第100話 片付け

「 片付け 」


なんかね、やっているそばから片付けはじめ

 て、すべてが終わるころには、はじめる前 

 よりも片付いているような


あなたの最後の、望みでしょう


そう、最後の


けっきょくあなたがいたことが跡形もなく無

 くなってしまうというか、無くなるという

 か


そうだね、キレイにさっぱり


あなたは冷たいひとだわ、冷たすぎると水滴

 が付いたり、手が付くと離れなくなるけれ

 ど、そうではなく、そういうことも許さな

 い、許されない、もっと中途で半端な、そ

 れよりもひんやりとして、冷たくて


冷たいひと


そういう冷たさ、近づくのも怖い


そういう、冷たさ


でも、すべてがきれいに片付いた空間から見

 る光景ってどんなかしら、それがあなたの

 望みでしょう、誰もあなたを思いださない

 けれど


片付けることだけ考えていたから


あなた自身も片付けてしまう、そんな空間に

 あるときに降り立ってしまったら


空間からは冷たくかがやく一点しか見えず


きれいに片付いた空間にあるものがあるとし

 たら、何かしら、一つのシードから発する

 ちいさな流れかもしれなくて、それは、最

 低なものかもしれないけれど、表裏のある

 一枚の悲しいコインなのかもしれない






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