Ivy Escape〜アイヴィーエスケープ〜【3人声劇台本】

レイフロ

【男2:女1推奨ですが、男3でも可】

【所要時間目安:40分程度?】

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☡使用する際は必ず説明欄や詳細文などに『作品タイトル・台本URL・作者名』の明記をお願い致します。


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【人物紹介】


クライド♂

無実の罪で死刑判決を受け、監獄へと送られた。妻とまだ顔も見ていない生まれたばかりの子供に会いに行くために脱獄を決意する。


ニール♂

殺人罪で死刑判決を受けている。よく独り言を喋っており、周りからは頭がおかしいと思われている。ニヤニヤしていて掴みどころがない。


ミドリ♀(or♂)(兼役があるので少年声の出来る女性推奨ですが、男性でも可)

監獄に出る幽霊。見た目は小学生くらいの男の子。願った場所に草や花を生やすことが出来る。



(※)クライドの妻♀

ミドリが女性の場合は兼役。ラストの方に一言だけセリフがあります。

(※)3人とも男性キャストで演る場合はセリフ削ってもらって結構です。



↓生声劇で使用時の貼り付け用

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Ivy Escape〜アイヴィーエスケープ〜

作者:レイフロ

クライド♂:

ニール♂:

ミドリ♀/クライドの妻:

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※銃声のSEだけでもあると良いと思いますが、強制ではありません。



以下、台本------------------------------------------------


クライドM『それはあっという間の出来事だった。目の前には男の死体。俺の手には血まみれの包丁。全ては仕組まれたことだった。所詮、組織の秘密を知りすぎていた俺が足を洗うなんて出来るはずもなかったのだ。俺は、何の反論の受け入れられないまま無期懲役の判決を受け、監獄へと送られた。どうしようもない俺の人生を変えようとしてくれた女と、もうすぐ生まれてくる腹の中の子供を残して。

・・・投獄されて半年が過ぎたある日の朝、俺は無機質なコンクリートの床に小さな白い花が咲いているのを見つけた』



クライド「なんだこの花・・・コンクリートに根を張っている・・・?昨日まではなかったのに」


ニール「“ミドリ”の仕業だよ」


クライド「ミドリ?」


クライドM『話しかけてきたのは、俺の隣の房にいる男で、名前はニール。殺人罪で死刑判決を受けている。たまに誰もいない空間に向かってブツブツ喋っていることがある。あまり関わりたくない男だ』


ニール「ニッポンって国の言葉さ。意味は“Green”。植物の色のことを指してる」


クライド「・・・勝手にコンクリートから植物が生えてきたとでもいうのか?」


ニール「あはは、普通じゃ生えないよなぁ。アンタ、この監獄に出る幽霊の話は聞いたことがあるか?」


クライド「幽霊?」


ニール「そうだ。限られた者にしか見えない、この監獄に住まう幽霊。それが“ミドリ”だ。・・・あ?なんだと?このガキ!名前はないって言ってたから俺がつけてやったんだろうが!」


クライド「・・・・・」


ニール「俺のこと独り言を言うオカシイ奴だって思ってんだろ?」


クライド「思ってないさ」


ニール「ふーん。まぁワンチャンあんたにもミドリが見えるかも知んねーから、その花に触ってみろよ」


クライド「・・・もし触ってなにも起きなかったら、悪いがもう話しかけないでくれないか?俺は一人でいたいんだ」


ニール「暗いヤツだなぁ。わーったよ。ほら、ミドリ、ちゃんと隣の兄ちゃんに挨拶に行って来い!」


クライドM『幻覚に話しかけているのだろうか?やはり頭がおかしいヤツだ・・・。俺は早く話を切り上げたくて、コンクリートの上に生えている白い花の花弁にソッと手を触れた』


ミドリ「・・・お兄さん、どう?僕のこと、見える?」


クライド「おわっ!!誰だっ!子供がどうして・・・っどうやって入ってきた!?」


ニール「お!嘘だろ?ミドリが見えるのか兄ちゃん!」


ミドリ「え、ホント?僕のことほんとに見える?!」


クライド「見えるも何もここにいるじゃないか・・・!ん?ちょっと待て・・・よく見ると足元が透けて・・・」


ニール「そりゃそうだろ幽霊なんだから」


ミドリ「うわ~嬉しいなぁ//この監獄にいる人たち全員に試してるんだけど、僕のことが見えたのはこの頭のオカしいニールだけだったんだぁ。しかもミドリなんて変な名前までつけられるしもう最悪・・・」


ニール「何言ってやがんだクソガキ。誰にも姿が見えないままで寂しかったって言ってたろうが!俺様が話し相手になってやってたんだからむしろ感謝してほしいくらいだぜ」


クライド「ちょっと待ってくれ!頭がこんがらがってる!俺まで頭がおかしくなったのか?!」


ミドリ「お兄さん!ニールと話してるとバカが移るから気をつけてね!」


ニール「テメーこっちの房に戻って来い!ぶん殴ってやる!」


ミドリ「やだよーっだ。まぁ幽霊だから痛くも痒くもないけどね~」


クライド「幽霊なのに触れるのか?!」


ミドリ「うん、一応ね。ちょっと変な感じらしいけど。触ってみる?」


クライド「あ、あぁ・・・。」


ニール「頭ナデナデしてもらえよ~w」


ミドリ「うるさいなぁ!ニールは黙ってて!はい、お兄さん、手触ってみて?」


クライド「(手をそっと合わせる感じ)・・・っ。ホントだ。なんというか・・・花びらを触っているみたいだ」


ニール「詩人だねぇw」


ミドリ「ニールはなんて言ったと思う?スカスカのアンパン触ってるみたいだって言ったんだよ!」


ニール「スカスカのアンパン食ったことあんのかよ!ひとくち噛んだ時のあの残念な感じがお前にわかるのか~?!」


ミドリ「知らないよ!お兄さん助けて!こいつ意味わかんないことばっかり言うんだよ~っ」


クライド「すまん、“アンパン”がわからない」


ニール「ニッポンが発祥のパンだよ。中にあずきを煮た甘いアンコってやつが入っててさ!・・・ああ!お前の名前“アンコ”でもよかったなぁ!」


ミドリ「はぁ・・もうミドリでいいよ」


クライド「それじゃあ、ミドリ・・・。この花を本当にキミが生やしたのか?どうやって?」


ミドリ「花じゃなくても生やせるよ。例えばこんなのとか」


クライドM『ミドリが指さしたのはパイプベッドの足の部分で、そこにあっという間にツタが絡みついた』


クライド「すごいな!」


ミドリ「えへへ// 頑張れば多分木だって生やせるよ!」


ニール「ミドリ!調子に乗るなよ」


ミドリ「ちぇー。大丈夫なのに・・・」


クライド「・・・?無限に生やせるわけではないのか?」


ニール「どうやらそうらしいんだよな。ミドリのやつ、一回力を使いすぎてどんどん姿が薄くなって消えかけたことがあるらしいぜ」


クライド「消えたらどうなるんだ?」


ミドリ「わかんない・・・。あの世に行くのかな?」


ニール「俺が知るかよ」


クライド「本当に幽霊・・・なんだな」


ニール「どうやらこのガキ、この刑務所で生まれたらしいんだよなぁ。母親が妊娠を知らないまま罪を犯して服役して・・・んで、ここで産んだ」


ミドリ「うん。でも僕生まれてすぐ死んじゃったんだ・・・」


クライド「そうだったのか・・・。でも姿は小学生くらいに見えるけど?」


ニール「不思議だよな。俺が会った頃はもっとちっさかったんだぜ?」


クライド「成長する幽霊なんて聞いたことが無い」


ニール「死んだ人間が生きている植物を生み出せるってのもわけわかんねーけどな」


ミドリ「えへへ// もしかして僕ってすごいのかなぁ?あ!お兄さんのこと、名前で呼んでもいい?クライドって」


クライド「ああ、かまわないよ」


ニール「じゃあ俺もそう呼ばせてもらうぜ。それにしてもあんた、幽霊にもビビらないなんて随分肝が据わってるなぁ?」


クライド「いや、驚いたさ。今だって鉄格子をすり抜けて行ったりきたりしているミドリの姿を見てなきゃとてもじゃないけど信じられない」


ニール「ミドリ、遊ぶな!」


ミドリ「ちぇー。でもさ、ニール!これで計画がついに実行出来るんじゃない?!」


ニール「んー。まぁこの半年観察してきて、最適な人物ではあるなぁ」


ミドリ「そうだよ!最適どころか僕の姿まで見えるんだもん!完璧だよ!」


ニール「こんな重要な人選は、簡単には決めらんねーが・・・まぁ俺も死刑執行までそんな長くもねぇ。ここは賭けだな」


クライド「一体何の話をしているんだ?」


ニール「なぁ、クライド。オイシイ話があるんだが、お前さんもノらないか?」


クライド「オイシイ話?」


ミドリ「僕たち知ってるよ、クライドが本当は殺人なんか犯してないってこと。無実の罪でここに来ちゃったってこと」


クライド「・・・っ!どうしてそれを?!」


ミドリ「僕は幽霊なんだ。看守たちの話は全部聞き放題なんだよ!」


ニール「ここは面会や手紙すら禁じられている国で唯一の特別な監獄。それには理由がある。つまり、都合の悪い人間を下界から切り離してブチ込んでおける都合のいい国の施設なんだよ」


クライド「なん、だと?」


ミドリ「難しい話はよくわからなかったけど、クライドが組織を抜けたら、エライ政治家のなんとかって人が困るからだって話をしてたよ」


ニール「だから証拠もろくに調べられもせず、すぐに裁判で有罪になったろ?陪審員も弁護士も裁判長も全員グルなんだよ」


クライド「そんな・・・」


ミドリ「クライドは悪いことを辞めようとしてたんでしょ?生まれてくる子供のために・・・!」


クライド「・・ッ・・・そこまで知っているのか」


ニール「この監獄のあらゆる情報はミドリが集めてこられる。囚人、看守、建物や監視カメラの情報なんかもぜーんぶな!」


クライド「まさかキミたちは・・・」


ニール「そのまさかだよ!この監獄でミドリが見えるのは俺とアンタだけ。ミドリの情報と俺たち二人の力があれば、出来ると思わないか??・・・脱獄が!!」


クライド「脱獄なんて・・・まさか、そんなことが出来るわけがない!仮にミドリがどんなすごい情報を持ってきたとしても・・・。いや、触れるということは、例えば鍵や銃を持ってきたりすることも出来るのか?!」


ミドリ「ううん、出来ないよ。触れるだけで、実際に在る物を持ち上げたりする事は出来ない」


クライド「おいおい・・・それじゃあ・・・」


ニール「忘れたのかぁ?ミドリの能力を」


ミドリ「僕は植物をどこにでも生やすことが出来る!」


ニール「そう!コンクリートの上だろうが、金属だろうが、な?」


クライド「まさか監視カメラや機械の内部に植物を生やして壊せるのか?!」


ニール「その通り!それはもう実験済みだ。あとは警備の交代の時間や最短の脱出経路を計算して、次々と機械が壊れていく中、混乱に乗じて脱獄する!」


クライド「そんなことが・・・」


ニール「俺はズル賢いことを考えるのは得意だが、ケンカはからっきしなんだよ。アンタみたいな肉体派がいれば、不測の事態のときにも対応出来るってもんよ」


クライド「俺を盾にしたいだけなんじゃないのか?」


ニール「酷いなぁw こっちは今まで何年も情報を集め続けて計画を立ててきてるんだ。それに乗らないかと声をかけられるなんて、本当にラッキーだと思うけどなぁ?」


クライド「あんたは死刑囚だから脱獄したいのはわかる。だがミドリは?どうしてこの男に協力するんだ?」


ミドリ「それは・・・」


ニール「どうやらこのお子ちゃまは、監獄の敷地内からは出られないらしいんだよなぁw」


ミドリ「出られないわけじゃないよ!僕には壁なんてあってないようなものなんだから!」


クライド「じゃあどうして・・・?」


ミドリ「ここで生まれてここで死んじゃったから・・・その・・・なんていうか・・・」


ニール「つまりビビって出られないんだよな?w」


ミドリ「うるさいな!そんなんじゃ、ないもん!外の塀に流れている電流も、触ると僕でもバチバチ鳴ってすごく恐いし・・・」


クライド「ここから出て、どこか行きたい場所でもあるのか?」


ミドリ「お母さんに・・・会いに行きたい・・・」


クライド「母親に?」


ミドリ「うん・・・」


ニール「母親だからってお前の姿が見えるかはわからねーぞぉ?」


ミドリ「いいんだ・・・。お母さんが今幸せに暮らしてるのか確かめたいんだ・・・。僕が生まれてすぐ死んじゃったせいで、精神的にすごく不安定になっちゃったみたいだし・・」


ニール「死んだガキに心配されるなんて世話ねーなぁ」


ミドリ「・・・っうるさいな!僕のお母さんがどんな人だとしても、僕にとってはたった一人のお母さんなんだ!」


ニール「わーってるよ。ミドリが幽霊のままこの監獄にいるのも、きっとそのあたりが原因なんだろうな」


ミドリ「・・・お母さんに会えたら、僕はあの世に行くのかな・・?」


ニール「だーかーらーそんなこと俺が知るかよ。大事なのは、たとえお前がどうなったとしても母親に会いたいかどうかだろ?」


ミドリ「・・・っ・・・会いたい。じゃないと僕は・・・ずっとここで一人きりなんだ」


クライド「それじゃあミドリは一緒に外に出てくれる仲間が欲しいってことなんだな?」


ミドリ「うん!クライドも一緒にここを出よう?!ここに居たら面会どころか手紙すら送れないんだよ?赤ちゃんにも会いたいでしょう?」


クライド「それは・・・っ。でも運よくここを出られたとしても必ず追ってが来る。それはどうやって乗り切るつもりなんだ?」


ニール「俺はすぐに海外に飛べるツテがあるから、お前も一緒に来るってんなら特別に連れていってやってもいいんだぜ?ただし、赤ん坊に会いに行っている暇は一秒たりともないがな。もしアンタが赤ん坊に会いに行くのなら、結局捕まってまたここに逆戻り。そしておそらく無期懲役は取り消されて、即死刑になるだろうな」


ミドリ「そんな・・・!」


ニール「三択だ。1.無期懲役のまま、ここで残りの人生を一人でシアワセに暮らす。

2.脱獄して、海外で楽しい楽しい第二の人生を始める。

3.最愛の女とガキに会いに行って、またとっ捕まって死刑になる。」


クライド「そんなの・・・選ぶまでもあるか。今回の事件は確かに冤罪だ。それでも、今まで後ろ暗い組織にいたことは確かだ。直接誰かを殺したことはなくても、俺のせいで死に追い込まれたやつはきっといるだろう。そんな俺を変えようとしてくれた女や、何の罪も無い俺のガキに最後に会いに行ってやりたい・・・。その後は過去の行いにケジメを付けるさ。」


ニール「真面目だねぇ?別に全て忘れてイチから海外でやり直せばいいのに〜」


クライド「おまえこそ、正真正銘の殺人者だろ。海外に飛んでまた人を殺そうって腹じゃないのか?!」


ニール「それは・・・」


ミドリ「安心してクライド!それは大丈夫だから!」


クライド「大丈夫って何がだ?」


ミドリ「僕はお母さんに会いに行きたいからニールの協力は必要だけど、殺人者を無防備に世に放つなんてことはしない!脱獄に必要な情報をとってくる代わりに、ニールとは“ケイヤク”したんだよ!」


クライド「契約?」


ミドリ「ニールの心臓には僕が生やしたツルが巻きついてるんだ!もし悪いことをしたらそのツルがキューッと絞まるようにね!」


クライド「はは、それはいいな!」


ニール「そんなことしなくても悪い事はもう飽きたからしねーって言ってんのによぉ」


クライド「ミドリ、その時は頼んだぞ」


ミドリ「うん!まかせてよ!」


ニール「チッ・・・」


クライドM『それから、俺たち三人の脱獄の準備が始まった。ミドリの情報と照らし合わせた実際の脱出経路の確認、セキュリティシステムの管理状況、看守長の居ない時間帯、警備の交代時間など、全てを考慮した結果、決行は次の新月の夜となった』



ニール「いよいよ今夜、決行するぞ。手順は頭に叩き込んだな?」


ミドリ「うん!」


クライド「ミドリ、たくさん力を使うことになるが本当に大丈夫か?あまり力を使うと、消えてしまうかもしれないんだろ?」


ミドリ「うん、ずっと力を温存してるから大丈夫だと思う!」


ニール「俺たちだってヘタすりゃ射殺されるんだ。リスクは全員にある」


クライド「なんとしても成功させよう」


ミドリ「もちろん!」


ニール「・・・時間だ。始めるぞ」



クライドM『その後、監獄内は未曾有の大混乱に陥った。あらゆる機械から植物が生え始め、内部から破壊されていった。それでも誰も犠牲者は出したくないというミドリの意見により、他の囚人の牢の鍵だけは開かないように注意し、逃亡の途中で出くわした看守たちの銃にはミドリが植物を生やして壊し、武器のなくなっ者の相手は俺がもっぱら引き受けた』



(間)



ニール「はぁ、はぁ・・・ようやく外に出られた・・・っあとは壁をのぼればっ」


クライド「壁の上部にある高圧電流もちゃんと切れてる!これならっ!」


ニール「ミドリ!壁にツタを這わせるんだ!」


ミドリ「はぁ、はぁ・・・」


クライド「ミドリ・・・お前、右腕が・・・っ」


ミドリ「うん・・・消えちゃったみたい・・・」


ニール「ここまで来て諦められるか!ミドリ!早くしろ!」


クライド「ニール!お前っ・・・!」


ミドリ「僕ならだいじょうぶ・・・出来るよ!・・・っつ!」


ニール「よし!ツタが生えた!あとはこれをよじ登れば・・・!来いクライド!」


クライド「あ、あぁ・・・!」


クライドM『俺たちがツタをよじ登り、振り返ってミドリも引っ張り上げようと手を伸ばしたが、ミドリはただただ立ち尽くしていた』


ミドリ「(泣きながら)ごめん・・・左手も、消えちゃった・・・」


ニール「バカヤロウ!見えなくなっただけで絶対にあるはずだ!いいから手を伸ばせっ!」


ミドリ「無理だよ・・・やっぱり恐い、すごく恐い・・・外の世界も、自分が消えちゃうのも!・・・僕は、やっぱりここに延々と漂うだけの幽霊なんだ・・・っ」


クライド「ミドリ!諦めるな!必ず掴んでやるから手を伸ばせ!」


ミドリ「もういいんだ・・・僕なんて置いていって・・・っ」


ニール「あークソめんどくせー!」


クライド「おいニール!もう追っ手が来てるぞ!」


クライドM『ニールはせっかく上った塀を降り、グズグズと泣いている半分消えかけたミドリを肩車した。』


ニール「少し手を伸ばせばクライドが引っ張り上げる!このクソガキ!ここまで来て諦めるとか死んでも許さねーからな!」


ミドリ「ニール・・・」


クライド「そうだミドリ!母親に会って自分で確かめろ!自分がほんの少しとはいえ、この世に確かに生まれたんだってことを!」


ミドリ「クライド・・・」


(SE:銃声)

ニール「ぐあっ・・・!!」


ミドリ「ニール?!撃たれたの?!」


ニール「・・・かすっただけだ!・・早くしろッ!」


ミドリ「うん・・・っ!クライド・・・っ!!」


クライドM『ミドリの肩が手を伸ばすように動いたのがわかった。俺は消えてしまったミドリの手を求めて必死に手を伸ばす。・・・そして、確かに花びらを触るような感触がした・・・』



(間)



クライド「はぁ、はぁ・・・確かお前の迎えの車はこの辺に来るって言ってたよな?」


ニール「あぁ・・・もうすぐ、来るはずだ・・・」


クライド「大丈夫か?その腹、ほんとに掠っただけか?血が・・・」


ニール「平気、だ・・・。それより、ミドリは消えちまったのか・・・?」


クライド「わからない・・・。確かに引っ張り上げたんだ!でも塀を越えた瞬間に、姿が全部見えなくなっちまった・・・」


ニール「あんのクソガキ・・・最後の最後に力を使いやがったんだ。塀を越える時、追ってきた看守たちの銃がツタまみれになってるのが見えた・・・っ」


クライド「・・・ん?ニール、お前、腹に葉っぱがついて・・・」


ニール「あん?・・・・いででで!」


クライド「ミドリ?!まさか・・・植物を巻きつけて止血しているのか!?」


ニール「テメーこの野郎!いるならいるってそう・・・いでで!そんなにキツク巻きつけんじゃねー!」


クライド「あはは、よかった!ミドリ、そこにいるんだな?」


ニール「チッ、手間かけさせやがって・・・クソガキが」


クライドM『ニールの手が子供の頭を撫でるようにポンポンと動いた。何も見えないし、声ももう聞こえなかったが、長年一緒に監獄で過ごした二人には通じるものがあるのかもしれない』


ニール「お、迎えの車が来た。俺は行くぜ」


クライド「あぁ。無事国外へ逃げられることを祈ってるよ」


ニール「その辺は抜かりねぇさ。お前はほんとに一緒に来ないのか?ニッポンはここと違っていい国だぜ?」


クライド「ニッポンか。行ってみたかったな」


ニール「俺はそこで黒髪美人とパン屋をやるって決めてるからな」


クライド「あれか?アンパン、か」


ニール「スッカスカじゃない、アンコがたっぷりつまったアンパンを作る!」


クライド「そうか・・・殺人者からパン屋に転職とは、ほんとにアンタは変人だよ」


ニール「褒め言葉と受け取っておくぜ。あんたは・・・やっぱり女とガキに会いに行くんだな」


クライド「ああ」


ニール「・・・幸運を祈るぜ」


クライド「ニールとミドリに会えたことがもう幸運だったよ。ありがとう」


ニール「ミドリ、テメーも絶対母親に会いにいけよ!」


クライドM『ニールはそういって迎えに来た車に乗り、去っていった。彼が無事高飛びできたのか、ニッポンという国でパン屋を開くことが出来たのかは、俺には知る由もない』



(間)



クライド「ミドリ・・・俺ももう行かないと。ガラにもなく緊張してるよ。自分の子供に会うだけなのに、バカみたいだよな・・・。お前は一人で母親に会いに行けるか?」


クライドM『俺の独り言に答えるかのように、コンクリートの裂け目から細いツルが静かに伸びて、蕾がゆっくりと開き、まるでうなずくように白い花が咲いた』


クライド「そうか・・・。近いうちに俺もそっちに行くから。そしたら、また会おう」



(間)



(SE:扉を開ける音)

↓キャストに女性がいない場合は、妻のセリフは省いてください。


クライドの妻「・・・っあなた・・・!」


クライド「・・・ただいま」




end.

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作者:レイフロ

ツイッター:@nana75927107



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Ivy Escape〜アイヴィーエスケープ〜【3人声劇台本】 レイフロ @reifuro

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