第149話 弟


「それでアンタは、俺の親の事を聞いていたんだな……」


「でも、エリアスは捨て子だったから、親の事は分からないって言ってただろ?」


「あぁ。そうだ。親が誰かは全く分かんねぇ。」


「私は異能があるから、人に触れる事が出来なかった。エリアスはそんなことはなかったんだろう?」


「あぁ。そうだな。そんな厄介な事は無かったな……」


「じゃあ、なぜ私だけにそんな力があるんだろう…?」


「まぁ、親の事は分かんねぇけどな。一つ気になるっつーか、親に繋がるかどうか分からねぇけど……」


「ん?なんだ?」


エリアスが袖をまくって左手首を見せた。


「それっ……!」


エリアスの左手首には、ディルクが左手首にしていた腕輪と同じ物があった。


「ずっと俺についてたヤツだ。金目のモンかも知れねぇって、孤児院で何度も外そうとされたけど、どうやっても外れなったらしい。俺の成長に合わせて、これも大きく合うようになっていく。これが何なのかは、俺もよく分かってねぇけど、俺が赤ん坊の時からあるモンって言ったらこれだけだな。」


あまりの事に声が出なくて、その腕輪をずっと見続けていた。


「どうした?アシュレイ?」


「え?あ、うん、ちょっと、ビックリして……」


「何か分かったのか?!」


「え?あ、いや、分かったとかでは無い…いや、分かった事もあるのか…?」


「何が分かった?!教えてくれ!」


「……ディルクも…同じ腕輪をしていた……」


「はぁ?!なんだそれ?!どういう事だ?!」


「どういう事かは分からないっ!でもっ!ディルクに触れてもっ!過去が見えなかったっ!」


「じゃあ、アイツも銀髪の血が混ざってるって事か?」


「その可能性は……否定できない……」


「ったく、何モンだよ、アイツも!それから俺も!」


「ディルクと契約した精霊が、その腕輪は契約の腕輪と言っていた。エリアスは契約している精霊はいるのか?」


「あぁ、いるな。俺は水の精霊と風の精霊がついている。しかし…契約の腕輪か…」


「ディルクの弟が、生まれて間もなく銀髪の女に拐われたと言っていた。もしかしたらエリアスは……」


「はぁ?俺がアイツの弟だぁ?!な訳あるか!」


「すまない、何の確証も無しに言ってしまった。軽卒だった……」


「あ、いや、俺の方こそすまねぇ…ちょっと、色々聞いてビックリしてよ……」


「そうだな、いきなりこんな事言われたら混乱するのは当然だな。申し訳なかった……」


「分かった、もう大丈夫だ。ちょっとお互い落ち着こう……」


「うん……」



落ち着かせる様に、頼んだハーブティーを口にする。


エリアスもそうして、お互いに心を鎮める。


何がどうなっているのか……


ディルクは弟が生まれて間もなく、銀髪の女に拐われたと言っていた。


でも、ディルクも銀髪の血が流れているかも知れない。


これはどういう事なんだろう…?


この事をディルクは分かっているんだろうか?


でも、もし知っていたら、銀髪の村で私の母が銀髪だと言った時に、自分もそうだと言うのではないか?


もしくはそれを隠しているのか……?


でもそんな感じはしなかった。


考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく……



「とりあえずさ…」


「え?うん、なに?」


「これからどうするか、決めるか?」


「あ、そうだな、うん。」


「決まってんのか?」


「あぁ。紫の石を手に入れただろ?これは会いたい人を思うと、その場所まで飛んでいける。」


「そうだな、俺も一緒に、オルギアン帝国のあの屋敷から王都まで帰って来れたからな。」


「この石も銀髪の部族の宝だった物だが、いなくなった母と、この石も探して私は旅をしていた。」


「そうだったんだな。」


「この紫の石を使って、私は母に会いに行く。」




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