第18話 再会


ギルドを出て、広場を抜けて「風見鶏の店」に向かおうと歩いて行く。


すると、後ろから


「兄ちゃん!」


と声をかけられた。


振り向くと、少し離れた所から、レクスが私のところまで走ってやって来た。


「レクスか。どうした?」


「あ、えと、その、……あ、昨日のさ、お礼を言おうと思ってさ!昨日も今頃の時間にこの辺にいたから、もしかしたらって思って探してたんだ!」


「お礼を言うのは私の方だよ。」


「そんな事はねぇぞ!昨日は皆腹一杯飯が食えてさ、こんなに腹一杯になるなんてアイツらなかなか無くてさ、皆お礼が言いたいって言うんだよ。」


「そんな大した事はしていないよ。」


「俺達にとっては大した事なんだよ。貰った大銀貨をシスターに渡したらさ、シスターもお礼が言いたいって言うんだ。でもシスターは今具合が悪くてさ、ずっと寝たまんまなんだ。だから、その、良かったら孤児院まできて欲しいんだ。あ、そりゃあさ、本当はこっちからお礼に来ないとダメなんだろうけどさ、アイツらまだ小っちぇーし、シスターは動けねーし……」


私がどうしようか考え込むと、


「あ、兄ちゃんには誰も触らせねぇよ!触られんのキライっつってたもんな!ただ、本当にお礼が言いたいだけなんだよ。」


「……分かった。孤児院まで行くよ。」


そう言うと、レクスの表情は凄く明るくなって、


「ありがとう!皆喜ぶぞ!」


そう言って駆け出そうとするレクスを私は止めて、今日の夜ご飯を買い込んでから向かうことを提案する。


レクスはそれには断りを入れてきたが、渡した金は1ヶ月程しかもたないのだ。

少しでも食費を浮かせる方が良いだろう。

私がそう言うと、仕方なくレクスは承諾してくれた。


あちこちの露店やパン屋から食料を調達し、レクスと2人で孤児院に向かう。


誰かと一緒に行動するのは初めてだ。


母以外では。


ただ買い物を一緒にするだけだが、こんなに楽しく感じるものなんだな。


そんな私を見て、レクスもまた楽しそうに笑っていた。



「あ、そう言えば!」


レクスがそう言って、何かを思い出した様に私を見て、


「兄ちゃんの名前聞くの忘れてた!」


と言ってきたので、微笑みながら


「アシュレイだ。」


と答えると、


「キレイな名前だ!似合ってるな!じゃあ、アッシュって呼ぶぞ!」


終始テンションが高いレクスはそう言って、孤児院へと案内してくれた。



孤児院は街の南側。

歩いて行くと、段々と建物が少なくなっていって、畑が多くなってきた。

暫く歩くと、孤児院が見えてきた。


「あそこだぞ!」


そう言って指をさし、レクスが走り出した。


私は歩きながら孤児院に向かう。



思ったより孤児院の建物は古く、所々壁に穴が空いたのを修復した様子が見てとれる。

窓も修理した跡があって、両サイドについている窓扉は、キチンと合わさる事が出来ずに、不恰好に重なっているのみだった。


開けっ放しになっていた扉の中から、レクスと子供達が飛び出してきた。


私を見るなり、子供達は珍しいモノでも見るかの様に、立ち止まって見上げ続けていた。



「ほら、皆ちゃんと挨拶しろ!この兄ちゃんが飯をくれたんだぞ!」


「アシュレイだ。」


そう言って微笑むと、1人の女の子が私の前に来て両手を広げて抱きつこうとしてきた。


それを見たレクスは即座に動いて、女の子の襟ぐりを後ろから掴んで私から離した。


「エミー!触るなって言っただろ!」


「ご、ごめんなさい……レクス兄ちゃん、アシュレイ兄ちゃん…」


「アッシュで良いよ。エミー。」


そう微笑むと、エミーはパアッと明るい笑顔になった。


「悪かったな、アッシュ。こいつは5歳で、一番小さいんだ。」


「気にしていないよ。他の皆を紹介してくれるか?」


そう言うと、レクスはホッとした顔をして、子供達を紹介してくれた。






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