第78話 エロ本と後輩ちゃんと美緒ちゃん先生
桜先生が姉となり、先生と後輩ちゃんが姉弟に関する偏った考えを持っていると判明した。
一人っ子だったから姉弟に憧れていたのはわかるけど、明らかに異常だ。
何だよ! 姉弟なら性処理も子供を作るのも普通だっておかしいだろ!
もしかして、二人の知識はエロ本からだったり? ………………あり得る。
当の本人たちは仲良さそうにリビングでゴロゴロしている。本当に仲の良い姉妹みたいだ。
家のことを全て終えた俺は先生と後輩ちゃんの前に仁王立ちする。二人がキョトンと見上げてきた。
「どうしたんですか、先輩?」
「姉さんに用事があって。姉さん? 最近仕事が忙しかったのは知っていますが、お部屋のほうはどうなっているのでしょうか? 服は脱ぎっぱなし、ゴミは散乱している、ベッドはぐちゃぐちゃ…なんてことはないですよね?」
先生が床に寝転がったままドヤ顔している。
「もちろん! その通りだよ! 悲惨なことになってるよ!」
「自慢げに言うな! まあ、わかってたけど…。洋服はちゃんと洗濯籠に……入れてないですよね…。下着とか見せたくないものがあったら今のうちに隠してください」
「ふふんっ! 弟くんには隠すものなんてありません! 下着からお姉ちゃんの体の隅々まで見てください!」
「ドヤ顔して言うな! この人は本気で言っているからなぁ……。今朝本当に全裸になったし。汚部屋やエロ本を見つかって恥ずかしがっていた先生はどこへ行ったのだろう…?」
あぁ…頭が痛い。胃のあたりも痛い。俺、ストレスで胃潰瘍になるかも。ハゲたらどうしよう。こんな人が教師で大丈夫なのか?
猫のように丸まって、日向ぼっこしている後輩ちゃんがひらひらと手を振ってくる。
スカートなので俺から水色の下着が見えているんだけど。それにこのアングルはヤバい。危険すぎる。
「お掃除頑張ってくださ~い。私たちは戦力外なので。お掃除が終わったら私が癒してあげますよ~」
「…………よろしく。ついでに言っておくが、下着見えてるぞ。襲いたくなるから気をつけてくれ」
後輩ちゃんがガバっと勢いよく起き上がり、スカートを押える。後輩ちゃんは爆発的に真っ赤になり、キッと俺を睨んできた。
「なんで先輩は私が油断しているときに見るんですか! 私が覚悟を決めて見せてる時しか見ちゃダメなんです!」
「理不尽な! というか、洗濯の時に見てるんだが!?」
「下着だけならただの布ですから! もう! 見るなら黙って見ててくださいよ! いちいち教えないでください! 恥ずかしいです!」
「えぇ~…」
さっきは見たらダメって言っていたのに、黙ってるなら見てもいいってどういう事なんだ…? 女心って難しい。
まあ、今度からありがたく見させてもらおう。俺もお年頃の男なのだ。
「弟くん、お姉ちゃんのも見る?」
「脱がなくていい! 俺は掃除に行ってくるから!」
脱ぎ始めた桜先生から視線を逸らし、慌てて部屋から出て行く。
いってらっしゃーい、という二人の声が聞こえた。
後輩ちゃんが好きだとはいえ、先生のあられもない姿を見たら俺も男として興奮してしまうのだ。その後は、後輩ちゃんに対して途轍もない罪悪感を覚えるけど。
取り敢えず、頭の中から後輩ちゃんと桜先生のことを追い払い、俺は先生の部屋の掃除に集中する。
真下の先生の部屋は瘴気が漂うほど汚れてはいないが、衣服が散乱している。脱ぎ捨てられた服と過激な下着。コンビニ弁当のゴミもある。
どうしてゴミ袋に入れないんだろう? これ、いつのだろう? 最後に掃除したのは一週間前。もしかして………考えるのは止めておこう。
俺はゴミをまとめ、服を洗濯する。洗濯機が動いている間に床を掃除したりシンクを綺麗にする。洗濯が終わって干し終わったら、今度はぐちゃぐちゃのベッドのシーツなどを洗濯機で洗う。その間にトイレとお風呂を掃除した。シーツを干し終わってひと段落。
ベランダに干し終わって部屋の中に戻ったら、後輩ちゃんと桜先生が綺麗になったリビングで仲良くうつ伏せになって雑誌を読んでいた。
何故二階の俺の部屋から移動してきたのだろうか?
「あっ、先輩お疲れ様です」
「弟くんお疲れ~」
「なんで降りてきたんですか?」
「たまにはお姉ちゃんの部屋に入り浸るのもいいかなぁと」
「妹ちゃんと私のお部屋でゴロゴロするのもいいかなぁと。あっ、妹ちゃんこれどうだろう?」
「おぉ! これいいです! ほわぁ~こんなのもあるんだぁ。ふむふむ。勉強になります」
二人は脚をパタパタさせながら仲良く雑誌を読んでいる。
洋服の雑誌かな? でも、後輩ちゃんってあんまりオシャレに興味が無いから。先生は先生で部屋着がジャージだし……。早く買い物に連れて行かないと。
「どれどれ? どんなの読んでるんだ?」
俺は二人が読んでいる雑誌を覗き込む。でかでかと写真が掲載された生々しいページ。イケメン男性と美人な女性がモザイクがかかった裸で絡み合っている。
「………………ってエロ本じゃねーか! まだ日が高いのに二人仲良く堂々と読むな!」
「先輩のえっち!」
「乙女が読んでいる本を覗き見するなんてダメだよ、弟くん。あっ、もしかして一緒に読みたかったとか? じゃあ、一緒に読もっか♪」
「読まないから! 絶対に読まないから! 読むとしても一人で読むから! って二人とも! 少しは恥ずかしがってよ! 二人の羞恥心はどこへ行った!?」
「どこにも行っていませんよ。保健体育の授業と割り切っています。性教育の授業だったらもっと生々しいことをクラスメイト達と話し合ったりするじゃないですか。それよりもマシです。それに性教育は大切なことですし」
「あぁ~性教育の授業ねぇ~。二学期に入ってすぐにあるよ。講演会と全クラスでいろいろと……。二人とも頑張ってね。私も授業頑張るから!」
「………………男性経験皆無なのに?」
「うぐっ! 弟くんの言葉がお姉ちゃんの心にグサッと突き刺さったよ~」
先生が後輩ちゃんに抱きついて助けを求める。後輩ちゃんは先生をナデナデしながら俺に視線を向ける。
「先輩、めっです! お姉ちゃんをいじめたらダメなのです!」
「ご、ごめんなさい」
後輩ちゃんの視線に俺は弱い。あっさりと白旗をあげて降伏する。
「許します! では、弟くん、妹ちゃん、お勉強の続きを…」
「させません。この雑誌は没収です。後で俺がいないところで読んでください」
「「えぇー!」」
何故そこで残念な声を上げる!? 普通エロ本って隠れてコソコソ読むよね? なんで目の前のお嬢様方は男の俺の前で堂々と読むの? 誘ってる?
「教科書が先輩に没収されたので、次は読書をしましょうか」
「そうだね!」
二人はどこからともなく本を取り出すとじっくりと読み始める。今度は文字で書かれた普通の本らしい。えーっと、題名は…………。
「おいコラ。どうして後輩ちゃんの本の題名が『ヘタレ男をベッドの上で言いなりにさせる12の方法』で、姉さんの本は『ヘタレ男をベッドの上で昇天させる12の方法』なんだ!? どこでそんなものを手に入れた!?」
「これは楓ちゃんから………………………………もらっていません。楓ちゃんは関係ないです」
「あいつか!? 今度楓の苦手なものフルコースを作って食べさせてやる! いや、後輩ちゃんの手料理を食べさせるか? お仕置きとしては最高だな。最悪の場合死に至るけど」
「………先輩?」
後輩ちゃんが冷たい瞳で睨みつけてくる。
「おっと。じゃあ姉さんの料理で」
「弟くん?」
桜先生が冷たい瞳で睨みつけてくる。
俺は必死に言い訳を探し、何も思いつかなかったので話を逸らすことにする。
二人の視線が冷たくて痛い。
「………さぁ~て、そろそろお昼ご飯を作らないとなぁ。その前にその本も没収です。俺がいないところで読んでください」
「「あぁ~!」」
本を取り上げられた二人は残念そうに声を上げる。
別に捨てないからいいだろう? 一時的な没収です。エロ本を俺の前で読まないでください。
二人から没収したエロ本は夜になって返還しました。何故時間がかかったのかというと………中身の検閲を行ったからです。もちろん一人でコソコソと。
結構面白かったです。いろいろなことが書かれており、とても勉強になりました。
あの~お二人さん? 返還してそのまま俺の寝室のベッドに横になって読まないでいただけませんか? 枕をクンカクンカ嗅がないで!
読んだり嗅いだりしてもいいけど、せめて俺がいないところでやってください!
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