第74話 手遅れ

菜々が来る二週間前、シロはマキに監禁されていた。

監禁されている間にシロに自由は無く、あるのはただマキの言うことに黙って従うことだけだった。

初めのうちはシロも抵抗し続けていたが、抵抗するたびにマキからの暴力を振るわれ、次第に抵抗する気力がなくなっていき、そのうちシロは段々とマキの要求を受け入れ始めた。

そして段々と思考がマキに依存していき、菜々が訪ねてくる一週間前にはもうマキに依存し尽くし、他の人物全てを拒絶し始めた。

菜々が家に入ろうとすると、シロが全力でそれを拒み、その様子をマキはシロの後ろでニヤニヤと笑いながら見ている。

しばらくシロと菜々の争いが続いていたところをマキが止め、菜々を家の中へ招き入れた。が、その間もシロはマキの後ろにいながら菜々を睨み続けた。

リビングにマキと菜々が座ると、シロはマキの後ろに隠れ再び菜々を睨み続けている。

ずっと視線を感じながら居座るのも大変だけど、この機会を逃すわけにはいかないわ!


「それで、何の用なのかしら?」

「あなたにこれを飲んで欲しくて家に来たのよ」


そう言いながら菜々は鞄から瓶を取り出した。中には完成した薬の液体が詰まっている。


「へぇ、なんか初めて見るものね」

「たまたまテレビの通販でやってた健康ドリンクなの、せっかくだからマキちゃんにもお裾分けしておこうかなって・・・」

「ふーん・・・」


よしよし、マキちゃんが興味を示したわ!これならきっとうまくいくはず!

マキちゃんが健康ドリンク好きなは知ってるし、こう言っておけば確実に飲んでくれるわ!

そう菜々は勝手に思い込んでいたが実際にマキが飲もうとしていたのもある。

しかし、菜々の想像とは裏腹に、全くの予想外の事態が発生した。

マキが蓋を開け口をつけようとした瞬間、シロがその瓶を奪い取りそのまま一気に飲み干したのだ。

シロが飲み終わったかと思うと、先ほどまで手に持っていた瓶が落ち、そのままシロが倒れ込んでしまった。

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