第75話 マキの願い

シロが薬を飲み干し倒れた瞬間、マキは菜々の首元を思いっきり掴み上げた。

菜々は必死にマキの腕を外そうともがいていたが、マキの力が強く思ったように外すことができない。


「ねぇ、これはどういうことなのかしら!?」

「わ、私も知らな・・・」

「あんたが持ってきたものでしょう!!!」

「そ、それはそうだけど・・・」

「じゃあなんで飲み干した後にシロが倒れてるのよ!!」

「そ、そんなの私に聞かれてもわ、わからない・・・」


マキは菜々の首をより強く絞め始めた。

菜々の呼吸もだんだんと荒くなり始める。

しかし、マキは一向に菜々の首から手を離そうとしない。


「あんたのせいでまたエリが死ぬかもしれないのよ!?だからあなたが嫌いだった。だけど、エリは三人でいることを望んだ。だから私も受け入れていたのよ。

でも、エリはもう死なせない。死なせたくない!だから」


そう言うと、マキは菜々を床に投げつけた。

体の節々が痛み、呼吸はまだ安定しない。でも、目の前には泣いて喋り続けるマキの姿があった。


「早く治してよ・・・私の、たった一人の家族なのよ」


そうだ、マキちゃんにはもう家族と呼べる人がシロしかいないんだ。

母親は亡くなり、事件以降親戚たちにも絶縁されて孤独に生きるしかなかったんだ。

でも、そんな時に運命的な再会でまた二人は家族になれた。

そんなの壊したくないに決まってる。そうだ、壊すわけにはいかないんだ。

私一人のエゴで二人の足を引っ張るのはもうごめんだ。

菜々は決意を固め、今あるものでシロを回復させる薬品を作ろうとしのだが、ここで予想外の出来事が起こった。


「うぅーん・・・あれ、私いつの間に家に帰ってきてたの?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る