『そこで、眠れ。』

味噌汁

お湯を沸かして

 其れはであった。闇が空を覆い、月の光さえ届かない。生ぬるい風が頬を撫でて気持ちが悪かった。この世とのものとは思えない光景。折れ曲がった看板にえぐれたコンクリート製の地面。水すらない河川。そして動かなくなった塊。全ては黒に染まっていた。

 少年は声を紡ぐ。


「どうして君が・・・。」


 少女は答える代わりに彼女の持つ刃を少年の首へと振り下ろした。壊れかけた蛍光灯の光に照らされて銀色に輝く刄はとても美しかった。彼女の白くサラサラとした髪と薄い蒼の目が少年のと混ざって色の対比をつくってゆく。

 彼の人生は終わるというのに、世界から彼が消えようとしているというのに、こんなに残酷で美しい光景に彼は見惚れてしまった。

 こんなにも愛した筈だった。けれどもう全て闇に溶けてしまう。


「さようなら。」


 彼女の透明な声が世界の終わりを告げた。




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