り。

あるいは鯉でもさばいてみるもの。


こうしてみあげる山々は、ひかりをよくうつしだす石英の、しかし木々の映える彼らと違い、いかにも息をつまらせる。


わたのとばぬは空気のせいか、あるいは水のよどみのせいか。

しかしこれらの是非のあらずは、みずからのたたえる『みず』にこそあれば。


いかに飛ばすや、わたぼうし。

いかで飛ばずや、わたぼうし。

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わたぼうし @Laevel653124710

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