第201話 グリオルド国


翌日、オルギアン帝国へ向かうべく、またエリアスと二人の旅が始まった。


まずはマルティノア教国の、エルニカの街に行ってみることにした。


あの時は……教皇を倒した夜は、エリアスと二人して街の中に入る事が出来なかったけれど、少し日が経って、私達の気持ちも少し落ち着いてきたから、エリアスと話して行くことに決めたんだ。


少し緊張して、街へと入る。


前と同じ様にギルドカードを見せて、難なく入る事ができた。


街の中を見渡す。

一見、前と何も変わっていない様に見える。

色んなお店を見て回って、孤児院の前までやって来た。


孤児院は封鎖されていた。



「アシュレイ……」



気づくと、私はまた、エリアスの肘を掴んでいた。



「んな泣きそうな顔すんな……?」


「……ん……」



エリアスが私の頭をポンポンする。


耳を澄ますと、周りから子供達の遊ぶ声が聞こえてきた。

以前は聞こえなった楽しそうな声が、あちらこちらから聞こえてきた。

すぐに全てが変わる訳じゃないんだろうけれど、子供達が笑っていられる街なら、きっと、もっと良い街になっていく筈……


エリアスと私は、それからケルニエの街へも行ってみた。


ケルニエの街も、エルニカの街と同じ様に、街の中の雰囲気が変わった感じがした。

前の様な、重い感じじゃなくて、人々が明るくなった様に思えた。


またこうやって、時々来てみようって話をして、それから歩いて、グリオルド国へ行く事にした。


グリオルド国へは、幼い頃行った事があっただけで、成人してからは行った事がなかったので、オルギアン帝国へ行く途中の国だと言うこともあって、グリオルドがどんな国かを体験してから、オルギアン帝国に行こうって事にしたんだ。


エリアスはグリオルド国は初めてだと言っていたし、初めての所はワクワクするな、なんて嬉しそうにしていた。

ただこの国は、オルギアン帝国の属国だから、どんな国なのか確認してみたい、と言う気持ちも強かった。


インタラス国が属国になってしまった場合の事も考えて、二人で色々確認しようと話をしていたんだ。


エルニカの街から、歩いてグリオルド国へ向かう。

エルニカは国境付近の街で、山沿いを西へ進むとグリオルド国の国境がある。


国境には、関所が設けられていた。

関所ではギルドカードの照会と、一人銅貨一枚支払う必要があった。

銅貨一枚も支払えない者は、この国に入ることは許さない、と言ったところか……


とは言え、この関所が出来たのも、グリオルド国がオルギアン帝国の属国になった10年程前の事らしい。


歩いて街道を進んで行くと、商人と思われる馬車がよく通って行く。

乗り合い馬車も通る。

行き来が多い、と言うことは、交流が盛んだと言うことなんだろう。


山が近いので、鉱山も至るところにあり、そこに働きに出掛けている人も多かった。

そして、この山では宝石が採れる事もあるので、一攫千金を狙った者達も山に登って行くのだ。


山の麓には森があり、今日はそこで野宿をする事にした。

この辺りは魔物が少ない事もあって、気軽に山に行こうとする人が多い様だ。

しかし、それにはエリアスが稼げねぇって愚痴っていた。


私が持っていた薬草の種を植えて、魔素を集めて植えた土辺りを魔素の濃度を高めてあげると、さっき植えたばかりの薬草がすぐに芽を出し、あっと言う間に希少な高濃度の、魔力回復の薬草が育った。

それを採取して、これである程度稼げると伝えると、ビックリした顔のエリアスが、何度もすげぇって言って、私を褒めていた。


2日程歩いたところで、やっと村が見えた。


そこは山沿いにあって、山に登る人が立ち寄る村として使われている村だった。


エリアスとその村に入ることにした。


村は宿場があちこちにあり、それから売店が多かった。

食堂や飲み屋も多く、小さな村ながら活気があった。


今日はここに泊まる事に決めて、宿屋を選んでいた時に、声をかけられた。



「よぉ!シモン!出歩ける様になったのか?!」



男が後ろから、エリアスの肩を叩いて話し掛けてきた。



「え?!シモン……?誰の事だ?」



言われた男がマジマジとエリアスの顔を見て



「あ、悪い!すまなかった!人違いだ!シモンはもっと年上だ!」


「そうだろ?人違いだろ!ビックリさせんなよ!」


「いや、しかしよく似てる!シモンの若い頃にソックリだ!ハハハハっ!」



そう言い残して、男は去って行った。


それからも歩いていると、何度かエリアスはそのシモンと言う人に間違われて声をかけられていた。


よっぽど似た人がこの村にいるんだろうな、なんて話をしていた所で、また声をかけられた。

すぐに違う人だと分かられるが、これだけ似てると言われると気になってくる。



「本当に凄く似ているよ!ところで、アンタの名前は何て言うんだい?」



立ち寄った売店で、店番のおばあちゃんが聞いてきた。



「俺はエリアスだ。」



そう聞いたおばあちゃんの顔が、みるみるうちに恐怖に怯える様な表情になっていく。



「え……どうしたんだ……」


「すまねぇ!何にもしねぇから、すぐに向こうへ行ってくれ!」



いきなり大きな声で、店から追い出そうとする。



「え、あの……大丈夫か?」



エリアスが震えるおばあちゃんを支えようと手を伸ばした時



「ああぁぁぁっ!触るんじゃないよっっっ!頼むから殺さないどくれぇぇっ!!!」



その場でうずくまったおばあちゃんに、どうすることも出来ず、周りから何事かとチラチラ見られ出した事もあって、その場をすぐに離れた。


何がどうなっているのか分からずに、仕方なく近くにあった宿屋へ入る。


その受付にいた男の顔を見て、私は驚いてしまった。


男はエリアスが年をとったら、こんな風になるんだろうと思う位に、エリアスにソックリだったのだ。







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