第3話 自分がどうするかで、掴める君にも掴めなくなる君にも

 嬉しかった、けど……


「叶お前~、なんか知らないけど落ち込むなよ~」

「うっさい……」


 渡辺さんは可愛くて親切だ。

 大勢の男子が恋に落ちるのも無理はない。

 もしかしたら女子だって、彼女に惚れている人がいるかもしれない。

 僕は所詮、大勢の中の1人だ。

 しかも他の奴らは、僕より身長が高くて、運動神経も良くて、社交性があって、おまけに美男で……

 そう。つまり、瞬みたいなのが大半だろう。

 個人の見解ではあるけれど、少なくとも数人はその人種のはずだ。

 いくら好きな事が誰かに認知されようと、変わる訳はない。

 きっと、関西弁の同級生とだけ思われたまま高校生活が終わる。


「付き合える訳ないし……」

「そうか~? 俺は十分可能性あると思うけど」

「は?」


 何を言っているんだこいつは。お世辞にも程がある。

 瞬は僕の頬をつつきながら言った。


「お前は自分がモテるタイプだって事知らないよな。関西弁は女子に人気らしいし、まぁ運動神経は別として元気だし、低身長って訳でもないし、顔面偏差値も軽く65はある」


 1つ気になる所があったが、物凄いお世辞の嵐だ。

 ていうか僕が顔面偏差値65だったら、瞬は一体どれだけ高いんだよ……。


「ごっつ褒め称えるなぁ……」

「嘘だー、みたいな顔してるけどさ、普通に事実述べただけだからな?

 もっと自分に自信持った方が良いよ。掴める女も掴めなくなるぞ」


 僕の頬をつつくのをやめ、笑顔で「な?」と問いかける瞬。

 掴める女も掴めなくなる……確実にその『女』は渡辺さんの事だ。

 つまり、自分に自信を持てば、彼女と近付ける?

 

……僕は、君を信じても良いんでしょうか。



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