第63話 〇ッキーゲームと後輩ちゃん
部屋中にあまい香りが漂っている。これはクッキーの香りだ。
今日で期末テストが終わり、後輩ちゃんをデートに誘ったり、女子がクラス会のことで盛り上がったりした後、帰宅した俺はひたすらクッキーを焼いていた。
もう何枚焼いたのかわからない。軽く百枚は超えているはずだ。まあ、焼いてるのはオーブンだけど。
最後のクッキーが焼き上がった。ちょっと冷ます間に俺も休憩するか。
「せんぱーい! 終わりましたー?」
リビングでぬいぐるみを抱いて座っている後輩ちゃんが声をかけてきた。
ぬいぐるみは俺が誕生日プレゼントであげた、ぶちゃいくな猫のぬいぐるみだ。
後輩ちゃんはニャンコ先輩って名前を付けたらしい。まあ、見た目も名前もあのアニメキャラに似てるけど。
「終わったよ」
「先輩! ずっと我慢してたんです! 焼きたてを食べたいです!」
後輩ちゃんがぬいぐるみのお腹をモフモフしながら目を輝かせている。今にも涎が垂れそうだ。
後輩ちゃんは女子高生の乙女だよな? その顔はどうかと思うぞ。俺も食べたいから用意するけどさ。
何枚かお皿に盛ってテーブルに置く。焼きたてのクッキーを手に取って………って熱っ!? 火傷しそうだ。
「熱いですねぇ。私がフーフーしてあげます。フーフー」
後輩ちゃんが熱々のクッキーのお皿に息を吹きかけた。
何故かドキッとしてしまったのは俺だけの秘密。
後輩ちゃんがフーフーしたクッキーを食べるのか……。
何故だろう。あ~んよりも恥ずかしい。
後輩ちゃんがクッキーを手に取った。俺もちょっとドキドキしながら手に取る。
「「いっただっきまーす」」
サクッと気持ちのいい音が聞こえて、口の中に甘さが広がる。うん、上出来だ!
「うふふ…美味しいです」
後輩ちゃんが幸せそう。この笑顔を見ただけで作った甲斐があった。
「むぅ! このクッキーをクラスメイトに配るのはもったいない気がしてきました」
「クラスマッチのご褒美にはいいだろう? 結構余分に作ったから俺たちが食べる分もあるし」
「それはそうですが…」
ちょっと不満げな後輩ちゃんは、サクッとクッキーを一齧りして再び幸せそうな顔になる。
うん、美味しい。後輩ちゃんがフーフーしてくれたから余計に美味しい。
「先輩? 私がフーフーしたクッキーのお味はどうですか?」
後輩ちゃんの顔がニヤニヤしている。俺は思わず咳き込んだ。
「ぐふっ! な、なにを言っているんだ!?」
「ふっふっふ! 先輩の顔に書いてありましたよ! それで? ご感想は?」
「………………………………美味しかったです」
「そうですか。またフーフーしてあげますね」
後輩ちゃんはニヤニヤしていてとても嬉しそうだ。俺を揶揄うのが楽しいらしい。
でも、後輩ちゃん。後輩ちゃんの耳は真っ赤だからね? 恥ずかしいなら揶揄わなければいいのに。
焼きたてのクッキーはあっという間になくなった。数枚しか用意してなかったし、それに俺たちにはまだやることがあるのだ。
「さあ後輩ちゃん! 味見が終わったところでお仕事です! クッキーの袋詰めを行います!」
「Yes,sir!」
ノリノリの後輩ちゃんが敬礼している。
「まずは手袋をつけます。そして、クッキーを袋に詰めます。最後にリボンで結びます。以上です! 頑張りましょう!」
「おー!」
ということで、俺たちは黙々と作業を始めていく。袋にクッキーを6枚入れていく。入れて入れて入れていく。
クラスメイト分のクッキーを袋に入れ終わったら、次はリボンで結んでいく。結んで結んで結んでいく。
地味な作業って疲れるよね。
後輩ちゃんが手伝ってくれたおかげで予想以上に早く終わった。
「終わったー!」
予備の分まで全部用意することができた。後輩ちゃんが後ろに倒れて寝転がる。
お胸がふにょんと揺れた。眼福である。
俺は立ち上がってお茶とあまりのクッキーを準備した。後輩ちゃんが起き上がってお茶を受け取る。
「ふぅ。先輩のお茶は美味しいです」
「それはどうもです」
俺と後輩ちゃんはお茶を飲んでまったりとする。
後輩ちゃんがクッキーを一つ手に取って、俺の口へ近づけてくる。
「はい! あ~ん」
パブロフの犬となった俺は反射的に口を開けてあ~んをしてもらう。やっぱり後輩ちゃんにあ~んされるととても美味しく感じる。
「どうですか?」
「とても美味しいです。じゃあ、後輩ちゃんもあ~ん」
俺もお返しにあ~んをする。家ではよくやるからもう慣れた。恥ずかしさはあるけど。
「はむっ! レロレロ」
クッキーをあ~んしたのはいいけれど、俺の指ごと食べられた。そのまま手を掴まれて指を舐められ甘噛みされる。
ゾワリとした気持ちよさを感じる。後輩ちゃんが色っぽい。
「って後輩ちゃん!? 俺の指を食べないで!」
「ぷはっ! もぐもぐもぐ。ふふふ。美味しかったですよ」
「それってクッキーのことだよね!?」
後輩ちゃんは大人っぽく微笑んだまま喋らない。ちょっとドキドキする。
この後輩ちゃんの唾液で濡れた指はどうしよう? キラキラして淫猥である。
舐めるか? いや、やめておこう。
俺はタオルで拭った。
「今度は私の番ですね。
後輩ちゃんがクッキーの端を咥えた。そのまま軽く突き出してくる。
ほうほう。〇ッキーゲームならぬクッキーゲームか。
滅茶苦茶恥ずかしいけど、俺も男だ。受けて立とう!
「っ!?」
俺はクッキーの端っこを咥える。〇ッキーよりも距離が短いクッキーだ。ほんの少し動いただけで唇が触れてしまいそうだ。お互いの熱い息がぶつかる。
うわ! 滅茶苦茶恥ずかしい! 端から齧るのは無理! 絶対無理!
驚いた後輩ちゃんの口が緩んだ。その隙にクッキーを抜き取って、もぐもぐと食べる。
うん、美味しい。
後輩ちゃんの顔が驚きから不満顔になった。
「むぅ! まさかあのヘタレ先輩が受けて立つとは!」
俺がヘタレると思っていたらしい。
後輩ちゃんの不満顔の口にクッキーを近づける。
俺にあ~んされた後輩ちゃんがまた指まで食べてしまった。
さっき以上にペロペロハムハムされてしまう。
ちょっとイケナイ雰囲気になっちゃうから止めてくれないかな?
「よし! これはどうですか!」
食べ終わった後輩ちゃんがまたクッキーを咥える。今度は半分以上後輩ちゃんの口の中だ。本当に端を咥えないとキスしてしまう。
むむむ。これはどうしよう。流石にこれは…。
『どうです! 流石にこれは出来ないでしょう? ヘタレ先輩?』と後輩ちゃんが目で煽ってくる。
可愛いけれどちょっとムカつく。あのドヤ顔を壊したくなる。
よし。この作戦でいくか。
俺はスッと後輩ちゃんに顔を近づけていく。甘い香りが鼻腔を満たす。
本当に受けて立つとは思わなかったのだろう。可愛い後輩ちゃんのドヤ顔が驚きで固まった。
そして俺は固まった後輩ちゃんの可愛い鼻にチュッと優しくキスをした。
「ふぁっ!?」
爆発的に真っ赤になった後輩ちゃん。驚きで目を見開き、口を開けた。
その隙を見逃さず、俺はクッキーの端を咥えると、後輩ちゃんの口から引き抜き、口の中にいれるともぐもぐと食べる。
クッキーは半分以上後輩ちゃんの口の中にあったため湿っていた。
うん、美味しい。そして、後輩ちゃんの顔が可愛い。
「せ、せせせせせせせせせせせせ先輩!」
「はい。可愛い後輩ちゃんの先輩です」
「な、なにをっ!? 今なにをっ!?」
後輩ちゃんが盛大に驚いて混乱している。
「後輩ちゃんの小さなお鼻にキスをして、油断した口元からクッキーを奪い取りました。美味しかったです」
後輩ちゃんが綺麗な手で自分の鼻を触った。別に鼻にキスしたのは初めてじゃないんだけどな。でも、初心な後輩ちゃんには刺激が強いらしい。
「先輩が私の鼻にキスを………私の唾液で湿ったクッキーを……」 バタン!
「こ、後輩ちゃん!?」
後輩ちゃんが気絶してしまった。久しぶりの気絶だ。
〇ッキーゲームではなくクッキーゲームという自分でも恥ずかしいことをしている最中に、俺が予想以上の刺激を与えてしまったため、頭がオーバーヒートしてしまったらしい。
俺は気絶した後輩ちゃんを慌てて介抱する。
「まったく! 幸せそうに目を回して!」
急な気絶で心配したけれど、口元を緩ませて幸せそうに気絶している後輩ちゃん。
ドキッとするほど可愛かったから密かに写真を撮ってしまった。うん、可愛い。
その後、すぐに目覚めた後輩ちゃんは顔を真っ赤にしながら挙動不審になっていた。とても可愛かったです。
最近は肉食系の後輩ちゃんしか見ていなかったから新鮮でした。
クッキーを作って良かった!
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