第19話 悪夢

学校が始まってからシロはいつものように登校していたのだが、近頃目にクマが出始めて、食べる量もいつもより少なかった。

最初はただの夜更かしのし過ぎかと思って、早く寝るよう薦めたりはしたのだが、シロのクマが消えることはなかった。

そこで、マキは今日シロが帰って来た時に最近の事について尋ねることにした。


「ねぇシロ、最近何かあったでしょ?」

「・・・うん。でも、大丈夫だから・・・」

「大丈夫なわけないでしょ!!あんたがご飯を少ししか食べない時は何かを抱え込んでる時なのよ。だからお願い、私に話して?」

「・・・最近、同じ夢ばかり見るようになったの」

「同じ、夢?」

「私が学校から帰るとマキちゃんがいなくなってて、いつまで待っても戻って来なくて探しに行こうとして外に出ると家の前で、マ、マキちゃんが

・・・」

「わ、私がどうしたのよ」

「ち、血だらけで・・・あ、ああ、あああああああ!!!」

「ち、ちょっとシロ!!大丈夫だから、私はここにいるから!」

「はぁ・・・はぁ・・・」

「え、なにこれすごい熱じゃない!!早く病院に行かないと!!」


マキはシロを背負い、大急ぎで病院へ向かって行った。タクシーに乗っている最中もシロの呼吸は荒くなっていた。

タクシーの人が近道で言ってくれた為、早く病院に着く事が出来た。お代も診察が終わるまで待っていてくれるらしい。

運転手の人にお礼を言い、病院の中へ入って行く。


「ど、どうされましたか?」

「あの、うちの姪が熱を出して・・・」

「わかりました。少々お待ちください」


順番を待っていると、シロの息が少し落ち着いてきていた。さっきより少しは楽になったみたい。

ちょうど私達の番になったのでそのままシロを連れて診察室へ向かって行った。

中には女性の先生が座っていた。


「本日はどうされましたか?」

「あ、はい!あの、うちの姪が熱を出してしまって」

「あら、じゃあちょっと見させてもらうわね」

「お願いします」

「・・・クマがすごいわね」

「そうなんです、最近うなされて眠れないらしくて」

「もしかしたらそれが原因で熱が出たのかもしれないわね」

「やっぱりそうなんでしょうか」

「何か内容とかは聞いてないかしら?」

「その、私が目の前で血だらけになる夢を何度も見るそうで」

「それは・・・」

「私もなんとかしてあげたいんですけど」

「とりあえず睡眠薬出しておくわね。それがあれば少しは寝れると思うから」

「ありがとうございます」

「熱はすぐ治ると思うわ。しばらくは安静にしてあげてください」

「はい、わかりました」


病院での診察を終え、薬を受け取ると待っていてくれた運転手の人にお金を渡そうとしたのだが、帰りの時に合わせて会計するから、とそのまま私たちを乗せてくれた。

マンションに着き、代金を支払った後お礼として近くの自販機で缶コーヒーを買いそのまま運転手の人に渡した。

初めは受け取るのを拒んでいたのだが、私の気持ちを察してか受け取ってくれた。

今日は大変な一日だったけど周りの人に恵まれたいい日でもあった。

さてと、とりあえずシロをベットに寝かせて、・・・あ、夜のものなにも無いんだっけ。後で夜の買い出しに行かないと。

でも、今日はいっか。シロが心配だし、近くにいてあげたほうがいいよね。

私は寝ているシロの頭をそっと撫でた。その時、シロの表情が少し穏やかになっていた。

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