Know-Nothing

床町宇梨穂

Know-Nothing

彼女が手紙を送ってきた。

そこには最近の出来事と日々の生活が綴ってあった。

しかし最後に短いエッセイが書いてあった。

ある作家が書いたエッセイらしい・・・。

僕はその意味がわからなかった。

どうして彼女はこのエッセイを僕に読ませたかったのだろう・・・。

僕はその本がほしくなった。

その本全部を読めば、彼女の気持ちが分かるかもしれない。

僕は早速、書店に行って本を探した。

しかしこの作家の本は二十冊ぐらい発売されていた。

たったひとつのエッセイを二十冊の本の中から探すのはちょっと書店ではやりにくい。

しょうがないので僕はそれを全部買った。

家に帰って一冊づつ読んでみる。

とてもつまらない文章の集まりだ。

それでも僕は買ってしまった本を読まないのはもったいないような気がして、全部読んだ。

彼女が僕に送ったエッセイももちろんあった。

でも結局彼女が何を言いたかったのかは分からなかった。

本人に直接聞けば良いのだけれど、エッセイ自体がなんかとても二人の微妙な関係を表している様で、できなかった。

セックスはするけれど、お互いを干渉しない。

会いたい時にだけ合って体を重ねる。

僕達はそんな関係を続けていた時期があった。

しかし、いつの頃からか別に理由も無いままに会わなくなってしまっていた。

そこには愛情なんて存在しなかったと思う。

でも僕は前から彼女の事が好きだった。

もちろん彼女は気付いていなかったと思う。

いや、気付いていたのかもしれない。

だから手紙なんて送ってきたのかもしれない。

僕も彼女に手紙を書いた。

最近の出来事と日々の生活を書いた後にエッセイも書いた。

それは僕が書いたものだけれど、適当なペンネームを付けておいた。

彼女は本屋さんに行って存在もしない作家の本を探すのだろうか?

もし、僕が偶然、彼女を書店のエッセイ集コーナーで見かけたら、素直に僕の気持ちを彼女に伝えよう・・・・・・。

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Know-Nothing 床町宇梨穂 @tokomachiuriho

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