第124話 必要な物


『闇夜の明星』が運営する極秘の闇オークションは、3日後に開催されるらしい。


この機会を利用して『闇夜の明星』を撲滅するべく、秘密裏にチームが組まれた。


拐われた人達を助け出す事をメインにする者達は3人。

皆がBランク冒険者であり、腕に覚えがある心強い者達だ。

助け出せた場合、外で待機している他の仲間達に拐われた人達を託し、行けるようならそのまま内部まで侵入し、敵を殲滅していく。


私とエリアスは招待客を装い、会場内へ堂々と入る。

中に入れたら、何処に誰が何人いるのかを確認しながら、機会を伺いつつ敵を倒していく。


時間は開場からオークション開始までの約一時間。

この一時間で全て終わらせないといけない。


必要なのは会場となる場所の屋内地図。


潜入する為、会場の出入り業者の伝。


それと招待状。


それから……





「アンタにドレスを誂えないとな。どうせ持ってねぇんだろ?」


「え?」


「いや、「え?」じゃねーし。その格好で行けるわけねぇだろ。」


「そう……か?」


「俺の知り合いの仕立て屋に頼んでやるから、今から一緒に行くぞ。」


「……いや、それは……」


「ほら、行くぞ!」


エリアスは私の左手首を掴んで、そのままギルドを出る。

やっぱりエリアスは私の左手を触っても何ともないみたいだ。


「エリアス!分かった!分かったから、手を離せ!」


「あ?あぁ、すまねぇ。」


「アッシュに乱暴な事すんなよ!」


「悪かったよ。ボウズ。」


「俺はボウズじゃないぞ!レクスだぞ!」


「ハハハ、分かったよ、ボウズ!」


「やっぱり俺はお前が嫌いだ!」


「そうか?俺は嫌いじゃねぇぞ?」



そんなやり取りを見ながらエリアスについていく。


暫く歩いて、古い石造りの4階建ての建物の、一番上の奥にある部屋の前で立ち止まると、エリアスはいきなりドンドンと勢いよく扉を叩き出した。



「おい!ドーラ!起きろ!ドーラ!!」



言いながら、強く扉を叩き続ける。


暫くして、ゆっくりと扉が開く。


ボサボサのピンクの長い髪の、まだ呆気なさが残る背の低い女の子が、眠そうな目を擦りながら扉から顔を出した。



「なにー?エリアスー?眠いんだけどー。」


「頼みがあるんだ。ドレスを作ってくれ。」


「んー?エリアスのー?」


「な訳ねーだろ!アシュレイのだよ!」



言って私の背中を押して、彼女の前に差し出す。


「キレーな人ー。」


「そうだろ?貴族っぽいドレス、作ってくれ。あと2日で。」


「それは無理ー。」


「そこを何とか!頼むよ!」


「エリアス、無理なら仕方がない。諦めよう。」


「ドレスの代金と、昼飯一週間分!」


「分かったー。」


「えぇーっ?!」


何やら交渉は成立したようだ。


「採寸するからー。入ってー。」


「じゃあ頼んだぞ!」


エリアスは私の背中をドンっと押して、部屋の中へ入れると、勢いよく扉を閉めた。


何とも強引な奴だな!エリアスは!




部屋に入ると、その狭さに驚いた。


部屋が狭いのではなく、至る所に布が積み重ねられており、足の踏み場もない程だった。


彼女はどこでどうやって眠っているのだろう?


「服脱いでー。」


「え、いや、それは!」


「アッシュ、俺、外で待ってるな……」


「早く脱いでー。」


「わ、分かった!から、脱がそうとするな!それから、私の両手には触らない様に!」


「分かったー。」



そんな感じで、採寸されていったのだった……







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