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木戸遥は目を見張った。ずっと地下にこもっていた。この場所を尋ねる人などまずいない。通信は専用回線でしかできないし、それも基本的に内側からの定期連絡のみだった。研究所の場所だって機密情報になっている。
それなのにモニタの画面の中にははっきりと瀬戸夏の姿が映し出されていた。夏はモニタの中で仁王立ちをして、じっと遥の顔を見つめている。
その顔は間違いなく夏だった。
「ちょっと、あんたこんなとこでなにしてんの? 言いたいことはたくさんあるんだけどさ、まあ、とりあえず疲れたから中で休憩したいんだけど?」
夏はモニタ越しに遥に文句を言っている。遥はあきれて声が出ない。
「ちょっと早く開けてよ。もしもし、聞こえてる? ねえ? ねえってば!」
その映像を見て、遥は頭を抱えて考えた。
どうしよう? たぶん、居留守をしたとしても、もしくはここからモニタ越しになにかを言ったとしても、夏は決して大人しく実家に帰ったりはしないだろう。どういう方法を使ったかはともかくとして、ここまでたどり着いたことは異常なことだ。夏はその異常なことを奇跡的にやってのけた。そのことはきちんと評価しなくてはいけない。
遥は背もたれのある椅子の上で体育座りをしている。
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