第23話 仲間

「なぜ貴様がここにいる…?

――レン マケドニクス」


「いつまでも落ち込んでいる訳にはいかねぇから…ここに来た…!」

レンは手をグーッと握りしめた。


スルトが口を大きく開き叫んだ。

「貴様はワシに負け!そして大事な姉が犠牲になった!!すべて貴様の責任だ!

そこに座り込んでいる娘も!横たわってるガキも全て貴様の責任だ!貴様は周りを巻き込み尚も自分の欲望を全うするというのか!?」


「自分の欲望とか…そんなんじゃねぇよ…」


「何が言いたい…!!」


「強いて言うなら…」

レンはそう言い1歩前に進むと同時に体が稲妻に包まれた。

ふと前を向き、悪魔と化した老人を睨み付ける――

「覚悟を決めた」


偽物クローン風情が…!!ワシにたてつくなァァァァア!!」

禍々しいオーラがスルトを包み込む。

それまで座っていた椅子は地面と共に崩壊し大きな穴が出来た。


「カレン…大丈夫…?ちょっといいか?」


「えぇ…何よ…」


「シロウを頼む」


「任せて…」


「ありがとう」

俺は前を振り向きスルトの方へと向かおうとした。


――レン!


「その…助けてくれて…ありが…とう」


「おう!!」

レンはカレンに向かって笑顔を見せた。

稲妻と共にレンはスルトの方へと向かって行った。


「ほら…起きなさい…起きなさいってば!」

カレンがシロウの頬を少し叩きながら呼んでいる。


どうしよう…出血が多すぎる…

このままじゃシロウが死ぬ

何とかしないと…


…レ…ン…さん…?


「シロウ!!大丈夫!?」


呼び掛けに答えるようにうっすらと目を開ける。


ね…言った…でしょ…レン…さん…は来て…くれ…るって…


「喋らないで!アンタは今死にかけなのよ!?」


カレン…ちゃん…

俺…帰ったら…結婚するんだ…


「こんな時に…無理矢理死亡フラグ建てなくていいわよ…」


カレン…ちゃん…


「だから喋っちゃダメだって!」


俺の…刀を…レンさんに…


シロウはゆっくりと全身震えながら自分の刀をカレンの手に託した。

「わかったわ…任せて…!」


あと…


「何よ…」


レ…ンさんが…ピンチの時は

【今】って…叫んで…


「何でよ…」


いい…か…ら…


「何か分からないけど分かったわ…」


カレン…ちゃん…ありがとう…


………


――刀を渡す隙も余裕も無い


この狭い空間のいろんな所から音が聞こえてくる。

スルト、レン、両者の戦いは目にも止まらぬスピードだった。

カレンはただ音がした方を見る事しか出来なかった。


「一体何者だ…貴様…」


「レン マケドニクス。魔法探偵だよ。」


「そんな事を聞いてるのではない!!なぜそこまで実力が上がっているのかと聞いているのだ!!」


「言ったじゃねぇか…覚悟を決めたってな!!」


「そんな事で…!!ワシに通用すると思うな!!」


激しく火花が散る!

次第に目が慣れていき、微かに追えるようにになった。

稲妻と闇が高速でぶつかっている。

話ている内容こそは分かるがその他は何が起こっているか分からなかった――


バンッ!!

何かが飛んでいきガレキが崩れ煙が上がった。

気がつくとレンとスルトが一定の距離を保ちながら立っていた。


「ワシの…腕が…」


「はぁ…はぁ…流石に…疲れる…」


飛ばされたのはスルトの腕だった。


「しかしな、レン マケドニクス。ワシは悪魔じゃ…ほら見よ」

そう言うと飛んだハズの腕がみるみると再生して行き再生した腕を前に出した

「これで元通りじゃ。」


「狂ってんな…」


「どうじゃ!?これが悪魔と人間を超越した神の力…!もう2度と人間何かに遅れはとらん!!」


「お前も元は人間だっただろ!」


「そうじゃ…だか捨てた、全て…全てな…

マケドニクス家さえ無ければ…ワシは…!!」


「だから俺の家族を…リサを…裏切ったのか!!」


「ワシは何もしてない!!…クソが…!

全て貴様らの!!」


「この…デク人形がぁぁぁぁあ!!」


レン!!


「カレン!?」


「この刀…!!受け取って…!!」

カレンは力いっぱいに刀を投げた。


これは…シロウの…


「後は…任せたわよ!!」


シロウの剣はカレンに渡り

そして俺に届けられた…

ありがとう…

やっぱりお前ら…

最高の仲間だよ…!!


「来いやぁぁぁぁあ!!」


そこからの戦いは時間にして約1分にも満たなかったが

両者の覚悟は思いとなり互いの力量を大幅に越え

千を越える打ち合いとなって

辺りに無数の火花を散らせた――

そして…


「ガハッ…」

スルトの腕はレンの頭を掴みあげていた。


「――レン!!」


スルトは片腕と片足だけだったが徐々に再生していき元通りとなった。

「残念だったな、レン マケドニクス。

ワシが悪魔じゃ無ければ貴様の勝ちだったじゃろう…」


レンは一言も喋らず頭を持ち上げられ口を開けた状態だった。


「しかし、感謝するぞ…レンマケドニクス…これでワシの力が分かった…せめてもの報いに瞬で終わらせてやろう」

スルトはもう片方の腕を顔に近付け

手を大きく開きそこからは真っ黒の球体が放たれようとしている。


「やめなさいよ…!!その汚い手をレンから離しなさいよ!!」


「小娘…ククク…次は貴様の番だぞ…今ここで貴様の仲間の顔が跡形もなく無くなる様を見るといい…ハハハハハハ!!」


「やめて…!」


黒い球体は次第にエネルギーを増して行く――


ふとシロウの言葉を思い出す。


レ…ンさんが…ピンチの時は

【今】って…叫んで…


「今ぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


「何だ…急に…?」


ドンッ!!!

バキバキ


大きな音と共にスルトの両腕が消し飛んだ

「誰じゃ…まだワシに歯向かう者がおったのか…」


フードを被った男がカレンに近づき声をかける…

カレンさん…?大丈夫ですか?


「アンタ…確か…ルークの所の魔道士…」


ええそうですよ…ほら…見てください…

男は手を広げると無数の魔道士がスルトを取り囲んだ!!


「何だ貴様らは…まぁいい…全てをワシのカテとしてやろう!!」


カチャ


銃口がスルトに突き付けられる


「なんじゃ…おまんは…情けないのう…元会長」


同じタイミングで大きな鎌がスルトの喉元に

後ろから牙を向く


「ルーク様の名を汚すなよ…元会長」


「ナーガ…それにリンリンも!!」


「良く頑張った…」


「後はわしらに任せぇい」


――今から正義執行じゃ



















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る