Freeze!!!
床町宇梨穂
Freeze!!!
どうして僕は彼女に嫌われてしまったのだろう・・・。
どうして彼女は僕から離れていってしまったのだろう・・・。
そんな事を考えながらビールを飲もうと思い、冷蔵庫を開けた。
そこにはペンギンがいた。
「そろそろ夏だから、冷蔵庫の温度を下げてくれないかなぁ~。」
冷蔵庫にペンギンがいた事もびっくりしたが、しゃべる事にはもっとびっくりした。
「君はそこで何をやってるの?」
「何をやってるって? ここに住んでいるんだよ。君が来るずっと前から・・・。」
「えっ、でも今まで見かけた事が無いねぇ~。」
「僕は何時もここにいるよ。君が気付かないだけなんだ。」
「へぇ~知らなかったなぁ~。」
僕は本当に知らなかったので、とてもびっくりした。
「僕は何でも知ってるよ。」
ペンギンは誇らしげに言った。
「じゃあ、この前まで住んでた彼女の事も知ってる?」
「もちろん知ってるよ。最近見ないねぇ~。」
「僕達別れたんだよ・・・。」
「それはそれは・・・。」
ペンギンは気の毒そうに言った。
「どうして僕はふられたのだろう?君に分かるかい?」
「もちろん分かるさ。だって僕は冷蔵庫の中から君達を見てきたんだから・・・。」
「じゃあ、どうして彼女は僕の前からいなくなってしまったんだい?」
ペンギンはちょっと考える素振りを見せた。
「もうずいぶん前から彼女は君と別れたかったんだと思う。」
僕はまたびっくりした。
「君が家にいなくて彼女は何時も寂しい思いをしていたんだ。そして冷蔵庫からビールを出して一人で飲んでた。一人で飲むビールなんておいしいと思うかい?」
ペンギンにビールの飲み方を語られるとは思わなかった。
「彼女は寂しかったんだよ・・・。」
僕は今までそんな事考えた事も無かった。
彼女が寂しい思いをしてるなんて・・・。
このペンギンは僕が見た事も無い彼女を知っているんだ。
「君の言う通りかもしれないね・・・。」
僕は本当にペンギンの言う事が正しく思えた。
「そう、僕は何時だって冷蔵庫の中から世の中を見ているんだ・・・。」
ペンギンは寂しそうにまた冷蔵庫の奥に入っていってしまった・・・。
Freeze!!! 床町宇梨穂 @tokomachiuriho
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