名月や十五でよめにゆきし人

【読み】

 めいげつやじふごでよめにゆきしひと


【季語】

 名月(仲秋)


【大意】

 旧暦八月十五夜の仲秋の名月に、15歳で嫁入りした人を思うのであった。


【附記】

「かぐやひめは何歳のときに月に帰ったか」との質問に「十五や」と答えるしゃれを聞いたことがある。中七と下五は当然、三木露風(1889-1964)作詞の唱歌「赤とんぼ」による。とはいえ、必ずしもそれらの物語と唱歌だけによるわけではない。


【例歌】

 水のに照る月なみを数ふれば今宵ぞ秋のも中なりける 源順


【例句】

 名を捨てて月もや山に御隠遁 季吟きぎん

 名月は豆腐売る夜のはじめかな 信徳しんとく

 名月や舟虫走る石の上 桃隣とうりん

 むら雲や今宵の月を乗せていく 凡兆ぼんちょう

 名月や池をめぐりて夜もすがら 芭蕉

 名月や門に指しくる潮頭 同

 三井寺の門たたかばやけふの月 同

 名月やちご立ち並ぶ堂の縁 同

 明月や座にうつくしき顔もなし 同

 さし引の汐にながれぬ望月夜もちづきよ 曽良そら

 名月や柳の枝を空へふく 嵐雪らんせつ

 名月や煙はひ行水の上 同

 名月やたしかに渡る鶴の声 同

 名月や畳の上に松の影 其角きかく

 名月や竹を定むるむら雀 同

 しかももとの水にはあらず今日の月 露川ろせん

 名月や琴柱ことぢにさはる栗の皮 園女そのめ

 青鷺のつがひわたるや今日の月 浪化ろうか

 名月や土手のはづれのなびき藪 同

 望汐もちしほの橋の低さよ今日の月 利牛りぎゅう

 名月や茄子畠に人の声 乙由おつゆう

 名月や壁に酒のむ影法師 半綾

 名月や水底濁す四つ手網 亀柳

 名月や何に驚く雉の声 示右

 明月やすずきのはねる下屋敷 吏登りとう

 はし姫のやどるかげなし今日の月 存義ぞんぎ

 名月や船なき磯の岩づたひ 太祇たいぎ

 名月や雨を溜たる池のうママ 蕪村

 名月やうさぎのわたる諏訪の海 同

 名月や神泉苑のうを躍る 同

 花守は野守に劣るけふの月 同

 名月や汐みちくればさざれ蟹 蓼太りょうた

 明月や座頭の妻のかこち顔 闌更らんこう

 あらし吹草の中より今日の月 樗良ちょら

 人遠く水長うして今日の月 暁台きょうたい

 名月や明方青き淡路嶋 青蘿せいら

 名月や辛崎の松せたのはし 几董きとう

 名月の夜にも炭やく烟かな 乙二おつに

 名月をとつてくれろと泣く子かな 一茶

 名月や草木に劣る人の影 梅室ばいしつ

 名月に明日の日和の瀬音かな 釣壺

 今日の月馬も夜道を好みけり 村上鬼城

 名月や故郷遠き影法師 夏目漱石

 名月や杉に更けたる東大寺 同

 いが栗のはぢける音やけふの月 正岡子規

 名月や露こしらへる芋の上 同

 名月や鰯もうかぶ海の上 同

 鎌倉に波のよる見ゆけふの月 同

 名月に飛び去る雲の行方哉 同 

 琴弾の祠の上や今日の月 寺田寅彦

 月今宵茶釜に化ける狸哉 同

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