The Memories of CHIVAS REGAL
床町宇梨穂
The Memories of CHIVAS REGAL
CHIVAS REGALを飲むと彼女の事を思い出す・・・。
彼女は週に三日は店にやって来た。
そしてだいたいの場合CHIVASを最低でも一本は開けていく。
彼女は僕より十歳年上。
高校生だった僕にはおばさんだ。
僕は彼女が店に来るたび必ず彼女のテーブルにつかされた。
週に十万以上も使う上客なのでマスターもかなり気を使っていた。
彼女は店に来るたび閉店までいた。
そして店がはねたあと僕を連れて、自分のマンションへ行く。
初めての時は自分がお金で買われたような気がしてとてもイヤだったが、彼女の一言で気が変わった。
「男の子は絶対にこういう時断ってはいけないのよ・・・。」
大して説得力のある言葉ではないけれど、その時の僕は納得してしまった。
28歳独身、実家はこの街に住んでる人なら誰でも知っている大企業、中森明菜似の美人、彼氏は一部上場企業の社員。
僕にはどうしてこんな事をするのか分からなかった。
何度も理由を聞こうとしたけれど、彼女には僕の質問を拒絶しているような所があった。
彼女が店に来なくなって二週間が過ぎようとしていた頃、他の客から彼女が結婚した事を聞いた。
僕はとてもびっくりした。
彼氏がいたことは知っていたけれど、結婚が決まっていて僕と関係を持っていたなんて・・・。
結婚前の女は精神的に不安定になるということを聞いた事がある。
彼女もそうだったのだろうか?
良家に育った女の子が結婚前に一度だけ悪い事をしてみたくなった。
ドラマや小説の中にだけある話だと思っていた。
去年の夏に僕は彼女と偶然デパートで会った。
連れている女の子が結構大きいので僕は頭の中で思わず引き算をしてしまった。
そんな僕に気が付いたのか、彼女は言った。
「まだ六歳よ・・・。」
さすがに僕と会っていた頃よりは老けたが相変わらず美人だった。
良妻賢母の鏡のような笑顔が素敵だった。
CHIVAS REGALの想い出・・・・・・。
The Memories of CHIVAS REGAL 床町宇梨穂 @tokomachiuriho
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