The world around me
床町宇梨穂
The world around me
彼女は言った。
あなたは本当に自分勝手でわがまま。
子供でももうちょっとましなはずよ・・・。
なんて言っていいか分からなかったので、うつむいてみた。
私の言いたい事が分かる?
多分言いたい事は分かるけど、理解はしていないかもしれない。
あなたにこんな事言っても無理よね・・・。
彼女はまるで犬に芸をさせようとして、しない犬に落胆する様に僕を見つめた。
彼女が無駄な努力をしている事に気付いてくれてよかった。
僕は信号が二つぐらい続いて青になっただけでも、もしかしたら世の中は僕を中心に回っているのかもしれない・・・と真剣に思ってしまうような男だ。
そんな男に、自分勝手だとか、わがままだとか言っても理解できるわけが無い。
僕はそんな彼女になにか言葉を探していた。
見つからない。
無駄な努力だね、なんて言ったら彼女は二度と口をきいてくれないだろうし、ごめんね、なんて嘘っぽい。
ごめんね・・・彼女が謝ってきた。
その言葉には謝罪の気持ちが入っているわけではなく、理解できない事を言った事に対して謝っているのだ。
こっちこそごめん・・・。
自分勝手だと言う事に対してではなく、理解できないことに対してだ。
結局僕達の喧嘩は何時もこんな感じで終わってしまう。
そして、僕は物分りのよい彼女に感謝して、彼女はストレスを溜める事になる。
僕はそのストレスに気付かないでいた。
僕に他人のストレスの事なんて分かるわけが無い。
ある日そのストレスは爆発した。
もう誰にも止められないし、僕達の関係も修復不可能だ。
僕はあの日から考え方を少しだけ変えた。
世の中は僕を中心に回っているけれど、僕だけのために回っている訳ではないのかもしれない・・・。
The world around me 床町宇梨穂 @tokomachiuriho
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