雨の通り道
雪見
第1話 梅雨のはじまり
気象庁が梅雨入りを発表した。
5月だと言うのに。今年は早い。
しばらく憂鬱な天気が続くな、そう思った時、何もかもにやる気を無くした。
雨は嫌いだ。外で遊べないし、濡れると嫌だし。
そんな雨の降る日の出来事だった。
「蓮也〜?ちょっと買い物行ってきてくれる〜?」
母親が言う。全くこんな雨の日に子供に買い物頼むとかどうかしてんだろ。
はいはいわかりましたよ、いけばいいんでしょいけば。
外は相変わらず雨だ。まぁ梅雨だから仕方ない。濡れたくないな。
傘を広げる。もう5年くらい使っているから、所々穴が空いている。最早傘としての役割を果たしていない。
ここから商店街まではそう遠くない。
商店街に着く頃、雨は酷くなる一方だった。スマホを起動し、天気アプリを見る。
『2時間後、ゲリラ豪雨になる恐れ』
まじか。まじなのか。
とりあえず買い物片付けてさっさと帰ろう。
買い物を済ませ、外に出る。
しかし、雨は止むどころかさっきより酷くなっている。早く帰ろう。
先程来た道を戻る。もう周りの音も聞こえないくらい雨が強まってきた。
—!!!
その先に見たのは、『洪水につき通行禁止』の看板だった。家に1番近い道が閉ざされた。
こうなると迂回をしなければならない。しかし、迂回するときに通るあの道だけは通りたくなかった。
その道は、"幽霊が通る道"と噂される、所謂心霊スポットという道だった。幽霊なんて信じているわけでもないが、元々人通りが少なく、周りの店も閉まっているので、あまり通りたくはなかった。
背に腹はかえられぬ、か。
仕方なく、その道を通ることにした。
—————————————————
やっぱこの道、通らない方が良かったな———
思った以上に不気味で、周りには誰もいなかったので怖かった。
早く帰りたい……
いつしか願望になっていた。
あっ……
そういえばこの道、通るの始めてだった………
僕は完璧に迷子になっていた。
人もいないし、道案内してくれる人がどこかにいればなぁ……
「君、迷ったの?」
誰かの声がする。しかし、姿は探しても見えない。
「どこ?どこにいるの?」
「そこの水たまりを見てみて。私が見えるでしょ?」
側にあった水たまりを覗く。すると—
そこに見えたのは、白い少女の姿だった。
雨のように、透けて見える。
雨は、少しずつ止んできた。
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