第2話 道程


物心ついた時から、私と母は2人で旅をしていた。




どこに行くでもなく、1つの街や村に長くいることなく、ただ旅をしていたと思っていた。


その事に関して、なんの疑問も持たなかった。


ずっとそうであったのだから。




母は私が他の誰かと接触することを極端に嫌がった。


何日かおなじ宿に泊まると、宿屋の主人やおかみ、近所の子供たちとも少しずつ仲良くなっていく。


私はそれが嬉しくて、母に内緒で同じくらいの子供同士で遊んだりしていた。




しかし、母に見つかるとすぐに離され、私は凄く怒られた。


私は何がいけないのか理解できなかった。


私が反抗すると母はいつも悲しそうに私を見つめていた。


母の悲しそうな顔を見るのが嫌で、徐々に私は人と接触をしないようになっていった。




そうして数日すれば、また違う街へと旅立つ。




旅をしながら、母は色んな事を教えてくれた。


方角の知り方、時間の読み方、薬草の見分け方や採取の仕方、薬の作り方、字の勉強に計算に、剣の使い方、魔法の使い方、魔物の殺し方、さばき方、野宿の仕方等、旅で生きていく為に必要な事以外にも、この世界の事や社会についての事等多岐に渡って教えてくれた。




今思えば、こんなに色んな事が教えられる人は、そうそういないのではないか、と感じる。


しかし、私は人との接触をしてこなかった。


だから結局どうなのかは、まだ分かってはいない。


誰かに確認することも出来なかったのだ。




そんな毎日を送り、私が15歳になった頃、母が突然いなくなった。




母がなぜ、私が人と接触するのを嫌がったのか。


それは成長するにつれて分かってきた。




だから、そうならないように行動することだって出来るようになってきた。


他人との距離感が分かるようになったのだ。




そう立ち回れる様になっても、私には母しかいなかったのだ。




身を寄せ会える人は、母しかいないのだ。






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