満ち欠ける夜に

真文 紗天

第1話

金曜日の満月を見上げて月が綺麗だねと囁く。驚いてこちらを見る君めがけてシャッターを切れば、ぱしゃりと音がして目をまん丸にした君が写った。

君の顔は幾枚もアルバムに残してあるけど、どれだけ撮っても飽きるなんてことはない。

呆れた表情、真剣な横顔、照れた頬。

幾千と貯まった写真の中の君はいつも違う顔をしていて、僕の記憶を新しく色づけてくれる。

1番古ぼけたセピアの1枚と、

1番新しい鮮明なそれとを一緒に見比べて、

君もこんなに若々しい頃があったのかなんて呟けば、最近のカメラは解像度が高すぎるのよなんて刺々しく返される。

遊園地、白いスカートを着た君。

夏の浜辺、青い海、赤いパーカーと白い肌。

公園のベンチ、紅葉のかかった君の寝顔。

四角い枠に切り取られた風景が僕の記憶で、そこに僕の幸せがあった。アルバムの何処にだって君がいた。

毎週末、金曜深夜零時、また僕は君を忘れる。

1週間と記憶の保てない僕の、

ただ1つきりの最愛。

ね、大丈夫、泣かないで。

消える思い出は1つだってないから。

笑ってそう言った僕の顔を、

泣顔の君がぱしゃりと写真にした。


ーーそう、泣かないで愛しい人。

写真でも到底映しきれやしない、

花咲くような笑顔で笑う君に、

きっと僕はまた恋をするから。

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