ミステリー 蝉が一匹、力無くジーと啼いた

井上祐

第1話 プロローグ

「お父さんきたぁ~、おかえり~」

「ただいま」

「あなた、おかえりなさいませ」

「うん。おみやげ、お前の好きなショートケーキ」

「うわぁ、おっきい、食べていい?」

「まあ、ちょっと待ちなさい。あなた、夕飯になさいます、それともお風呂になさいますか」

「そうだな、腹が減ったから飯にするか」

「はい、わかりました、支度しますね」

「お母さんね、昨日からちゃんと筑前煮作って待ってたんだよ」

「そうか、お母さんのは美味しいからな」

「うん、お父さん、好きだもんね」

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