人喰いの土地

うにどん

本編

 中学生になったばかりの春の事だった。

 弟の同級生が行方をくらました。

 ただの行方不明じゃない、その同級生も含め、一家全員が行方をくらましたのだ。


 家族構成は同級生を含む四人家族、その四人家族が一気にたった一晩で居なくなった、家の中は荒らされた様子が一切なく、食卓には食べかけの夕飯がそのまま残っていたと言う。

 当然、私の周囲の大人達は大騒ぎ…………、ではなく、至って普段通りで自分達の子供と孫が行方不明になったにも関わらず同級生の祖父母は「やはり」と言って、まるで消えるのが解っていたかのような態度に私は食器を洗っている母にどうしてなのか尋ねていた。


「あの人達が居た所はね、人喰いの土地って言われてる所なの」


 そう返ってきた。

 昔から、あの土地に住む人はまるで消えるかのように居なくなる、だから、あそこは人喰いの土地と呼ばれてるのだと。此処に昔から住んでいる人達なら全員、知ってるわよと母は言った。

 消えた家族の旦那さん、母の小学校からの同級生で奥さんが自分の両親を一方的に嫌ってるからって、あの土地を両親が反対したにも関わらず購入し家を建ててしまったのだと言う。


「両親だけじゃなく、私も他の人もあそこは止めろって言ったんだけどね。変に意固地になっちゃって駄目だったのよ。

だから、私達は自業自得だと思ってるの」


――だって、人喰いの土地だって消えてしまうって解っているのに止めなかったんだもの。


 母は最後にそう言って食器洗いを再開した。

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人喰いの土地 うにどん @mhky

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