第125話 光る石


採寸が終わって外に出ると、またエリアスに色んな店に連れて行かれた。



「エリアス!自分の物を購入するのだから、自分で支払う!」


「俺が連れて来たんだから、俺が支払うんだよ!」


「良いって言ってるじゃないか!」


「アンタをこの作戦に加える事には俺が折れたんだ!今回はアンタが折れるべきだろ!」



そんな感じで、エリアスは一切私から金を受け取らなかった。


なんとも歯痒い感じがする。


「俺にもちょっとは格好位つけさせろよ……」


ボソッと呟く様に言う。


なぜ格好をつける必要があるんだ?


まだまだ私は人と言うのが分かっていないのかも知れないな……




それから、この2日間で必要だった物が揃った。


招待状はギルド経由でどうにかできた様だ。


出入り業者は、酒を搬入する業者を装う事が出来る。


会場の屋内地図で、全ての場所を把握した。


あとは入念に計画を立てる。


今回はギルドが全面的に協力してくれている。


編成されたチームには、ギルドから報酬が出る様になっている。


必要経費も全てギルド持ちだ。


が、エリアスが私に必要だと購入した物は、全てエリアスが支払っていた。


本当に何がしたいのか分からない……


それから紫の石だが、現在この王都近く迄来ている様だ。

これはかなり有難たかった。





いよいよ、明日潜入することになる。


しっかり打合せをした後、宿屋に帰った。


食堂で夕食をとる。


おかみはやつれて、目の下にクマがあり、かなり疲れている様だった。


まだエレーヌは見つからないんだろう。


宿屋の主人に風呂を貸し切る様に頼み、1人浴場に来た。


いつもの様に結界を張り、着ていた物を脱ぎ、浴場に風呂を作り出し入浴する。


湯船に浸かり、左肩を撫でる。


計画を練っている間、エリアスは私に無理をさせなかった。


食事も、しっかり摂る様にした。


お陰で体調は良くなり、左肩も、ある程度問題なく使える様になっている。


明日の作戦は、失敗する訳にはいかない。


失敗すれば、自分達だけがどうにかなるのではなく、拐われた人達が、もう二度と帰って来れなくなるかも知れない。


そう考えると、少し怖くなってくる。


自分の失敗で、犠牲になる人が出るかも知れない。


今までは自分の身を守る為だけだったが、明日はそうではない。


こんな事は初めての事だ。




浴場から出て、部屋に戻って来た。


レクスはベッドで、既に眠っていた。


最近よく眠る様になった。


そして、時々レクスが薄く見える。


それにも不安がよぎる。


レクスの横にそっと寄り添い触ろうとするが、やはり体をすり抜ける。



レクス、大丈夫かな……



あれからまだ、石は光らない。



ディルク、大丈夫?



明日の事、レクスの事、ディルクの事を考えると不安に押し潰されそうになる。



ディルク、早く目を覚まして……



会いたい……



寝る前に、首飾りの石を無意識に握り締めて、今日もディルクに話し掛けながら眠りについて行った。



暫くしてその石が光った事は、眠りについた私は気づかなかったんだ……






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