第50話 魔法の街


朝の光が優しく照らす。


目を覚ましたら、私は結界に守られていた。


ゆっくりと体を起こすと、徐々に結界が消えていく。


そこにはもう誰もいなかった。


昨日の事は夢だったのか?


そんな気がしたが、自分の体には大きめの外套がかけられてあった。


これはディルクの外套。


夢じゃない。


立ち上がり、光魔法で自身と着ている物を浄化させる。


ディルクの外套を空間魔法で収納する。


寒い季節なのに、彼は大丈夫なのか。


今度彼に会ったら返さなくては。





東に行って 探している物を見つけておいで




眠りに落ちる前、ディルクは私にそう告げた。


彼は何者なんだろう。


不思議な人だった。


優しい瞳をしていた。


包み込むように語りかけた。


何も聞かずそばにいてくれた。




考えると暖かい気持ちが甦ってくる。




顔を上げて深呼吸すると、なんだかスッキリした気分になった。





さあ 東へ行こう。





そこには、青い石があるだろう。





東へ進むにつれて、反応が強くなっていく。


3日程歩いた先に、街を見つけた。


久しぶりの街。


少し怖くなる。


しかし、石がこの辺りにあるのは間違いなさそうだ。




門へと近づく。


門番がいる。


街に入るには身分証明書がいるようだ。


イルナミの街よりも大きめで、ちゃんと警備もされていた。


外壁は4m程で、頑丈そうな造りをしていた。


ここに来る道中で出合った魔物は、イルナミの街と比べるとかなり強かった。


街に近づくと、魔物と戦う冒険者をあちらこちらで見かけたものだ。


冒険者以外の者が外に出るときは、護衛をつけて馬車で移動するのが殆どで、一人で旅をしている者が歩いて来る事はほぼ無い事のようだ。


その事もあって、門番は私が差し出したギルドカードを見て納得がいかない顔をしていたが、

この近くで馬車から降りたと言うと、意外とあっさり入ることができた。




イルナミの街と比べると、活気があり、大きな建物が多かった。


石で出来た建物も多く、沢山の店がそこかしこに並んでる。


店は武器屋が多く、特に杖がよく目に入る。


ここは魔法が盛んな街なのだろうか。


あちらこちらへと目を向けると、至るところで魔法の練習をしている子供や若者がいる。


少し歩くと、大きな建物が見えた。


立ち止まって、大きな建物を見上げていると


「ここは魔法学園なんですよ。」


と、声をかけられた。


見ると、白髪の初老の男性が、ニコニコした顔で話しかけてきた。


「ここは魔法の街って言われるくらい、魔法使いや、魔法を勉強しにくる子達が集まる街なんですよ。」


「そうなんですね。」


「珍しいものを見るような顔で見ていたものですから。この街の事は知らずに来たのですか?」


「はい。私は旅人なので、街を見つけたから寄っただけです。」


「少しの間だけでも、この街を楽しんで下さいね。」


彼はそう言って立ち去った。




魔法の街 ヘクセレイ




それがこの街の名前。




この街に、青の石がある。





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