第4話
「父上からは京楽へ行くように言われたが、どのようにして迎えばいいだろう……。道が分からないとは情けない……」
幸光は道に迷っていた。
幼い頃より鍛錬に明け暮れていたためか常識を多少知っている程度で一般的な世の知識については疎い方だった。ましてや都に行くなど考えもしなかっただろう。
「もし、そこの者。こんな森の中で何をしておる? ここは危険だぞ」
幸光は声のする方を見た。そこには白い髪の綺麗な女性がいた。歳は幸光と同じ17そこらだと思われる。腰には刀を差していた。刀を振るうにはあまり鍛えられていないようにも見えた。
「おぉ、お侍でありますか! とても綺麗な女性ゆえ見惚れてしまいました! 自分は天羽 幸光と申します! 京楽へ行きたいのですが道に迷ってしまいまして!」
幸光は自分の思ったことは全て言う性格だった。案の定と言うべきか否か、女性は頰を赤らめた。
「わ、妾にそのようなことを申したのはお主が初めてだ」
幸光は何のことを言ってるのか分かっていないがとりあえず笑顔をつくった。
「妾は闇祓い・1番。三ツ花みつばな 雪花せつか。京楽ならばこの森を抜けた先の道をまっすぐ行けば着くであろう」
「ありがとうございます雪花殿! 礼にならぬかもしれませぬが、助力をさせていただきたいと思います」
それは森から姿を現した。
異形の者、闇憑き。それは世界の果てより現れた闇に侵食された者を指す。そしてそれを祓う者を闇祓いと呼ぶ。
闇憑きは闇に耐えきれず人間の姿から変形し異形の姿となる。つまり、人の形に近ければ近いほどその力を制御することができる危険な闇憑きだと言える。
遭遇した闇憑きは人の姿に近いが、制御することはできていないようだ。異様に発達した両腕と口から垂れ流すヨダレを見て制御できているとは言い難いだろう。
「それはありがたい。しかし、こいつは妾の手で倒させてほしい。もしよければ妾の戦う姿でも見ていてはくれまいか?」
この闇憑きは京楽で何人もの人を殴り殺し、食い散らかした。その凶暴性から確実に殺すため1番である雪花が出ることにした。
安寧の光は闇祓い・1番の者が統率することになっている。普通であれば統率する者が闇祓いのため都を離れるというのは危険な行為だが、今回に関してはその必要性があると判断したようだ。
「奴は京楽で何人もの人間を殺した。その中には闇祓いも含まれておる。まだ未熟な者たちであったが妾の大切な仲間であった」
「そうなのですか……。分かりました! 雪花殿の戦い、勉強させていただきます!」
「ふふ、私の戦いが勉強になるとよいのだがな」
雪花は刀を抜いた。
その刀は薄く、細く、白い……まるで雪のような刀だった。
「雪の
それは独自に作り上げた雪花だけの型。まるで消えるように移動し、気づけば闇憑きの後ろに立っていた。
闇憑きの太い腕から黒い血が垂れた。
浅い……
幸光はそう感じた。
しかし、次の瞬間。闇憑きの斬られた部位から強烈な冷気が放たれ、瞬く間に闇憑きは氷漬けとなった。
雪花の闇討ち刀『雪ノ白姫ゆきのしらひめ』。その真なる能力は傷を負わせさえすればそこから冷気を発生させ瞬間に凍りつかせる強力な能力だ。今ある闇討ち刀の中で最も薄く、最も美しいとされるその刀の扱いは難しい。力を誤れば周囲一帯を凍土と化す恐れもある。
刀は本人の意思によってその力を大きく左右される。取り扱いの難しい雪ノ白姫を完全に制御するには精神を強く持つ必要があった。故に親が殺されようと、仲間が殺されようと感情を一定に保つ必要がある。もし精神状態を安定することができなければその犠牲は多大なものになると分かっているからだ。
刀を感情で制御しているのか。または感情を刀によって制御されているのか……。
周囲は雪花と距離を取るようになった。その冷たい肌を気味悪がり危険なのでは、と感じたからだ。
今までもこれからもそうだ。きっと彼もまたこの力を見れば妾から距離を取るだろう。
雪花はそう思った。
だが、それは違った。
「お見事です! 自分の助けなど不要でしたね! 京楽についたらぜひ手合わせをお願いしたいです!」
手にほんのりとした温もりを感じた。
幸光は雪花の手を取りぶんぶんと振った。幸光の独特な握手の仕方だった。
「お主、妾を恐れぬのか?」
幸光は首をかしげる。
「なぜです? 雪花殿はこんなに強く、こんなに美しいではありませんか。そのような人を恐れる理由があるんですか?ま
幸光はどこまでも正直であった。
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