第21話 命の恩人
食事が終わり、お茶を皆で飲みながら、子供達の様々な話を聞く。
親から捨てられたり、目の前で親を殺されたり、売られた所から逃げ出してきたり、子供達の過去は暗いものばかりだったが、ここの子供達は食べる物に困ってはいるものの、皆元気で明るい。
これはシスターのお陰なんだろうな。
そのシスターが病に臥せっている。
皆の気分も沈みがちなんだろうが、それをレクスが払拭するように、皆を引っ張っていく。
皆の良き兄だな。レクスは。
マーニがシスターの部屋へお茶を持っていく。
少しして、トレーを下げてマーニが戻ってきた。
「またそんなに残して……」
一向に良くならないシスターを心配するが、それ以外は何も出来ない自分に苛立つ様に、レクスが呟いた。
何の病気かも分からない。
医者に診せるにはかなりの金額が必要で、明日の食事も儘ならない子供達が貯められる事は出来ない。
病気が分からないから、薬も何を買えば良いのか分からない。
とは言え、売られている薬は一通り試したのだが、それでもシスターは一向に良くならないのだ。
それどろか、日に日に悪くなっている。
シスターも、もう命が長くないと覚悟を決めていた。
不安そうな面持ちで、食事が片付けられるのを、子供達が見守る。
「レクス、もう一度シスターと話がしたい。いいか?」
不意に言った私の言葉に、少しビックリするレクスだが、
「あぁ、もちろんかまわないぜ!旅の話でもして、シスターを元気づけてやってくれよ!」
そう言って笑顔で送り出す。
私はシスターの部屋へ向かい、ドアをノックした。
「アシュレイです。入ってもいいですか?」
「どうぞ」
そう声が聞こえてから扉を開けて中に入った。
「あまり食事も喉が通らなかった様ですね。」
「せっかく持ってきて下さったのに、申し訳ありません。」
「いえ、それは問題ありません。……少しいいですか?」
「はい、何でしょう?」
そう言われてから、私はシスターのそばまで行き、シスターの胸辺りに右手をかざした。
淡く緑にうっすらと輝いた光が胸から広がっていき、シスターを包み込む。
その光は暖かく、浄化されていく様な感覚を全身が感じていく。
シスターが光っている自分の体を、驚いた表情で見る。
光が消えて行くと、頬と唇に赤みがさし、目のクマも無くなったシスターがそこにはいた。
自分の体の変化に驚きを隠せないシスターは、私を見て
「な、何ですか?!今のは!えっ!あ、あの、もしかして貴方は!」
そう言うシスターに、私は微笑みながら、唇に人差し指を立てた。
そうして部屋を出て行った。
シスターは信じられないモノでも見たかのような顔をして、暫くはその場から動けなかった。
今まで思うように動かなかった体が、とても軽くなっている。
胸の痛みや動悸がなくなり、息もしやすくなっている。
こんなに体調が良くなったのは何ヵ月ぶりか。
なんなら、病気になる前よりも元気になった気さえする。
シスターは考える。
アシュレイは、高度な回復魔法の使い手だ。
しかし、これは誰にも言わない様にしなくては。
彼
いや、彼女は、私の命の恩人なのだから。
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