ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ同人小説

@ei6

バトルブリーダーズ協会

怪獣達が日常として普通に存在する星。

その星は、ココとは別の宇宙の違う地球。

その地球に、ある一人の少年がいる。

これはその少年の物語。


執事が運転する車の後部座席。

少々荒い運転で、ガタガタと揺られながら、そこから見える街の景色はやはり僕は不思議に思う。


人々と色々な怪獣達とが共に生活しているのだ。

ココでの怪獣達の大きさは、人と同等か一回り位大きい程で、人と生活を共にし人の役に経っていた。


宇宙人型、獣型、ロボット型の怪獣達…。

それぞれの特性や得意な事を生かして稼いでいるようで…。


四次元怪獣のプルトンなんて手足もなく、穴の多い緑色のホヤみたいな姿をしているが。

建材や鉄骨のような重いモノを念力で高く持ち上げたりして建設現場なんかで働いている姿を良く見かける。

この光景が当たり前になって、60年近く経っていた。


一番最初にこの地球に実態化し現れた怪獣。

宇宙怪獣ベムラー。


ベムラーは胴と首が長く、全身に鱗と、背中には凸凹したトゲが生えていて…。

それこそビル並みにデカかったそうだ。

口からは、ペイル熱線というビームまで出して暴れ回り、悪魔とまで言われた存在だった。

当時、世界中の科学者達が一丸となって、そのベムラーを調べた。


調べて調べて…そして分かった事がある。

この地球とは別の、数多あるパラレルの宇宙の存在だった。


そんな数あるパラレル宇宙で存在していた怪獣達。

その怪獣の存在データがノイズのような量子となり宇宙を飛び越えた。

その量子が結晶化し更にそれがより集まり、この宇宙の地球で自然と実態化してしまったらしい。


世界中の科学者達は知恵を出しあい。

怪獣への対策を考えた。

共存共栄か討伐か…。

その両方か…。


そうした中で、ある天才科学者が発明したのがベーターカプセルだ。


そのフラッシュペンライトのような形のモノから出る光りを怪獣に当てる事で、怪獣を人のサイズにしたり。

元の大きさへと戻したり。

怪獣や使用者を別の場所へと転送する事も出来た。

怪獣との共存共栄の道が拓かれた。


人と怪獣達とが共に生活するようになったこの星。

僕らはこの地球で生きている。




「エイジ様。そろそろ到着しますよ。」


街にいる怪獣達を見て物思いにふけっていた僕に、執事のトン爺がそう話しかけた。

程無くして車は巨大なビル施設内へと入り、隣接する駐車場へと車を止めた。


ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ協会本社ビル。


人が怪獣と共に生活しているとはいえ、怪獣達の中には破壊衝動やバトル衝動の強いヤツもいる。

そんな衝動を発散させてやるのも、怪獣の育成や健康、メンタルヘルスには良いそうで…。


そこで怪獣同士を闘わせストレス発散させるのを、ルールのある競技として体系化。

それを管理運営する目的で組織されたのがウルトラ怪獣バトルブリーダーズ協会だ。

まあ、他にも色々と役割りがあるみたいだけど…。

今はまだ、語る必要も無いだろう。


狭い車内から久方ぶりに解放された僕は、その場でおもいっきりノビをする。

正直、お尻が痛くて痛くて仕方なかった。


「は~…疲れた~遠かった~。

トン爺。

こんだけ疲れるなら、何も本社ビルまで来なくても、地方にある支社で登録すれば良かったんじゃないか?」


「何をおっしゃいますエイジ様。

この組織創設にはあなたのお爺様も関わっているのですよ。

あなたのお父様もココで登録されたのです。

こういう事は、決意とヤル気を固める儀式のようなモノ。

ココで登録してバトルブリーダーズを始める。

そうするのがベストだと私は思うのです。」


トン爺はそう力説する。

まあ、ココまで来てぶつぶつ言っても始まらない。


「仕方ない、行ってくるかな…。」


「お一人で大丈夫ですか?

よろしければ、私もご一緒に…。」


「トン爺。

僕はそこまで子供では無いよ。

一人で出来る。」


僕はバトルブリーダーズ本社ビルへと一人で向かった。


本社ビルへと入ると、三面異次元人ギギが受付に立っていた。

ギギはアシュラ像みたいに顔が3つあって、その三面の顔それぞれで違う対応していた。

訪問客の応対しながら、電話応答し、同時に片手でパソコンの操作もしている。

応対していた訪問客が引いたので、僕はギギに話しかけた。


「スミマセン。

バトルブリーダーズの参加登録に来たんですけど…。

受付は何処でしていますか?」


真正面のギギの顔が僕に答える。


「ようこそ、バトルブリーダーズ協会本社ビルへ。

参加登録でしたらナヴィをお呼びしますので、しばらくそちらのラウンジでお待ち下さい。」


「ナビィ?」


「最近開発されたバトルブリーダーズ支援型ロボットです。

これからは怪獣ブリーダー様お一人に、一体ずつ貸し出される事になりました。

詳しくはナヴィにお聞きして下さい。」


「ロボットか…。」


僕はロボット型の怪獣が好きだ。

ロボ型の怪獣には、鋼のような堅さ、機械としての機能と、生物の本能と柔軟さが混ざりあったような…。

そんな相反するモノが、融合したカッコ良さがあると思うんだ。


どんなカッコ良いロボットが来るのかと思ってワクワクしてラウンジのイスに座って待っていたら…。

そのロボットがきた。


「はいは~いお待たせしました~。

バトルブリーダーズ支援型ロボット。

ナヴィです。

よろしくっ!!」


僕は呆気にとられた。


その子は…。

全身白いボディにパッチリした黄色な目。

口はないけど何処からか明るく可愛い声を流暢に出し。

おでこには赤いグラスのフェイスガードと、ネコミミ?のようなモノのついた女

の子型ロボットだった。

正直、ロボロボしくてカッコ良いのが良かった…。

声もロボみたいなカクカクしたので…。

少し残念に思いながらも慌てて挨拶を返す。


「ど、どうも。

で、バトルブリーダーズに参加登録したいんだけど…。」


「コ~ら…。

自己紹介の挨拶をされたら、自分の名前をまずは名乗る。

挨拶の基本だぞ少年~。」


嗜められてしまった。

確かにこれは僕が悪い。

慌ててイスから立ち上がる。


「あっこれは失礼。

僕の名前はブラーヤ・エイジ。

よろしくナビィ。」


僕は手袋を外し、ナビィの前に手を差し出し握手を求めた。

ナビィはその手を取り握手すると、表情は作れ無いようだが、不思議と笑ったような気がした。


「はい、コチラこそよろしくお願いします。

ところで…。

後ろにいるそちらの不審者の方は、エイジさんのお知り合いですか?」


ナビィが僕の背後を指差す。

またかと思いながら振り向くと、そこには新聞紙に穴を空けてコチラを不安そうに伺う不審者が…。


間違いない執事のトン爺だ。


「大丈夫、身内だ。

いつもの事だから、ほっといても大丈夫。」


「そうなんですか…。

なかなか変わった身内の方ですね。

それではブリーダーの登録書類をチャチャっと作成しますので…。

改めては名前と年齢を口頭で…。

あと簡単なアンケートなんかも答えて下さい。」


どうやら明るい人格設定にされているようだ。

僕は改めて自分の名前を答える。


「名前は、ブラーヤ・エイジ。

13歳だ。」


「ぶ・ら・ー・や…」


ナビィはトートバッグに入れていたタブレットを取り出すと、それにスワイプ入力し始めた。

ナビィの存在はハイテクなんだけど、行動は思ってたよりローテクだ。

少し残念でガッカリした。

必要項目を全て入力し終えると…。


トートバッグから今度は、大きめのサングラスのようなヘッドギアと…。

まんまペンライトみたいなベーターカプセルを取り出し、僕へと渡して来た。

先ずはヘッドギアを着けるように言われる。

どうやら擬似空間で、ある場所へと連れていきたいようだ。


ヘッドギアをセットしスイッチを押すと、視界はラウンジから瞬時に切り変わった。

ナビィもフェイスガードを下ろし、同じ疑似空間へと移動してくる。


その場所は、ある研究室のラボみたいな部屋で…。

視界の中央には大きな卵形のポッドが設置されていた。

ココの研究室は、教科書や本で見た事がある。


「ナビィもしかしてココって…。

科学特捜隊内の怪獣研究ラボの疑似空間かな?」


「ちょっと違います。

疑似空間ではなく、ライブ映像空間ですね。

詳しい場所は防衛上機密です。

ココに怪獣DNA。

怪獣データ・ノイズ・アッセンブルを送る事で、怪獣の生成を行い。

手持ちのベーターカプセルで、エイジさんの所へと転送されてきます。

他にも怪獣の強化や進化、スキルの継承もこの場所で行いますので…。

そのヘッドギアとベーターカプセルは絶対に失くさないように、くれぐれも気をつけて下さいね。」


「分かったよ。」


「それではエイジさん。

まずブリーダーとしてあなたに育ててもらう怪獣は…。

宇宙怪獣ベムラーですっ!!」


そうナビィが力説すると、


目の前の卵形のポッドがピカリと光り、卵の中央がパカっと開くと、そこからベムラーが出現しゆっくりと出て来た。

それと同時だ。


てんてれてて~♪てんてんてれって~♪


ヘッドギアから音楽が流れる。

こだわってるな~。

ベムラーのその顔は、なんとなく神社にいる狛犬の口を開けた方に似てる。

沖縄のシーサーのイラストっぽい顔でもあるかな。

なかなか愛嬌があって可愛いや。


「エイジさん。

なぜベムラーを一番始めに、ブリーダーに託されるのか分かりますか?」


これは知っている。

教科書にもちゃんと書いてあった。

僕は自信たっぷりのキメ顔で答える。

この程度は一般知識レベルだ。


「一番最初にこの地球に現れた怪獣に敬意を込めて…。

でしょっ?」


「へ~。

なかなかロマンチックな回答ですね~。

ですが正解は、出現する頭数が一番多いからです。」


結構単純な答えだった。


「え~~~~…。

教科書にはそう書いてあったよ。

ウソだったの?!?」


「エイジさん。

教科書が絶対に正しいと思ってたら足元をすくわれますよ。

大人は子供の為の教育上の建前と、公私の都合上の建前で本音や真実を隠して来ます。

物事の本質を見極められる目を養って下さいね。」


「そうなんだ… なんかショックだな…。」


「パラレル宇宙から来る怪獣DNA(データ・ノイズ・アッセンブル)は、ある一定数が集まってしまうと…。

この地球にある鉱物。

ウルトラストーンと反応して怪獣が自然出現してしまいます。

自然出現した怪獣の捕獲や討伐が出来る強い怪獣とブリーダーを育てる。

その為のブリーダーズ協会でもあります。

ブリーダーの仕事って人類社会で結構大切なんですよ。」


「教科書で習いはしたけどさ。

実際にキミからそれを聞かされると…。

重みが全然違うな。」


「とりあえずはこれで貴方は正式に怪獣ブリーダーの一人です。

トップブリーダーを目指して頑張って下さいね。

エイジさん。」


今度はナビィから握手を求めてきた。

ライブ空間内だが、両の手袋を外しその手をガッシリと握る。

感触はしっかりとあった。


「ああ、頑張るよ!!」


僕はそう答え、人の生活を守れる強いブリーダーになると決意した。

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