第14話 冒険者ギルド
次の日の朝、ギルドに行く前に雑貨屋に寄って、ダンジョンの地図を買う。
ダンジョンの地図は階数毎に売られており、地下深くに行くほど値段が高くなっている。
私は地下3階の地図のみ購入した。
1階や地下2階は、自分の足で確認するとしよう。
あと3日は時間があるのだ。
その間は、私もダンジョンに行って攻略しつつ、魔物を討伐して日銭を稼ぐ事にする。
一応私も、ギルドの証明書となるカードを持っている。
素材となる魔物を売る時は、ギルドに持ち込んだ方が都合が良い場合が多い。
店にそのまま持ち込んだ事もあったが、本人確認等の手続きに手間取る事が多かった。
その場所に定住している者は顔見知りで信用もできるのだろうが、一つの街に数日程しかいない得体の知れない旅人は信用できないらしい。
もしかしたら盗賊で、盗んだ物を売りにきたのかも知れない。
もしそうであったら、買い取った店にも何らかの責任を問われるのだ。
そんなトラブルを防ぐためにも、本人確認は必要になる。
であるなら、冒険者ギルドで証明書となるカードを発行して貰い、そこで買い取りしてもらう方が手っ取り早いのだ。
冒険者のランクは、SからGまであり、Gランクはほぼ一般人と変わらないレベルだ。
新人はテストを受け、素質がある場合はFランクから始まる。
逆に、素質がないと見なされればGランクからになるのだが、Fランクにもなれない冒険者として早々とレッテルを貼られるのだ。
もちろん、それから結果を残してランクアップし、FランクやEランクになって行く者もたまにはいるが、最初の時点でGランクにしかなれないと言われてしまえば、素質がないと言われた様なものなので、冒険者を諦める者も少なくない。
因みに私はGランクだ。
依頼を受ける事はほぼないので、身分証明書の代わりにカードを持っているに過ぎない。
ランクアップにはテストを受ける必要があるのだが、ランクを上げる必要性が無いためテストを受ける事はしない。
素材が売れればそれでいいのだ。
購入した地図を持ってギルドに行く。
ギルドに入ると、まだ然程人も多くなかった。
少し早く来すぎたか。
ギルドのスタッフが、掲示板に依頼書を貼り付けているところだった。
ギルドの一角が酒場のようになっており、朝は簡単な朝食もとれるようになっている。
ぐるりと見渡し、クオーツの姿を探す。
まだ来ていないか……
ふと受付にいる女性スタッフと目があった。
私は歩み寄り、まずは母の事を尋ねた。
が、やはり情報は得られなかった。
次に、クオーツが来たらそこで朝食をとっていると伝えて欲しいと頼む。
受付にいた女性スタッフは、何度も頷いて顔を赤らめる。
そして、私の顔を眠そうな目で見つめる。
寝不足か?
その場を去ろうとしたときに大声で呼び止められる。
「あ、あの!お名前を教えて頂けますか?!」
「あ、そうだったね。失礼した。私はアシュレイと言う。」
「……アシュレイ……さん…」
「アッシュと呼んでくれて構わないよ。」
「いえ、あの、アシュレイさんと…」
「そうか。では、お願いする。」
「はい……」
それから、私はギルドの隅にあるテーブルへ腰掛け、朝食をとった。
程なくして、冒険者達がギルドにやって来た。
依頼書を掲示板から剥がし、受付に行って早々に出て行く者、依頼書を取ってから酒場で酒をあおる者、パーティーメンバーを待っている者、依頼書をどれにするかでメンバー同士で揉めている者、様々だ。
そんな様子を眺めていると、クオーツがギルドに入って来たのが見えた。
依頼書を確認し、剥がす。
受付に行き、依頼の受付を済ます。
女性スタッフがクオーツに話しをしながら、私がいる方に指をさす。
クオーツが私を見つけ、やって来た。
「よぉ!アッシュ!早かったな。もう地図を持ってきたのか?」
「あぁ。朝早くから悪いな。」
「いや、こんなことくらい何でもねぇよ。」
そうして私はテーブルに地図を拡げた。
「ここに行き止まりがあるだろ?ここから向かって右側に細道があったんだ。」
そう言って、地図上を指差す。
地下3階の奥ばった場所、地下4階へ行く階段のある場所とは逆方向だ。
私はそこに印をつけ、地図をまとめて鞄に入れた。
「クオーツ、助かったよ。ありがとう。」
「昨日聞き忘れたが、何でそこがそんなに気になるんだ?行っても、俺が見た細道は無いと思うぜ?まぁ、俺が言った事は嘘じゃねぇけどな。」
「あぁ。クオーツが言ったことは信じているよ。そう言う不思議な話が好きでね。聞いたら確かめたくなってしまうんだよ。」
「まぁ、俺としてはどうでも良いがな。オメェ冒険者じゃねぇだろ?ここのダンジョンの地下3階じゃ、まぁまぁ強い魔物が出るぜ?」
「まぁ、様子見ながら攻略して行くとするよ。」
「魔物の討伐ランクはEだぜ?オメェ弱そうだし、大丈夫か?!」
「クオーツは案外心配性なんだな。」
そう言ってクスクス笑う。
「別に心配なんかしてねぇよ!俺が言った事で地下に潜って死人が出たら、目覚めが悪ぃからだよ!くそっ、勝手に行きやがれ!」
「あぁ、気を付けるよ。ありがとう。」
「ふんっ!」
あんなナリして、結構良いヤツなんだな。
クオーツは。
クスクス笑いながら、照れて立ち去って行くクオーツを見送った。
こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます