17歳 高校生 男

“手の届かない人”というよりは“手が届いて欲しいと思っていない人”ができた。



好きだと伝える事も、ましてや付き合ったりする事もなく、俺は一方的にその人を見ていたいと思った。




勇気がないと言われたら、そうなのかもしれない。



自分の中で、あの人はこうあるべき、こうであって欲しいというのがあって、その中には俺は必要ない。




少しだけ、話してみたいなとか、仲良くなりたいなとか、考えたりするけど、その結果自分の思い描いている先輩じゃなかったらと思うと怖いのだ。




「は?あんた誰?」


と言われるならまだ良い。




「え〜?君だれ〜?連絡先交換する〜?」


などという、軽い人だった場合、立ち直れる気がしない。




自分の中想像と言う名の妄想ばかり広がって、自分自身危ないやつになりつつある。





「おーい!早く外行くぞ!」


「へいよー」


友達に呼ばれて、体育館からグラウンドへ向かうため、置いておいた靴を探す。


下を見ていると、向こうから同じ靴がやってきた。



校則ギリギリをついた少し派手なこの靴は、最近買ったばかりで、まさか誰かと被るなんて!どんな奴が履いているのかと顔を上げた。



話の流れ的にもう分かったと思うけど、あの先輩だった。



先輩も、靴を見てから、俺の顔を見て少し照れくさそうにして去っていった。




ただ、それだけのこと。


でも、それだけで俺はどうにかなりそうだった。

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