第8話 お買い物

 町中を歩く二人。

 落ち着いたおかげで、周りを見れる余裕が出来たシリル。

 キラキラした目で、人や建物を見ている。

 門の前で並んでいた時とは、比べ物にならないペースで、質問をしている。

 クレアは相変わらず、丁寧に答える。

 だがずっと周りから、大量の視線を集めている事が気になる。


「なんでこんなに見られてるの?」


 クレアは手を繋いでいる相手に、視線を落とす。

 今は、仮面は後頭部に付いているが、真白な服に、腰に真白な紐を縛り、そこに大きめの袋がぶら下っており、足元は裸足。

 これは目立つだろう…と頭を抱えるクレア。


「……気にしなくていい。とりあえず、お金を下ろしに行く。」

「お金を下ろす?」

「ああ。身分証があれば、お金を他に預けられるんだ。身分証を読み取って貰えば、現在預けている金額が分かる。それで、欲しい金額を貰うんだ。硬貨屋という。大金は持ち歩けないからな。」

「へえ!でもそれって、他の人の身分証でも貰えちゃうんじゃないの?」

「ああ。説明していなかったな。身分証は、その人以外が最後に触ると、確認が取れないんだ。どうやってるかは、分からんがな。」

「ふうん。」


 影の中でアルマは、考える。

 方法はいくらでもあるが、ペンで記入させていたのを考えると、ペンに魔力を吸わせて、インクで出して、本人の魔力を………と言ったところか、わざわざ言う必要もあるまいと一人結論を出す。



 二人はその、硬貨屋というお店に行く。

 店に入ると、中はあまり広くは見えなかった。

 入ってすぐ左右に四角い空間があり、椅子が少し並べられていて、正面は狭い通路になっており、扉がいくつも並んでいた。

 シリルはその四角い空間で、待っているように言われる。


『あの壁全てに、魔力が通っている。壊されないように強化しているな。』

『そうなの?なんで?』

『金を取られないようにだろう。クレアの話が本当なら、ここには大量の金があるからな。』

『なるほど。』


 しばらくすると、クレアが戻って来た。


「待たせたな。これでお金は大丈夫だ。買い物へ行こう。」

「うん!」


 二人は硬貨屋を後にする。


「それで何買うの?」

「シリル殿の服や、靴や、防具等だ。」

「でも、俺はお金ないよ?」


 冒険者ギルドに入り、すぐギルドマスターと話、終わった後は、すぐ出てきてしまったため、魔石は未だそのままだった。


「私が出すから気にしないでくれ。保護者だしな。それに急いだ方がいいんだ。……本当に。」

「……分かった。」


 とにかくこの目立った格好を、なんとかするべきだろうと考えるクレア。

 素直に頷くと、クレアに連れられるがまま、付いて行くシリル。

 まず最初に向かったのは、靴屋だ。

 裸足はまずい。町中で裸足なんて、今日日見ない。

 という事で、まずは靴を買いに行く。


「いらっしゃいませー!」



「ここは靴屋さん?」

「そうだ。一目見て分かる通りな。」


 ここはクレアが旅をする前に、また旅から帰って来た後も、よく来る店だった。

 クアガットでもかなり大きい靴屋だった。

 とにかく、種類が豊富で、情報もあった。

 店員もよく知った顔がいるので、気心が知れていた。


「こんにちはー。」


 クレアがそう言うと、店員の一人がクレアに気付き、いそいそと寄って来る。


「いらっしゃいませ!クレアさん!無事帰られたんですね!」

「あ……ああ、まあな。元気そうだな【イーサン】」


 このイーサンと呼ばれる店員もまた、クレアが赤き魔獣の討伐に行ったのを知っていた。

 しかし、よく知っている店の割には、クレアは引きつっていた。


「それで、やはり赤き猛獣との戦闘が激しく、新規の靴のご購入でしょうか!?いい物が、また入ってますよ!」

「あ……ああいや、実は今日は違うんだ。この子の靴が欲しいんだ。」

「わお!は・だ・し!」


 イーサンは、黒髪に黒い瞳の若い男の店員だった。

 とても表情豊かというか、表現豊かで、シリルの足元を見て、体全体で驚く。


「どうしたんですかー?可哀想に。痛かったでしょう?」

「んいや。全く。」

「なんと!お強いお子様だ!ただその可愛いお足が汚れているというのは、靴屋の私にとっては、もう!居た堪れません!綺麗で、丈夫な靴をご用意しますね!ちなみに、普段用で?」

「彼は、冒険者なんだ。だから、丈夫で動きやすい靴を頼みたい。」

「わお!!お子様と言ってしまい、大変申し訳ございませんでしたッ!!とても御美しい顔で、勇敢なる冒険者様だとは!御見逸れ致しました!では、すぐお持ちしますので、そちらにお掛けになってお待ちくださいッ!」


 全てがオーバーリアクションのその店員。

 声よりもとにかく動きがうるさかった。


「彼はな。こちらが話さなければ、余計な詮索はして来ない。それに靴の選びも完璧。見ただけで、サイズも分かるようだしな。本当にいい店員なんだ。……動きはうるさいがな。」

「うん。動きは凄かった。」


 しばらく待っていると、数種類の靴を持ってこちらに来た。


「冒険者様の方ならば!という物をいくつかをお持ちしました!ですが、申し訳ございませんッ!お客様の御足のサイズでは、大変限られておりまして、冒険者として使える靴は、当店でも数種類しか、御座いませんでした!大!変!不徳の致すところです!」

「いや、十分だ。それより、簡単に特徴を教えて貰えるか?」

「はい!かしこまりました!」


 店員はそう言うと、簡単に説明してくれた。

 数種類とは言ったが、とても丈夫で軽く、数々の魔法付与もされている超高級品から、とにかく最低限の丈夫さのみの普通の靴までと、意外と種類はあった。


 とりあえず、色々試してみるシリル。

 今までずっと裸足だったため、靴自体に違和感はあるが、一応は比べてみる。

 結果、魔法は何も付与されておらず、その代わり大変丈夫で、軽い物を気に入ったようだった。

 しかもアルマの見立てでは、魔力も通りやすいようだった。


「それでいいのか?金額は気にしなくていいんだぞ?」

「うん。これでいいよ。」

「そうか。」


 アルマのアドバイスで、自分で魔力変換して色々やるなら、逆に魔法が付与されていると、自分の魔力が通りづらく邪魔になるから辞めた方がいい、という事だった。


「じゃあ、これ下さい。」

「かしこまりました!こちらは、履いて行かれますか?」

「ああ。もちろんだ。」

「それでは、サービスで靴を補修出来、綺麗にも出来る、当店おすすめの魔水晶をお付けいたしますね!」

「ありがとう。」

「それでは、少々お待ちを!!」


 そう言って、一度奥へと引っ込むイーサン。


「それって分かんないけど、高くない?」

「平気だ。もっと高い物を買うつもりだったからな。」

「そっか。ありがと。」


 クレアはランクDになったばかりとはいえ、上位の冒険者だ。

 更にシリルの実力を知った今、安物の靴は与えたくなかった。

 なので、今回の靴は本来であれば、魔法付与されていないとはいえ、安くはない値段だが、シリルのためならば大した額ではなかった。


「お!ま!た!せ!しました!こちらが、先程ご説明させていただいた、魔水晶になります!必要な時に、靴の中に入れて頂ければ、一晩でかんっっっっぺきに!修復!修繕可能です!最低5回は、ご利用可能になっておりますので!是非、お使いください!」

「ああ、ありがとう。こちらが代金だ。」


 クレアは多めに硬貨を渡す。


「たしかに!!ありがとうございます!!御釣りはいりますか?」

「いや大丈夫だ。」

「ありがとうございます!!もし、靴の調子が悪い、靴のサイズが合わない、新しい物が欲しい、その他、私に会いたいという時はいつでもいらしてください!」

「あ……ああ。分かった。」

「ありがとう!!また来るね!」

「ぜひ!!ありがとうございました!!またのお越しを、心待ちにしております!!」


 凄い勢いで頭を下げ、見えなくなるまでそのままの店員。



 靴を履いて、うきうき気分のシリル。

 靴を履く事自体が、数年ぶりであった。


「靴久しぶり!何年ぶりかな…。でもこれだと、足の指の感覚は掴みにくいね。」

「それはシリル殿だけだ。それでもかなり足の裏の感覚は、掴みやすいはずだぞ。普通は、裸足で森の中を走れる人なんていない。怪我をするからな。」

「ふうん。ずっと裸足だったからなあ。」

「町中では、必ず履いて欲しい。」

「せっかく買ってくれたからね!ずっと履いてるよ!」

「……寝る時は、脱いでいいぞ……。」


 その声が聞こえたのか、聞こえていないのかは不明だが、くるくると回ってみたり、飛んでみたり、足元をずっと見ながら、楽しそうにしていた。

 ただ普通の子供ならば、そんな事をしていたら、知らない人にぶつかったりするのだが、そこはシリルだった。

 見ていないのに、みんな避けて、するすると進んでいく。


「シリル殿!ここだ!」


 そして次に行く目的だった店を、通り過ぎかけ、呼び止めるクレア。


「いらっしゃいませ!」



 ここは服屋だ。

 防具の下に着る物だったり、部屋着だったり、下着だったり、防具ではないものが売っていた。


「とりあえず次はその服を、なんとかしよう。」

「これダメなの?せっかく百蜘蛛の長に作って貰ったのに。」

「百蜘蛛!?」


 彼らの糸は丈夫で有名だった。

 だが、彼らは巣の中に糸を張らない。

 そして糸自体は、魔力で生成しているので、倒した所で回収できない。

 なかなかに貴重な品だったのだ。


「もっと早く言ってくれ……。多分その服一着で、数週間は暮らせるぞ……。」

「へえ。そうなんだ。」

「……はぁ。」


 百蜘蛛の服は、かなり高額だ。

 普通の民であれば、買わないような代物だった。

 火に弱い以外は、丈夫さ、軽さが尋常ではない。

 クレアは、どうりでクラウドに壁に叩きつけられた時、汚れ以外つかなかったのかと思った。

 てっきり魔力変換とやらかと思ったが、服がまずかなりいい防具レベルじゃないか……。

 なんせ、ただの服だ。

 防具じゃないのだ。

 ただの服に、そんな金額を出す者は金持ちか、ランクがもっと上の者くらいだった。


「見た目的な問題がな。一応それを売って、新しい服を買うというのも手だぞ?」

「んー。それは嫌だな!せっかく、めちゃくちゃ嫌いな虫の巣の中に入って、頼んで作って貰ったから。」


 クレアはもう詳しく聞くのを止めていた。

 確かに、深淵の森に取り残され、一人で生きていた子供だが、アルマは見た事のない狼、そして聞いた事がなかった魔力変換が出来、百蜘蛛の、しかも長?の服を着てるというのが、もう頭が付いて行かなかった。


「それなら加工してもらおう。そのままだと、あまりにも布って感じがするのでな。あとは、毎日それを着る訳にもいくまい。それには見劣りするが、何着か買おう。」

「わかった!クレアに任せるよ。」


 クレアは男の店員を呼び、彼の着ている服の加工と、あとは何着かの普段着と部屋着を頼む。


「あとは下着は、多めに必要だな。」

「してないよ!いらなかったから。」

「…………。」


 今着ている服の下に、多少なりとも興味が沸いたクレアだが、それを振り切り、下着も一緒に頼む。

 シリルはその男の店員に連れられ、しばらく奥へと引っ込む。


 しばらくすると、別の店員から、お呼びがかかる。


「お待たせしました。クレア様。いただいた服なのですが、加工は可能です。可能なのですが…………あの、こちら本当に加工してしまってよろしいのですか?」

「どういう事でしょうか?」

「こちら、百蜘蛛の糸で出来ていますよね……?しかも、相当上質で頑丈です。これなら火もある程度、耐えられるレベルです。一流のスタッフに頼むことは出来ますが、こちらの服の加工は、強度等落とさずやるとなると、相当な金額になってしまうのですが…………。」


 ああ。長とか言ってたな…と呆れるクレア。


「それを売って新しい服を買うのと、それを加工して貰うのならどちらがいいですか?」

「それならば、断然加工です。なぜなら、こんな上質な百蜘蛛の糸は、滅多に出回らないからですね。」

「それの持ち主も加工希望なんで、それならば加工で。」

「……かしこまりました。数日いただきますが、よろしいですか?」

「構わん。」

「ではこちらのお代は、加工が終わり、商品受け渡しの際でよろしいですか?」

「ああ。頼む。」

「かしこまりました。」

「ち……ちなみにいくらだ?」

「これくらいになると思います。」


 加工なのにも関わらず、そこに書かれていたのは、目が丸くなる金額だった。

 加工でこの金額なら、もし売ったら、数週間どころか数か月余裕なんじゃないか…と考えてしまうが、頭を振り考え直す。

 そんなやり取りをしていると、シリルが準備出来たようで、声がかかる。


「服着たよ!下着もひさし――」

「それは、言わなくていい。」

「ん?そう?」


 そうして見たシリルの格好は、下は白の長ズボン、上は黒の襟付きの半袖だった。

 黒の半袖の丈が膝上まであるので、腰には茶色のベルトをしていた。


「どう?ちょっとゴワゴワするけど。あと、この首のピラピラしたのが気になる。」

「すぐ慣れるさ。お洒落でかっこいいと思うぞ。」

「本当?ありがとう!」


 どうやら納得したようで、これでいいよ!というシリル。

 そして追加で、部屋着、普段着、そして下着を多めに買う。


 そうしてお会計をする。

 心の中で、加工が終わるまでに、とにかく稼いで多少でも余裕を出そうと心に誓うクレアであった。

 着ていない服は、袋に入れて貰い、店を出る。


 次の店は防具の店だった。

 しかし、ここでかなりの物を試すが、シリルは納得しなかった。

 重い、動きづらい、邪魔、と全て、しかも正直手持ちが足りないレベルの防具を着てもそれだったので、諦めるクレア。

 確かに、布のような服一枚で、今まで過ごしていればそうなのかと思った。

 森の中では、腰巻一枚だった事は知らないが。



 そして最後は、シリルの希望で武器屋に行く。

 シリル殿に必要か?とクレアは言ったが、単純に肉を食べる時に不便だったのだ。

 クレアと合流した時に剣はなく、素手に魔力を纏わせて切っていたのだが、切り口が荒くなってしまう。

 それがシリルとしては、納得がいってなかったようだ。

 アルマに言わせれば、シリルの魔力操作が下手だ、となるが武器になるような物を買えば、魔力を武器に纏わせる練習になるか、と思い許可した。

 森の中の剣は、気付けば包丁になっていたので、武器としてすら見られていなかった。

 という事で、武器屋に、向かう二人。


「いらっしゃいませー。」



 大通りにある、これまた大きな武器屋。

 中古から新品まで、また魔法付与されたものまで売っていた。

 陳列も丁寧だった。

 とりあえず大きなお店ならば困らないだろうと、無難な店を選んだ。


「何かお探しですかー?」


 店員が声をかけてくる。

 だがクレアはとりあえず大丈夫だと言って、戻ってもらう。

 あまり会話をして、シリルがボロを出してほしくなかった。


「さてこっからが、剣・短剣・ナイフが売っている。品数が豊富だし、レアなアイテムも置いてるからな。中古も一応あるぞ。ゆっくり選ぶといいだろう。私も、自分の剣を探しているから、何かあれば言ってくれ。」

「クレアは剣持ってなかったっけ?」

「ああ。昨日の闘いでかなりボロボロにな……。直せばいいのだが、いい剣があれば買おうかとな。」

「そっか。分かった。」


 そして、陳列している品々を色々手に取るシリル。

 影の中にいるアルマに、意見を聞いている様だった。


『これはどう?』

『この素材的に強度が不安だな。魔力で強化すればいいが、それならもう少し強度のある物がいいだろう。』

『わかった。』


 そのまま、中古のナイフが置かれている場所も見る。

 綺麗に並んでいる物や、乱雑に置かれた物。

 シリルは込められている魔力量以外は違いが分からず、だがアルマが言うには修業にならないから、魔法付与がされている物は却下となっていたので、片っ端から手に取っていた。

 何本か色々な刃渡りの、黒い刀身のナイフが転がっていた。

 その中の一本を、手にするように言うアルマ。


『ここの店員は見る目がない。見た目は他の安物に近いが、それだけ素材が違う。』

『そうなの?』

『ああ。他の安物は黒銅という、鉄よりも硬いが魔力を通さない物を使っている。だが、それは多分【暴走者ライオット・グー】の爪だろう。かなり硬度が高いぞ。魔力も通しやすい。しかも、こいつはかなり加工が丁寧だ。』

『見た目はかっこいいね。』


 シリルが持っているナイフは、他の物と違い、刀身に線のような穴が開いていた。

 軽量化なのかはよく分からなかったが、かなり丁寧に処理されていて、シリルは見た目が気に入った。

 ただ、他の物と同じく、魔法付与はされていなかった。

 そのため、他の黒銅と同じと判断したのだろう。

 他の物より、多少値が張るが、大した差ではなかった。


『それじゃこれだね。』

『ああ。』


 そしてシリルは、クレアを探す。

 クレアは新品の剣が並んでいる場所で、店員と話している様だった。


「ああ、シリル殿。決まったか?」

「うん。クレアは?」

「いいのがあったんだが、高くてな。」


 店員はシリルに一度お辞儀をする。

 そして持っているナイフを見る。


「そちら中古品ですが、大丈夫ですか?」

「うん。」

「かしこまりました。では、そちらはお預かりしときますね。お会計はご一緒ですか?」


 店員はシリルから、ナイフを預かり、クレアに向き直る。


「ああ。しかし、シリル殿はそれで本当にいいのか?中古だし、値段で決めろとは言わないが、遠慮しないでもっと高い物でもいいんだぞ?」

「大丈夫だって。」

「そうか。…………だとしたら、この新品の剣が買う余裕が出る…。いやしかし……。」


 しばらく悩んでいると、影からボソっと声が聞こえた。


「買った方がいい。お前は弱すぎる。」

「…………アルマ殿……。」


 店員は一瞬ん?といった顔で、周りを見渡したが、小さい声だったため、はっきりは聞こえてなかったようだ。


「はぁ……。これください。」

「かしこまりました。ありがとうございます。それでは、サービスとして、こちらの中古のナイフのケースもお付けいたしますね。」

「ああ。ありがとう。」


 そしてカウンターでお会計をし、ナイフのケースは、高額な物でなければ好きに選んで構わない、という事だった。

 どうやらクレアが買った剣は、かなり高い物だったらしく、買うと決めてから、かなり店員の態度が良くなっていた。

 シリルは一番邪魔にならない、腰の後ろに横向きで付ける形の物を選んだ。

 さらに、シリルの腰の袋を見て、腰にかける小さな鞄、雑嚢のような物の中で、しっかりしたものを安くして売ってくれた。

 シリルも新しい剣を受け取り、武器屋を後にする。


「とりあえず一通りそろったかな。かっこよくなったぞ。」

「ありがとう!」


 この町に来た時は、仮面に白い服。腰は白い紐で適当に縛られ、それに適当に結んだ白い袋。裸足。

 どうみても普通の子供でなかったが、今は冒険者っぽい格好になっていた。

 白と黒の服に、茶色のブーツ、腰にはベルトが通され、横には雑嚢と、後ろにはナイフがかけられていた。

 楽しそうにしているシリル。

 気付けば、日が落ちて来ていた。


「宿は私が泊っている場所でいいだろう。同じ部屋でよいか?」

「うんいいよ。」

「分かった。そこに食堂もあるから、食事もそこでしよう。」

「はーい。」


 そして二人は宿へと向かう。

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