恋する少女と魔法?少女

ROI

第1話世話好き魔法?少女ねむさん参上!

2年生になっても、私は普段と変わらずここに来て、スマホを開いては携帯小説を読んでいた。そんな1学期


いつもと変わらない時間。だけど、この平和な、いや、退屈な時間に1ヶ月半前から変化が起きた。


ここ私立雪の宮学園。第1校舎の屋上で、私はグラウンドを見渡せる側の、1番右端のベンチにチョコンと座っているのだが、丁度反対側の街を見渡せる側のベンチにも、誰かが私と同じ時間に座ってスマホでゲームしたり、誰かと通話する男子生徒が現れたのだった。


最初は、私の聖域もこれで終わりかと思った。何故なら普段私以外に生徒が来る事など無かったからだ。


屋上は風邪通しが良いし、他のクラスメイトは教室で友達との会話や、スマホや持って来た携帯ゲームに夢中だからだ。


あ、噂をすれば今日もあの子が来たみいだ。

「ふー、よし、今日も誰も居ないな。さて、いつもの場所に座るか。」


そう言うと、その男子生徒は指定席のベンチにスタスタと歩み寄り腰掛ける


そして何時もの通り座ると同時にスマホを取りだしゲームを始めた。


私はゲームの事は全く詳しく無かったけど、彼のお陰で少しは知るようになった。もっとも、向こうはこちらの事は知らない訳だけど.........。


そして、あまりにも楽しそうにプレイをする物だから、キャラクターの名前からプレイしているであろうゲームを検索して、最近私も彼がプレイしているゲームと同じ物をダウンロードしてしまった。


ゲームの名前はクオンタムサーガ、去年サービスを開始したRPGだ。けっこう人気で、学園内でもプレイしている生徒は多い。


我ながら人に影響され易い性格だな~と思う。


私も真剣になってプレイしてしまい、最近追い付きつつあったのだ。あ、もしかしたら追い越してるかも.........。


そんな事を考えていたら、また彼の声が聞こえて来た。

「まーじかよ。超つええんだけど。はー、必殺ゲージ貯まるのをスキルを使って早めるとか鬼畜じゃんよ。」


このゲームのキャラクターには必殺技を出す為の、エクストラゲージと呼ばれる物があり、それが貯まると強力な技を繰り出してくるのだって、何解説してるんだろ私.........。


だけど私は彼の名前すら知らない。


あ、ボスキャラの必殺技ゲージは、ゲーム内のキャラ、賢者ルルナの持つスキル、技封印を使うとしばらくスキルも必殺技も使えない事を教えてあげたい。


ルルナが居ればって、まだ引き当ててないんだよね。純白のローブに金の髪飾り。あ、いかんいかん。


そんな時間も、あっと言う間に過ぎて行く。


彼の顔を見た事はあるけど、何て言うか、イケメンと言う感じより、人の良さそうな、優しい感じのする子だった。

学年は同じだけどクラスが違ってて、私は1組で、彼は3組。


たまに見掛けるけど、やっぱり話せないでいる。多分向こうは、キャラの薄い私に気付いても居ないだろうな......。


昼休みが終わる10分前、彼は戻って行く。出入口からは私の座るベンチは見えないから、彼はいつもここには自分1人だけだと思っているようだ。


「はー、また話しかけられなかった。まぁ、無理だよね。はー。何回これ繰り返してるんだろ、私。」


それだけ言うと、立ち上がり、私も出入口に向かう。

と、その途中、何かが落ちているのが見えた。


「あれ?これは......」


出入口のドアの所に、クオンタムサーガの登場キャラクターの携帯ストラップが落ちていた。


「あの子のかな?これって、アンドロイド、ブレイズだよね。」


来る時無かったし、多分そうだろう。

「あ、でもどうしょう。拾ったは良いけど、どうやって渡そう......。」


私は思わず口に思った事を出していた、近くに人がいるとかまで、頭が回ってなかったのだ。

考えながらも扉を開いて、教室に行こうと階段を降りようとしたその時、不意に後ろから声がした。


「ん~。悩める乙女ってやつですな~。アオハルだね~良いね~。」


振り向くとそこには、いつも右目に眼帯をしている、同じクラスの暁月ねむさんが居た。2年生になってから同じクラスで、彼女は自由人と言うか天真爛漫で、誰にでも気軽に話しかけてくる。

(あちゃー、まさか見られてた?)

私の顔を見て笑顔になる暁月さん。


「ふふふ、全部じゃないけどね。見てたよ。さっき1人男子生徒が階段降りて行ったけど、あの人がみゃーちゃんの想い人かな?」


更にスッゴい良い笑顔を向けてくる。

「うう、見てたんだ。てか、いつからいたの?」


「あー、ね、私隣の校舎から、なんだかチラチラと後ろを気にしているみゃーちゃんが見えてさ、それで気になっちゃって。

最近昼になると姿見えないし、誰かと会っているのかな?って。ふふふ、誰にも言わないから安心してね。」


そう言うと暁月さんはニッコリとした。

「お願いだから、本当に誰にも言わないでよね!」


「心配性だな~。あ、クオンタムサーガだよね?みゃーちゃんがプレイしてるの。前にバス一緒だった時、プレイしてるの見かけたけど。」


「うん。暁月さんも遊んでるの?」


「うん。まぁね。それに今SSRの賢者ルルナピックアップ来てるし、欲しいよね~。」


「うん。そしたら、助けてあげられるのに......。」


「あ、愛しの彼もプレイしてるから?」


「うん。あ、ちょっと待って!今の無し!」


「あはは、みゃーちゃん分かりやすいよ~。でも、よろしい!この私、魔法少女ねむさんが、助けてあげましょう!」


「...........................」


微妙な沈黙が訪れた。

「はいそこっ!可哀想な子を見る目で見ない!それと微妙な沈黙禁止!」


「いや、だって魔法少女って、いくらなんでも...」


「信じる者は救われるんだよ。じゃあ、騙されたと思ってスマホ出して。」


「どうするの?」


「ガチャ回すに決まってるでしょ?」


ガチャ回さないと離してくれそうに無い空気なので、諦めて私はスマホを出した。


「いや、あのね暁月さん、このゲームって、深夜に回すとSSR出やすいみたいなの」


「大丈夫!私を信じなさい!それじゃあ、魔法を唱えるから、ちょっと待って。」


そう言うと、暁月さんは右の胸ポケットから、短いボールペンを取り出す。


「ほらみゃーちゃん、クオンタムサーガ開いて、ガチャ画面出して。はよはよ!」


キラキラと目を輝かせる暁月さん。仕方なくクオンタムサーガのアイコンをタップして、ガチャ画面の、賢者ルルナ限定ピックアップを開く。


クオンタムサーガは、ガチャ1回で金のコイン3枚を消費する。10連なら30枚だ。比較的良心的で、1回につき、100円計算になる。


ちなみに、私は無償で金コイン120枚課金で30枚持っている。

単発なら、彼女の怪しげな魔法に乗っても良いか、私はそう思った。


暁月さんは、右手にボールペンを持ち、くるくる回りながら妙な呪文を唱える。

「任せといてよ!は~~ルリルラルリルラSSRルルナよお出でませ~。」


暁月さんは3回回転すると、ボールペンの先で、1回だけ私のスマホの画面を、ツンと触った。

(まさかね...)


「はい、OK!ガチャ回して。」


「え?今のが魔法?なんかほら、キラキラしたエフェクトと言うか、虹や星みたいなのが出るかと思ったんだけど......」


「みゃーちゃん、アニメや漫画じゃないんだから、そんなのある訳ないじゃん.......」


暁月さんは、やれやれ、こいつ分かってないなと言わんばかりに首を左右にふる。

「はぁ...そうですか。じゃあ単発から。」


「え?10連に決まってるでしょ?」


「え?10連回すの?」


「当然でしょ~。10連の方が確率高いし。さぁさぁ。はよはよ!」


「う~。自分のガチャじゃないからって......外れたらもう信じないからね!く~。えい!」

私は迷いつつも10連スタートをタップした。

(つづく)

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