波動を受け継ぐ者
土萌真
プロローグ 始まり
時は十九世紀。科学で何でも出来る時代。
人々は平和を築いていた。
そう、あの日までは……
この国は三つの領土で統一されている。
その三つとは掟や歴史を管理する一族、時森家。掟を破りし者を取り締まる一族、式森家。そして、人々を守り、監視をする一族、神森家。
それらは三国と呼ばれている。
街は領主達が管理している。
三国と言っても三つの国に別れているのではなく、一つの国に三つの領土がある。
だが1880年に戦争が起きた。
この国の長に任命された神森家の領主が時森家の領地に夜襲を仕掛けそれが戦争に発展した。
この戦争で歴史に関係する人と波動を受け継いだ者の多くが死んでしまった。中には神森家内部でクーデターを企んでいたと思う者も居る。
神森家は戦争後姿を消した。
式森家の領主である紅が神森家を三国から追放した。
こうして戦争は終わりを告げ、十年の月日が流れた。
世界平和って、何だろう? この世は何故、儚いのだろう。この世は、平和であってはならない。闇は今、動き出す。
1890年の秋、肌寒い時期である。
街の人達は寒さ対策をしている。男の人はスーツに身に着込んで女の人はカーディガンで寒さを凌いでいる。
時森家の街は戦争で壊された街を復興して来た。新しい街造りは順調に進み、人々に笑顔が戻った。
暫くは平和が続くと思ったが、また悪意が動き出そうとしていた。
「今日も終わりだね」
夕暮れ時、一人の白衣を着てその下に制服を着た少女が商店街を歩いていた。金色の髪が風で揺れていた。
「おや、静ちゃん。もう、帰りかい?」
突然、人が少女に声を掛けた。
その人は時森家の領地に住んでいる街の人である。
「おじさん。ただいま、これから帰る所だよ」
「そうかい。礼司様に宜しくと伝えて置いてね」
「うん、良いよ。おじさんにはいつもお菓子を貰っているから」
「静ちゃん、これを持って行きなさい」
おじさんは袋を差し出した。
「ありがとう、おじさん。はあ~金属だ。でも、良いの……こんなに?」
「あぁ、良いよ。家の残り物ですまないが、静ちゃんに貰って欲しい。そして凄い発明をして欲しい。そして、おじさんに出来た発明を見せておくれ」
袋の半分ぐらい入っている金属を嬉しそうに抱き締めていた。
「うん。出来たら、見せて上げるよ。これで、発明が進められるよ」
「そう、良かった。では、静ちゃん。楽しみにしているよ」
そして、おじさんは笑顔を見せ、行ってしまった。
「おじさん、ありがとう。さて、もう少し散歩してから帰るかな」
少女は商店街を歩いた。
十月十日、金曜日。何事もない平和な日。そして夜になり、星が綺麗に見えていた。
「流星群とは……違うのかな? 空から何か、落ちて来るような?」
少女は空を見上げて呟いた。
目を見開いて、見ると人だった。
そして、その人は少女に向かって落ちた。
もう夜だから周りに人が居らず、少女は落ちた人の下敷きになっている状態である。そして、少女は困っていた。
「……、ん!?」
少女はその人を退かす為に必死だった。
「……うっ、重い。何で……人が……落ちて来るの?」
少女は戸惑いながらも人を退かし、仰向けにした。
顔を赤くしながら気付いた。
「男の子だ。……どうしよう、私」
静は唇を指でなぞりながら呟く。
「私、そそ……その人と、キキ、キスしちゃったよー!」
少年が空から降って来て、少女を下敷きにする寸前、口と口が重なりながら倒れたと言う訳である。
「大丈夫ですか……!?」
静はその少年を介護するようにその少年の頭を自分の膝に置いた。
「どうしよう。他に人も居ないし。飛鳥ちゃんか縁ちゃんに来て貰うにしても、時間が掛かるし、もし来たら、この状況をどう説明すれば良いのか分からない」
静は再び戸惑った。
そして、静は少年を呼び続けた。
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