第3章

第66話 当たり前の日常


レクスと2人で旅をする。


傍から見たら1人での旅に見えるが……




道中、レクスは色んな話をした。

今迄の生い立ちもそうだが、他の子供達の話も沢山していた。

その顔は楽しそうで、聞いている私も楽しく思ったものだ。


しかし、不意に心配する様な面持ちになり


「俺がいなくてアイツら、大丈夫かな……」


と、ポツリと呟いた。


私が少し困った様に見ると、


「まぁ、シスターが元気になったし、俺がいなくてもやって行けるよな!」


と、強がって言っている。


「レクスは皆の良き兄だったからな。いなくなって心配しているだろうな……」


「俺がいなくなれば、アイツらはもっとしっかりするだろうし、大丈夫だな!」


「一度、様子を見に行ってはどうだ?私の事なら、もう大丈夫だ。なんなら、一緒に街に行くのも良いし……」


「……ううん、いい。大丈夫だ。俺はアッシュと旅をするって決めたんだ。だから、このまま紫の石の所まで行こう!」


「いいのか?」


「うん、もちろんだぞ!」


一度戻ってしまうと、離れられなくなりそうだと、レクスは思ったのかもしれない。


彼の為にはどうしてあげたら良いんだろう……


本当は浄化して、天に還してやるのが良いのだろうけれど……


私がそう考えていると、その顔を見たレクスが


「またアッシュが1人で色々考えてる!俺は大丈夫って言ったぞ!だって俺、今スッゴく楽しいんだからな!」


「わ、私もそうだ!レクスといれて、スッゴく楽しいよ!」


「だったら、何の問題もないぞ!俺がいるんだからさ、1人で悩んじゃダメなんだぞ!」


「あ、……う、うんっ!わ、分かった!」


そう言い合って、見合って笑い合う。



そうだな。



1人で決めずに、これからは相談して決めて行けば良いんだな。



それがとても嬉しい。



触れ合える人がいなくても、1人じゃないと言うのは、こんなにも心が穏やかになるんだな……



母といた頃とはまた別の感情が湧いてくる



いや、母といる時は、それが当たり前になっていたから、何も感じずにいたのかも知れない。

いなくなって初めて、1人でいることの寂しさや虚しさを感じたのか……



当たり前の事など何もないと言うのに、日常に紛れて、それを忘れて行くんだな……



今、自分が幸せであることも、日常になれば忘れて行くのかも知れない。



大切に想う人がそばにいるのなら、それを忘れないようにしなくてはいけないな……






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