仲間達の新たな活動 9

「なぁアラタ。集団戦の申し込みの事なんだけどよ」

「はいはい、申し込みね」

「いや、ちとこんな案があるんだが」


 申し込みが殺到している中、皇太子の親衛隊隊長とやらの申し込みを受けた。

 その次の申請者からの話だった。


「ややこしい話は止めてくれ」

「けど、このままじゃ一年間順番待ち、なんてことになりかねねぇだろ?」


 確かに、数日間の予約のために何年も待たなきゃいけないってのは、こっちとしても心苦しい。

 それに、申し込みに来た人達は今すぐにでも鍛えてもらいたいという一念で来るんだろうし。


「例えばな、誰かがフィールドだけで、魔物何体かと訓練したいとする」

「ああ」

「ダンジョンは空いてるわけだよ。普段の、アイテム探しの連中はいるとしてもな?」

「まぁそうだな」

「アラタんとこの魔物何体かは、フィールドで訓練に付き添ってるが、それ以外は手が空いてるわけだ」

「まぁそうだな」


 こいつの言ってることは合ってる。

 間違いはない。


「そこで、順番が次以降の冒険者達の中で、手が空いてる魔物達との訓練をダンジョンでやりたいって奴なら、前の申し込みの奴らと同時に訓練ができるんじゃねぇの? 場所も相手もかぶらねぇんだから」

「ふむ……」


 テンちゃんとライムとモーナーが、フィールドでの訓練にお願いされたとする。

 ダンジョンでクリマーとマッキーとコーティに、訓練をお願いしたい奴がいたとする。

 どっちも同じ期間……例えば、どちらからも一日だけお願いされたとする。

 これまで通りのスケジュールなら、この二組の次の申し込みはその日と次の日は予定が塞がり、予約は二日後になるわけだ。

 だがこの提案に乗れば、二組の訓練はこの日に同時に行われるから、二日後になる予定が翌日に短縮される。

 条件が揃えば、十日後まで予定が塞がってたのが五日後にまで短縮される。

 その十日間、特訓する連中が全員半日で終わるとするなら、十日間待ちぼうけの申請者の順番待ちは三日間まで短縮される。

 ダブルブッキングが怖いんだが……。


「ダブルブッキングなんか、別にいいんじゃね? 後者の申請者は前者の予定に合わせりゃ、効率は落ちるかもしれんが、長い順番待ちでくたびれるよりはましだと思うぜ?」

「い……いいのか?」


 後ろの申請者達から同意の声が上がった。

 馬車や竜車のダブルブッキングとはわけが違う。

 相乗り自由な乗車券じゃねぇか。しかも、ある程度なら相乗り可能なら、確かに順番待ちが長くなる辛さよりはましだ、と。


「それに、アラタは受付のほかにおにぎり作りとかもあるだろ? みんな、あんたの仕事が大変になるってことくらいは分かるさ。それくらいのミス、笑って許せるレベルだぜ?」

「料金が倍になるようなミスよりは、確かにはるかにマシだよな」


 ……料金は申請者には三通り。

 日程は、半日か一日かの二通り。

 訓練の相手は何人か。

 そして何日間続けるかで倍になっていく。

 それだけじゃねぇか。

 ……大丈夫だと思うけど。

 計算ミスがあったら、発見次第修正すればいい……よな?


 ※※※※※ ※※※※※


 けど、七日後と言っちゃったこともあるし、おそらくそれに合わせて彼ら……彼女らも休暇の予定を立ててるだろう。

 一日に複数の依頼を引き受けるのは、親衛隊の終了日の後からにしよう。

 その親衛隊はというと、その初日。


「とりあえず、そっちからは誰か五人くらいお願いしようかしら。三対五の集団戦。半日それで様子見してそれで具合が良ければそのまま三日間続行。物足りなければさらに追加で」


 そしてお昼休み。


「ごめんなさい、やっぱりそっち、三人で。三対三で、午後から三日間お願いするわ。……あんた達……いくら訓練でも、相手をなめてかかっちゃダメでしょっ」


 流石リーダー。

 息切れしまくりの二人と比べて、気落ちしているのみ。

 かなりやられたらしい。

 で、こっち側の五人のテンちゃん、マッキー、クリマー、サミー、モーナーは……。


「久々に楽しめたわねー」

「面白かったぞお」

「でも、午後から二人減らされるんですよね?」

「あたし、午後もやりたいなー」

「ミッ」


 楽しい時間を過ごせた、といった感。

 しかし、疲れを何とか癒して気持ちを新たにした午後の訓練も、同数対決も圧倒されたっぽい。

 そして三日後。


「お疲れ様。初日の昼の変更の時に申し込み直した通り、こちらの人数三人が一日分。これを三日分なので延べ人数九人分をベテラン料金三万円をかけまして二十七万円に、二人が半日分の三万円で三十万円になります」

「えっと、それ、支払ったわよね?」


 ルミーラとやらは、三日間部下の引率並びに付き添いっぽい立場だったようだ。

 他の九人は、午前午後と二回に分けての三日間の六回分にローテーションを組ませてたようだった。

 半日休みの制度にして、何とかやりくりしてたようだったが、その半日の訓練ですら一回ごとに全員へとへと。

 俺からすれば、お疲れ様しか言葉が出てこない。

 が、ほかに出てくるものもある。


「えー、それでですね。訓練の日程無事終了で、そのお祝いとして……お祝い金十万円贈呈です」

「え?」

「へ?」

「何それ?」


 三人の目が点になってる。

 まぁ無理もないか。

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