第5章
第148話 エリアスの過去
朝目覚めると、イルナミの街の宿屋で、私は一人ベッドで寝ていた。
ディルクはやる事があるからと、夜にオルギアン帝国に帰って行った。
体を浄化させてから、装備を身に纏う。
暫くすると、隣の部屋からエリアスがやって来た。
「よう!目覚めたか?朝飯でも食いに行こうぜ!」
「あぁ、エリアス。昨日は、その…ありがとう……」
「気にすんな。俺がそうしたかったからな。俺もボウズの事、気に入ってたんだぜ?」
「そうだな、よく仲良く喧嘩していた。」
「あれでウマが合ってたんだよ。」
「ふふ……そうだな。」
「アンタはずっとそうやって笑っといてくれよな…」
「え?」
「何でもねぇ。行くか。」
「あ、うん。」
それから2人で、『風見鶏の店』へ行った。
そこで朝食をとりながら、お互いの事を話す事にした。
奥の方の、個室っぽくなっている所に座る事する。
「俺は別になんもねぇぜ?ずっとこの国の王都で冒険者やってたからな。」
「エリアスの出身はどこなんだ?」
「マルティノア教国だ。」
「マルティノア教国って…ここからは随分遠いな。アクシタス国の北側の国か。」
「あぁ、そうだ。その国にある孤児院で育ったよ。この街の孤児院を見て安心したぜ。良いシスターがいて、子供達がみんな幸せそうだ。」
「エリアスがいた孤児院はそうじゃなかったのか?」
「まぁな…ヒデェもんだったよ…孤児院とは名ばかりの所だったな。」
「教国と言うからには、宗教が盛んな国だろう?そんな国がなぜ?」
「その宗教もヒデェもんさ。上の奴等は儲ける事しか考えてねぇ。下っ端の奴等は上に媚びへつらい、俺達を金儲けの道具としか見てなかったからな。」
「そうなのか……?」
「顔の良い奴は、まだ小っちぇうちから娼館へ売り飛ばされてたよ。俺は毎日鉱山で働かされてたな。帰って来たら、ストレス解消の道具にされて、毎日ボコボコにされてたな。」
「エリアス……」
「まぁ、よくある話だ。気にすんな。そんな所にいたい訳ねぇだろ?だからある日、孤児院にいる子供達で逃げ出したんだ。13人で逃げ出して、残ったのがたった2人だぜ?笑けるだろ?」
「………」
「みんな元々が栄養失調だからよ、上手く走れなくてよ、次々に追手に殺られていったよ。連れ戻すんじゃねぇぜ?みんな殺されんだよ。後ろからさ、首が飛んでくんだよ。友達だった奴等のな。」
「ひど……っ!」
「何とか逃げ出したよ。自分がどこにいるのかも分からずに、ただ歩き回ったよ。気付いたらアクシタス国の国境に来てたみたいでな、そこで盗賊に捕まって売り飛ばされて奴隷になってな。」
「奴隷に…?」
「あぁ、それからもこき使われたけど、俺が11歳位の時だったかな、魔眼が使える様になってな。それからは皆俺が恐ろしいって言って、俺は奴隷じゃ無くなった。要は、まぁ、使えねぇから捨てられたんだな。」
「でもまだ幼かっただろう?どうやって生きてきたんだ?」
「魔眼が使える様になってから、魔法も段々使える様になったから、それから魔物を倒していったな。冒険者登録は15歳からだから依頼は受けられねぇけど、素材は買い取ってくれるだろ?それで毎日を食い繋いだって感じだな。」
「それからずっと一人で?」
「そうだな。一緒に逃げたもう一人の奴はどこにいるか分かんなかったし、アクシタス国も奴隷にされたから良い思い出もねぇし、で、インタラス国にやって来たって訳だ。」
「そうだったのか……」
「まぁ、どうってことねぇ話だよ。この国は気に入ってるよ。皆良い奴等だったしな。俺にとっちゃあ、自由の国だ。」
「でも、それじゃあ、この国にずっといた方が良いんじゃないのか?」
「俺は自由に生きるって決めたんだよ。だから、アンタと旅をする事も決めた。これで良いんだよ。」
「エリアス……」
「あ、そうだ、前に俺の母親が銀髪かどうか聞いただろ?それ、なんでだ?」
「それは……そうだな、エリアスには話しておいた方が良いな。…私の右手は、触れた人の過去や未来が見える。私の左手は、触れた人にあった、私の情報が全て無くなる。」
「それ……どういう事だ?!」
「持って生まれた力だ。異能と呼ばれている。」
「でも、俺はアンタに何度も触れてるぜ?」
「そうだ。それが銀髪と関係がある。」
「どういう事なんだ?」
「私の母は銀髪だった。銀髪の人達の特徴として、魔力が多く魔法に長けた人達だ。この部族の人達は、外部の人との接触を拒んで、身を隠して生活をしている。」
「それは何故だ?」
「身を隠すのは他にも理由があるが、銀髪の者以外の血が混ざると、その子供が異常な力を身に付けるからだ。大概はその能力に体が耐えきれずに、生まれる前に亡くなるか、生まれてすぐに亡くなるか…らしいが。」
「じゃあ、アンタは……」
「そうだ。私は珍しく生き残ったらしい。異常な力以外の異能の力もあるから、今まで人に触れずに母と旅をしていた。母には触れる事は出来たんだ。」
「じゃあ、なんで俺は触れんだよ?」
「前に銀髪の人達の村に行ったことがある。私に銀髪の血が流れているからか、その人達に触れても過去も見えなかったし、私を忘れると言うこともなかった。」
「…って事は……」
「エリアスに触れても、過去が見えなかった。エリアスには、銀髪の血が流れているのかも知れない。」
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