第31話 菜々の秘密
「マキちゃんに、何をしたの?」
そのシロの問いかけに菜々は一瞬驚いた表情を見せたが、何故か顔に笑みを浮かべていた。
シロはその時、菜々から何か禍々しいものを感じた。明らかに最近の菜々と様子が違う。これは、過去の菜々と雰囲気が似ている。
「な、何ニヤついてるのよ」
「いやぁ、今になって聞いてくるんだなって思っちゃって」
「そ、それくらいどうでもいいでしょ。それより早く答えなさいよ」
「・・・まぁ、確かに少しだけ手を加えたわ。少しだけ、ね」
「なら、それについて知ってる事全部話して」
「それは構わないけれど、本当に真実を知りたいのかしら?」
「当たり前じゃない!他の誰でもないマキちゃんの事なんだし」
「ふーん・・・ま、いいわ。そうね、どこから話そうかしら。・・・あ、そうそう初めに言っておくけど、マキちゃんって実は10年の間刑務所にいた訳じゃないのよね」
「・・・え?」
「あ、普通は知らないわよね。実はマキちゃん、3年くらいうちの実家で手術してたのよ。脳の」
「じ、冗談はやめてよ!そんな事、私の調べた記事には何も・・・そ、それにあんたの実家って桃の農家じゃない!」
「表向きはそうよ。でも、別の仕事もしてるの。後、その事実が書かれてないのは私達がもみ消したからよ」
「で、でも!マキちゃんがあなたのところに着いて行くわけが・・・」
「裁判の時のマキちゃんの状態、知ってるでしょ?」
「ま、まさか!」
「そう、あの時はなんでも言う事を従順に聞いてくれたわ。私のお願い事でも」
「そ、そんな・・・」
「その後はプロの人に任せてマキちゃんの記憶を改ざんさせてもらったのよ。だいたいこんな感じだけど、どう?満足した?」
「・・・」
「まぁ色々と整理する時間は必要よね、少しくらい待ってあげるわ」
マキちゃんが脳の改ざん手術を受けてた・・・?それも、本人がわからない間に。
その性か、菜々の印象も完全に消され、今ではただの気の良い隣人を演じ続けている、とでも言うのかしら。
なんにせよ、記憶を失ったのであればそれを復元させられるものもあるかもしれない・・・!
なら、さっさとそれを渡してもらってマキちゃんの記憶を元に・・・
「記憶は戻せるかもしれない、とか思ってない?」
「・・・そうね、今そう考えていたところよ」
「実はあるのよね、これが」
「・・・!早く教えなさいよ!!」
「私の実家の地下室にその時に使ったメモリーがあって、その映像を見せれば多分元に戻るんだろうけど」
「なら早くあなたの実家を教えなさ「でも、それも壊しちゃったんだよね〜」え・・・?」
「あれ、何か言った?」
「メモリーを、壊した・・・?」
「そう。本当は大事に持っておこうと思ってたんだけど、周りが壊せ壊せうるさくてね」
「そ、それで人の大事に記憶を消し去ったって事なの・・・!」
「私にとっては邪魔なものだったからね」
「・・・今日は帰るわ」
「あれ、もう行っちゃうの?」
「ちょっと色々とありすぎて疲れたのよ・・・」
「そっか、じゃあ帰るついでにこれも持って行きなさいよ」
そう言うと、菜々はタンスからボロボロになったノートを持って来てシロに渡した。
ノートはボロボロでタイトルの名前もインクがかすれてあまり読めなかったが、マキという名前だけははっきりとタイトルに残っていた。
「こ、これ何・・・?」
「見てからのお楽しみよ。今度、それの感想も聞かせてよね」
シロは渡されたノートを袖に押し込んで菜々の家から出て行った。菜々はシロが帰る時に笑顔で見送っていた。
「ふふっ、シロちゃんあのノート見たらどんな反応するんだろうな〜」
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